テレワーク完全ガイド|導入方法・メリット・課題と解決策を解説

公開日 

テレワークは、働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響を受けて急速に普及し、今や多くの企業にとって不可欠な働き方の選択肢となっています。しかし、「導入したいが何から始めればよいか分からない」「導入したものの課題が多い」といった声も少なくありません。

この記事では、テレワークの基礎知識から導入方法、企業・従業員双方のメリット・デメリット、さらには具体的な課題解決策まで、テレワークに関する情報を網羅的に解説します。適切な導入手順とツール選定、セキュリティ対策や労務管理のポイントを押さえることで、テレワークを成功に導くことができます。

この記事でわかること

  • テレワークの定義・種類と、リモートワークや在宅ワークとの違い
  • 企業側・従業員側それぞれのメリット・デメリットと具体的な課題
  • テレワーク導入の具体的な9つのステップと進め方
  • 必要なICTツールの種類とセキュリティ対策、労務管理の方法
  • 活用できる助成金・補助金制度と申請方法

これからテレワークを導入する企業の担当者はもちろん、すでに導入済みで課題を抱えている方、テレワークで働く従業員の方にも役立つ実践的な情報をお届けします。

セミナー・展示会の開催スケジュール

テレワークとは

テレワークとは

テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方のことです。テレ(tele)は離れていることを意味し、ワーク(work)と組み合わせた造語で、オフィスから離れた場所で業務を行う働き方全般を指します。新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に日本国内でも急速に普及が進み、現在では多様な働き方を実現する手段として、企業規模を問わず注目を集めています

テレワークの定義

総務省では、テレワークを「ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義しています。この定義における重要なポイントは、ICT技術の活用によって「場所」と「時間」の両面で柔軟性を持つ働き方であるという点です。単にオフィス以外で働くだけではなく、情報通信技術を駆使することで、従来のオフィス勤務と同等かそれ以上の業務遂行を可能にする働き方といえます。

総務省|テレワークの意義・効果では、テレワークが社会、企業、労働者それぞれに対して様々な効果をもたらすことが示されています。

リモートワークとの違い

リモートワークとテレワークは、ほぼ同じ意味で使われることが多く、実質的な違いはほとんどありません。どちらもオフィス以外の場所で仕事をする働き方を指しますが、使われ方には若干のニュアンスの違いがあります。

テレワークは総務省をはじめとする行政機関によって明確に定義されており、公的な文書や政策の中で使用される傾向があります。一方、リモートワークは自然発生的に生まれた言葉で、特にIT企業やスタートアップ企業など、民間企業で使われることが多い傾向にあります。また、テレワークが「ICT技術の活用」を前提とするのに対し、リモートワークは必ずしも技術的な要素を強調しない点も特徴です。

項目 テレワーク リモートワーク
定義 行政機関による明確な定義あり 自然発生的に生まれた用語
使用場面 公的文書、政策関連で多用 民間企業、IT業界で多用
技術要件 ICT技術の活用が前提 技術的要素は必須ではない
フォーカス 時間と場所の柔軟性 場所の制約からの解放

実務上は、企業や組織によって使い分けられていますが、本質的には同じ働き方を指すものとして理解して問題ありません。本記事では、行政の定義に基づき「テレワーク」という表現を中心に解説を進めます。

在宅ワークとの関係性

在宅ワークは、テレワークの一形態であり、テレワークという大きな概念の中に含まれる働き方です。具体的には、自宅を就業場所として業務を行う働き方を指します。

総務省の分類では、テレワークは在宅勤務、モバイル勤務、施設利用型勤務(サテライトオフィス)の3つの形態に分けられます。在宅勤務はこのうちの一つであり、自宅という特定の場所に限定された働き方といえます。

一方で「在宅ワーク」という言葉は、会社に雇用されている従業員だけでなく、フリーランスや個人事業主が自宅で仕事をする場合にも広く使われます。テレワークにおける「在宅勤務」は主に雇用型の働き方を指すのに対し、「在宅ワーク」はより広い意味で使われるという違いがあります。

テレワークを導入する企業の多くが、まず在宅勤務から始めるケースが多く見られます。自宅であれば従業員が新たに場所を確保する必要がなく、通勤時間も削減できるため、導入のハードルが比較的低いためです。

