2022年(令和4年)1月1日の改正で、電子取引における電子データ保存の義務化が予定されている電子帳簿保存法。幾つかの業務において、この電子帳簿保存法の改正を機に、ペーパーレス化が推進されそうです。そこで本記事では、ペーパーレス化が進みそうな申請・承認業務について解説していきたいと思います。
※2021年12月6日に政府・与党が公開した情報により、2022年1月の改正では電子取引における電子データ保存の義務化の予定が、2年間の猶予期間を設けることになりました。猶予期間を設けることで、2022年1月から2年間は紙での保存も容認されることとなります。
※電子帳簿保存法の網羅的な解説については、当社作成の「電子帳簿保存法対応ガイド」や、国税庁の「電子帳簿保存法関連の文書類」をご参照ください。
ペーパーレス化を阻害する申請・承認業務とは?
テレワーク・在宅勤務・リモート勤務と呼び方は様々ですが、テレワーク業務は企業に定着しました。これからもテレワークを望む人は「半数以上」という統計もあります。ニューノーマルな社会の始まりです。テレワークが定着すると、非対面に適したオンライン会議システム、チャットツール、ワークフローツールといった様々なシステムやツールは、さらに機能向上されることでしょう。
しかしテレワーク環境を考慮したツールが使われている状況でも、経費精算時の領収書原本を提出するために出社するといったことが、まだまだ継続されている会社があります。
例えば、以下のように、領収書の電子ファイルを印刷し、自筆の署名を行い、紙で提出させている会社もあるようです。
- 各Webサイト経由で注文した、宿や特急料金といった領収書の電子ファイル
- 各Webサイト経由で注文した、書籍等少額物品の領収書の電子ファイル
他には、以下のような目的で出社しているケースもあるようです。
- タクシーや、店舗等から受領した領収書の原本を提出するために、出社する
- 請求書が郵送で届くため、中身を確認する必要があり、出社する
ペーパーレス化の阻害要因として、原本の提出、原本の照合という社内規定が存在する会社もあり、なかなか「在宅勤務だけで業務がまわる」という状況にはならないようです。
企業において、働き方の整備は、優秀な人材確保の大きな要素となっています。在宅勤務を前提で人材を募集している会社もあります。そして、電子帳簿保存法の改定によって、上記のような経費処理等の業務を、印刷せずに進めることができそうです。では電子帳簿保存法改正はどのようになっているのでしょうか? その一部について解説していきたいと思います。
ペーパーレス化な申請・承認業務を後押する、電子帳簿保存法改正
電子帳簿保存法の改定では、前述した紙での保存が緩和され、電子取引における電子データ保存の義務化されます。電子帳簿保存法とは、紙での保存が義務づけられている帳簿書類について、一定の要件を満たした上で電子データによる保存を可能としています。電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律なのです。
領収書等のスキャナ保存における要件が、以下のように緩和されております。
- 訂正削除の確認ができる場合は、タイムスタンプ付与が不要
- スキャナ保存されたファイルを、取引年月日、取引金額、取引先で検索できること
(一定の要件を満たせば検索要件は不要) - 自筆の署名が不要(領収書を印刷する必要がなくなる)
- 訂正/削除の防止に関する事務処理規定を定め、運用を行う
ただし、施行日以降、緩和された要件にて保存を行う場合には、一定の手続きが必要となります。
ペーパーレス化を推進できる申請・承認業務例
前述したようにスキャナ保存に関しては、原本との照合や、原本保存も不要になります。
領収書等の原本の提出や、電子ファイルの領収書を印刷して提出といった必要がなくなります。
以下のケースでは、電子ファイルを使って申請・承認業務を進めればよいため、出社する必要がなくなります。
- 各Webサイト経由で注文した、宿や特急料金といった領収書の電子ファイル
- 各Webサイト経由で注文した、書籍等少額物品の領収書の電子ファイル
- タクシーや、店舗等から受領した領収書の原本は、スキャンや写真に撮り、電子ファイルで社内処理が可能
電子ファイルを印刷する必要がなくなるため、電子帳簿保存法改正はペーパーレス化推進の手助けとなるでしょう。
ただし、電子帳簿保存法改正後でも、各社の規定類やマニュアル類の改定、システム環境の整備、利用者への運用定着等の準備・運用は必要ですので、注意していきましょう。
まとめ
次回の電子帳簿保存法改正では、様々な業務でペーパーレス化が進むことが予想されます。
そうなることで申請・承認業務のための出社は、減ってくると思われます。
正確な手続きや要件については、国税庁の「電子帳簿保存法関連の文書類」(下記:注1)ご確認ください。またはダウンロード資料ページの「電子帳簿保存法対応ガイド」をダウンロードいただければ、詳しく解説していますので参考にしてみてください。
今後重要になるのは、各社の規定類やマニュアル類の改定、システム環境の整備、利用者への運用定着等の準備です。申請・承認業務で経費精算書の印刷・捺印をするための出社は今後、間違いなく減っていくでしょう。
ニューノーマルのスタイルは同僚と会ってコミュニケーションを取るような、より価値のある行為のための出社に変化していくことでしょう。
注1) 参照元 【国税庁】令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/12.htm
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