ワークフロー導入前にテレワーク改善手順ガイド
ワークフローシステムから始めるDX推進ガイド

テレワークが普及した背景

テレワークが普及した背景

日本におけるテレワークの普及は、複数の社会的要因が重なり合って進展してきました。働き方改革の推進、新型コロナウイルス感染症の拡大、ICT技術の発展、そして災害対策・BCP対策の重要性の高まりなどが、テレワーク導入を後押ししてきました。ここでは、それぞれの背景について詳しく解説します。

働き方改革と労働人口減少

日本では、少子高齢化による労働人口の減少が深刻な課題となっており、企業は限られた人材で生産性を維持・向上させる必要に迫られています。総務省をはじめ関係省庁では、時間や場所を有効に活用した働き方を実現するテレワークを、企業の競争力強化や新しいビジネスの創出、労働形態の改革に寄与するものとして位置づけ、積極的に推進してきました。

政府が進める働き方改革において、テレワークはワークライフバランスを実現し、多様な人材が活躍できる環境づくりの重要な施策として注目されています。育児や介護などで時間的制約を受ける人々や、地方在住者、障がい者など、これまで就業機会が限られていた人々にも働く機会を提供できることから、労働人口減少への対応策としても期待されています。

新型コロナウイルス感染症の影響

テレワーク普及の最も大きな転機となったのが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。総務省の令和3年版情報通信白書によると、1回目の緊急事態宣言時には企業のテレワーク導入率が17.6%から56.4%へと急上昇し、感染拡大防止のために多くの企業が短期間でテレワークの導入を余儀なくされました。

パーソル総合研究所の調査では、2020年3月のテレワーク実施率は13.2%でしたが、緊急事態宣言発令後の4月には27.9%まで上昇しており、わずか1か月で実施率が倍増しています。その後も一定程度の水準を維持しており、新型コロナウイルス感染症がテレワークを一気に日本社会に定着させるきっかけとなったことは間違いありません。

感染症対策としてスタートしたテレワークですが、実際に経験した企業や従業員の多くがそのメリットを実感し、テレワーク実施者のうち50%以上が新型コロナウイルス感染症収束後もテレワークを継続して実施したいと感じているということもパーソル総合研究所の調査で示されています。

ICT技術の発展

テレワークを実現する上で不可欠なのが、ICT(情報通信技術)環境の整備です。近年、高速インターネット回線の普及やクラウドサービスの発展、Web会議システムの進化などにより、オフィス以外の場所でも支障なく業務を遂行できる環境が整いつつあります。

パソコンやスマートフォンの普及率も高まり、個人でもICT機器を所有することが一般的になりました。さらに、無料または低コストで利用できるWeb会議ツールやビジネスチャットツールが登場したことで、中小企業でもテレワークを導入しやすい環境が整いました。

セキュリティ技術の向上も見逃せません。VPN接続やクラウド型のセキュリティサービスなどが普及し、社外から安全に社内システムにアクセスできる仕組みが確立されてきたことも、テレワーク普及を後押ししています。

災害対策・BCP対策の重要性

東日本大震災をはじめとする大規模災害を経験した日本では、事業継続計画(BCP)の策定が多くの企業で重要課題として認識されるようになりました。災害発生時でも事業を継続できる体制を整えるために、テレワークは有効な手段として注目されています。

オフィスが被災して使用できなくなった場合でも、従業員が自宅や別の拠点から業務を継続できれば、事業への影響を最小限に抑えられます。また、感染症のパンデミックや大規模な交通障害などの非常時にも、テレワーク体制があることで事業の中断を防ぐことが可能になります。

近年は台風や豪雨などの自然災害も激甚化しており、BCP対策としてのテレワークの重要性はますます高まっています。リスク分散の観点からも、複数の働き方や勤務場所を選択できる体制を整えることが、企業の持続的な成長に不可欠となっています。

テレワークの普及率と現状

総務省実施の令和5年通信利用動向調査によると、テレワークを導入している企業は約50%となっており、新型コロナウイルス感染症拡大前と比べて大幅に増加しています。ただし、業種や企業規模、地域によって普及率には大きな差があるのが現状です。

業種別では情報通信業が55.7%と最も高く、次いで、金融・保険業が81.2%となっており、デスクワークが中心の業種で導入が進んでいます。一方、製造業や接客業など、現場での作業が必要な業種では導入が進みにくい傾向にあります。

今後は、テレワークとオフィス勤務を組み合わせたハイブリッドワークが主流になると予想されており、企業はそれぞれの業務内容や組織文化に応じた柔軟な働き方を模索していくことが求められています。

テレワークの種類と働き方

テレワークの種類と働き方

テレワークは働く場所という観点から分類すると、自宅で働く「在宅勤務」、本拠地以外の施設で働く「サテライトオフィス勤務」、移動中や出先で働く「モバイル勤務」の3つの形態があります。それぞれの特徴や適した業務、活用シーンを理解することで、企業や従業員の状況に応じた最適なテレワーク形態を選択できます。

在宅勤務

在宅勤務の特徴

在宅勤務は、所属する勤務先から離れて、自宅を就業場所とする働き方です。通勤の必要がなく、自宅という慣れた環境で業務を行えるため、時間を有効活用できる点が大きな特徴です。テレワークの頻度については、毎日テレワークとする場合や週数日の頻度で実施する場合など、企業などの状況に応じ多様化しています。

国土交通省が2021年度に実施した「令和3年度テレワーク人口実態調査」によると、テレワーク継続意向ありの雇用型テレワーカーのうち、主にテレワークを実施したい場所は、自宅が約84%と最大であり、在宅勤務が最も支持されている形態です。また、一日の一部を在宅勤務で行う「部分在宅勤務(部分利用)」を導入している企業も少なくありません。子どもの学校行事への参加や役所での手続きなど、柔軟な働き方を実現できます。

適した業務内容

在宅勤務に適した業務は、パソコンやインターネット環境があれば完結できるものです。具体的には、資料作成やデータ入力、プログラミング、デザイン業務、コールセンター業務、企画立案などが該当します。また、Web会議システムを活用することで、チーム内でのミーティングや顧客との打ち合わせも自宅から実施可能です。

一方で、製造業の現場作業や接客業、医療・介護など、物理的な対面や特定の設備が必要な業務には適していません。企業は業務内容を精査し、在宅勤務で実施可能な業務を明確にすることが重要です。

モバイル勤務

モバイル勤務の特徴

モバイル勤務は、移動中(交通機関の車内など)や顧客先、カフェなどを就業場所とする働き方です。場所に縛られず、移動時間や待ち時間を有効活用して業務を進められることが最大の特徴です。ノートパソコンやタブレット、スマートフォンといったモバイル端末があれば、どこでも業務を行えます。

施設に依存せず、いつでも、どこでも仕事が可能な状態であるモバイル勤務は、営業職や外回りの多い職種に特に適しています。移動時間を有効活用できる、顧客先で迅速に対応できるなどのメリットがあり、生産性向上に直結します。

活用シーン

モバイル勤務が活用される主なシーンとして、以下のような場面が挙げられます。

活用シーン 具体例
営業活動 顧客訪問の合間にカフェで提案資料を作成、移動中の電車内でメール対応
出張時 新幹線や飛行機の移動中に報告書作成、ホテルのロビーでWeb会議に参加
外部イベント 展示会やセミナー会場から直接リアルタイムで社内に情報共有
緊急対応 外出先から緊急の承認作業や顧客対応を実施

モバイル勤務では、無駄なオフィスへの往復を削減でき、顧客対応のスピードも向上します。ただし、セキュリティ面での注意が必要で、公共Wi-Fiの利用時にはVPN接続などの対策を講じることが重要です。

サテライトオフィス勤務

サテライトオフィスの特徴

サテライトオフィス勤務は、本拠地のオフィスから離れたところに設置したワークスペースで就業する施設利用型の働き方です。コワーキングスペースやシェアオフィス、企業が独自に設置した専用施設などが該当します。自宅とオフィスの中間地点に位置するサテライトオフィスを利用することで、通勤時間を短縮しながら、仕事に適した環境で業務を行える点が特徴です。

オフィス機能を備えたスペースのため、デスクや椅子、インターネット回線だけでなく、プリンターやホワイトボード、ドリンクコーナーなどが用意されているものもあり、通常のオフィス同様に働きやすい環境が整っています。また、サテライトオフィス勤務は自宅から離れるため、プライベート空間から物理的に切り離され、オンオフの切り替えがしやすいというメリットもあります。

導入メリット

サテライトオフィス勤務を導入することで、企業と従業員の双方に多くのメリットがもたらされます。

企業側のメリットとして、優秀な人材の確保と定着率向上が挙げられます。育児や介護などを理由に離職するかどうかに悩む従業員の受け皿としても、サテライトオフィスが機能します。自宅近くのサテライトオフィスを活用することで、仕事と家庭の両立が可能となり、離職を防止できます。また、地方在住の優秀な人材を採用する際の選択肢としても有効です。

従業員側のメリットとして、通勤負担の軽減と生産性向上があります。本社まで片道1時間以上かかる場合でも、自宅近くのサテライトオフィスなら30分以内で到着できるケースが多く、通勤時間を大幅に削減できます。さらに、在宅勤務は端末を紛失するリスクは少ないものの、自宅の通信環境によっては、通信速度やセキュリティが安定しないこともありますが、サテライトオフィスであれば安定した通信環境とセキュリティが確保されています。

また、BCP対策としても有効です。災害発生時に本社が機能停止した場合でも、複数のサテライトオフィスがあれば事業継続が可能となり、リスク分散につながります。

【企業側】テレワーク導入のメリット

企業側】テレワーク導入のメリット

企業がテレワークを導入することで、さまざまなメリットを得られます。ここでは、コスト面や人材確保、事業継続性の観点から、企業が得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。

固定費・オフィスコストの削減

テレワーク導入によって企業のコスト削減になる項目として、「交通費」「出張費用」などの人材の移動に関する費用や、「オフィス賃料」「設備代」などの固定費、「電子化による印刷代」などの雑費があります。オフィスに出社する従業員が減少すれば、必要なオフィス面積を縮小できる可能性があり、賃料の大幅な削減が見込めます。

さらに、オフィスの光熱費や水道代、オフィス機器の維持費なども削減対象となります。従業員の通勤にかかる定期代や交通費の支給も不要になるため、これまで固定費として計上されていた多くのコストを見直すことが可能です。もちろんテレワークの導入費用として別途コストはかかりますが、長期的に見た場合に削減できるケースも多く、テレワーク用の福利厚生や手当などにあてることで従業員の満足度向上なども見込めます。

優秀な人材の採用と定着

テレワークではオフィスに出勤する機会が減ることで場所の制約がなくなります。場合によってはフレキシブルな勤務時間の実現によって、通常のフルタイムでの出勤がしにくい人材の雇用や活躍のチャンスが増えます。地方在住の優秀な人材や、海外に居住する日本人、さらには外国籍の人材など、居住地に関係なく幅広い人材の採用が可能になります。

「多様な働き方が認められている」ということは、働く側にとってとても魅力的な要素となります。今や就職活動をする学生の間でも「多様な働き方の仕組みが整っているか」は企業選びのポイントとしてあげられるようになりました。育児や介護などの事情を抱える従業員にとっても、テレワークは仕事を続けられる大きな理由となり、離職率の低下につながります。優秀な人材の流出を防ぎ、長期的に活躍してもらえる環境を整備できることは、企業にとって大きなメリットです。

生産性の向上

社内で勤務していると、予定外の打ち合わせや会議、顧客の訪問などによる作業中断が起こりえます。しかしテレワークでは主に一人で作業を進めるため、誰かに話しかけられることもなく、作業に集中できます。そのため、テレワークでは業務効率化や生産性向上が可能です。

特に営業部門では、商談に使える時間が増えることで、商談可能件数が増えるだけでなく、既存顧客とも気軽にコミュニケーションが取りやすくなり、関係性がより深まりやすいというメリットも生まれます。移動時間を削減し、その時間を本来の業務に充てることで、企業全体の業務効率が大幅に改善される可能性があります。

事業継続性の確保(BCP対策)

2020年におきた新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、突然の事態により事業が止まってしまうリスクを多くの企業が感じました。このような予期せぬ災害時にもテレワークで業務遂行ができる体制があれば、緊急時における事業停止のリスクを最小限に抑えられ、また早期回復も見込めます。

自然災害や感染症の流行、交通機関の麻痺など、オフィスへの出社が困難になる事態は予測できません。テレワーク環境が整備されていれば、従業員は自宅や安全な場所から業務を継続できるため、事業の中断リスクを大幅に軽減できます。これは企業の信頼性を高めるだけでなく、取引先や顧客に対しても安心感を提供できる重要な要素です。

企業イメージの向上

政府がテレワークの導入を推進していることもあり、アフターコロナにおいてはテレワークを導入している企業に良いイメージを持つ人は多いです。テレワークを導入していることを内外に伝えることで、幅広い人材を受け入れられる可能性が広がります。

働き方改革に積極的に取り組む企業として認知されることで、先進的で柔軟性のある企業というブランドイメージを確立できます。このような企業イメージは、採用活動において大きなアドバンテージとなるだけでなく、取引先や顧客からの信頼獲得にもつながります。特に若い世代の求職者にとって、テレワークを導入している企業は魅力的な就職先として映ります。

【企業側】テレワーク導入のデメリット・課題

【企業側】テレワーク導入のデメリット・課題

テレワークは企業にさまざまなメリットをもたらす一方で、解決すべき課題やデメリットも存在します。導入を成功させるためには、これらの課題を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。

勤怠管理の複雑化

テレワークでは従業員の就業状況を直接確認できないため、勤怠管理が複雑化します。オフィス勤務時のようにタイムカードで始業・終業を記録することが難しく、従業員の労働時間を正確に把握することが課題となります。

プライベートと仕事の区別がしにくく長時間労働になる場合や、やむを得ない事情で業務を中断する「中抜け」への対応も必要です。従業員の自己申告に依存せざるを得ない状況では、実労働時間と申告時間に乖離が生じるリスクもあります

勤怠管理システムの導入やオンラインでの始業・終業報告の仕組みづくりなど、テレワークに適した労働時間管理の体制整備が求められます。

労務管理の難しさ

テレワークでは、従業員の業務の進捗状況や成果を把握することが困難になります。オフィスでは上司が部下の働きぶりを直接観察できましたが、テレワークではそれができません。

人事評価では成果に至るまでのプロセスも評価に反映することもありますが、テレワークでは評価材料が減ってしまいます。従来の評価基準をそのまま適用すべきか、成果主義を導入すべきか、評価基準の見直しが必要になります

また、テレワークの形態(在宅勤務、サテライトオフィス勤務など)の違いをどう評価に反映させるかも、企業にとって悩みの種となっています。公平で透明性の高い評価制度の構築が、テレワーク導入成功の鍵となります。

セキュリティリスクの増大

テレワークでは、従業員が社外から社内システムにアクセスするため、情報漏洩や不正アクセスなどのセキュリティリスクが高まります。業務用端末の紛失や盗難、公共の場での画面の覗き見、通信の傍受など、オフィス勤務では起こりにくいリスクへの対策が必要です。

セキュリティ対策としては、VPN接続の利用、端末へのパスワードロックやウイルス対策ソフトの導入、データのクラウド管理、通信の暗号化などが挙げられます。さらに、従業員へのセキュリティ教育を徹底し、セキュリティガイドラインを策定することも重要です。

総務省が公表しているテレワークセキュリティガイドラインなどを参考に、自社に適したセキュリティ対策を講じる必要があります。

社内コミュニケーションの減少

テレワークでは従業員同士や上司とのコミュニケーション不足になりがちです。オフィスでは気軽に声をかけて確認できたことも、テレワークでは意識的にコミュニケーションを取る必要があります。

業務上の疑問点の解決に時間がかかったり、認識のズレや誤解が生じたりすることで、業務効率が低下する可能性があります。また、雑談などのインフォーマルなコミュニケーションが減少することで、チームの一体感が失われたり、従業員が孤立感を感じたりすることもあります。

Web会議システムやビジネスチャットツールを活用し、定期的なオンラインミーティングや1on1面談を実施するなど、コミュニケーション機会を意識的に創出することが大切です。

マネジメントの困難さ

テレワークでは、部下の業務状況をリアルタイムで把握できないため、マネジメントが難しくなります。業務の進捗管理やタスクの優先順位付け、問題発生時の迅速な対応などが課題となります。

マネージャーは、成果物や報告内容から部下の状況を推測せざるを得ず、適切なサポートやフィードバックを提供するタイミングを逃してしまう恐れがあります。また、部下のモチベーション管理やメンタルヘルスケアも、対面時以上に気を配る必要があります。

プロジェクト管理ツールの導入や定期的な報告体制の確立、目標設定と振り返りの仕組みづくりなど、テレワークに適したマネジメント手法への転換が求められます。

初期投資コストの発生

テレワークを導入するには、ICTツールやシステムの整備、セキュリティ対策、従業員への機器貸与など、初期投資コストが発生します。Web会議システム、ビジネスチャットツール、勤怠管理システム、ワークフローシステムなどのライセンス費用に加え、ノートパソコンやモバイルルーターなどの機器購入費用も必要です。

また、従業員へのテレワーク研修やマニュアル作成、就業規則の見直しなどにも時間とコストがかかります。特に中小企業にとっては、これらの初期投資が大きな負担となる場合があります。

ただし、国や自治体が提供するテレワーク関連の助成金や補助金を活用することで、導入コストを軽減できる可能性があります。長期的にはオフィスコストの削減効果も期待できるため、費用対効果を総合的に検討することが重要です。

【従業員側】テレワークのメリット

【従業員側】テレワークのメリット

テレワークは従業員にとって多くのメリットをもたらす働き方です。場所や時間の制約が少ないテレワークは、従業員の生活を豊かにし、仕事への意欲を高める効果が期待できます。ここではテレワークを活用することで従業員が得られる主なメリットについて解説します。

通勤時間の削減とストレス軽減

テレワーク導入による最も大きなメリットは、通勤時間の削減と通勤に伴うストレスからの解放です。厚生労働省の調査によれば、「通勤時間を節約することができる」と回答した労働者の割合が89.1%と最も高く、次いで「通勤による心身の負担が少ない」が82.4%となっており、多くの従業員がこの点を評価しています。

特に大都市圏では片道1時間以上の通勤時間がかかることも珍しくなく、往復で2時間以上を通勤に費やしていた場合、その時間を自己啓発や健康管理、家族と過ごす時間などに活用できるようになります。また満員電車によるストレスから解放されることで、心身の負担が軽減され、業務への集中力や生産性の向上にもつながります

ワークライフバランスの実現

テレワークを利用することによって、通勤に必要だった時間を自己啓発や健康管理のための睡眠、家族と共に過ごす時間に利用することができます。時間や場所の制約を受けにくいテレワークは、従業員のワークライフバランスを大きく向上させる効果があります。

通勤時間が削減されることで、同じ労働時間であってもプライベートの時間が確実に増加します。趣味の時間を充実させたり、資格取得のための勉強時間に充てたり、十分な睡眠時間を確保したりすることが可能になります。またテレワークを活用することで、仕事とプライベートの調和が図られ、従業員の生活の質が向上し、仕事への満足度や意欲の向上にもつながります。

育児・介護との両立

テレワークは育児や介護といった家庭の事情を抱える従業員にとって、仕事を継続するための重要な手段となります。在宅勤務の場合は、保育園への送迎と業務を両立しやすくなる、介護や家事の時間を確保しやすくなるという効果があります。

特に小さな子どもを持つ従業員にとっては、保育園の送迎時間にあわせて柔軟に業務時間を調整したり、子どもの急な発熱などのイレギュラーな事態にも対応しやすくなったりします。また介護が必要な家族を抱える従業員にとっても、自宅で仕事をしながら介護の時間を確保できるため、仕事と介護の両立が実現しやすくなり、介護離職の防止にもつながります。従来であればやむを得ず退職を選択せざるを得なかった従業員が、テレワークによってキャリアを継続できるようになります。

集中できる環境での業務

テレワークでは自分に最適な作業環境を自由に整えられるため、業務の生産性向上が期待できます。「隙間時間などを有効活用することができる」が60.1%と比較的高いほか、集中して業務に取り組める環境を自分で選択できることも大きなメリットです。

オフィスでは同僚からの声かけや電話対応、予定外の会議などによって業務が中断されることが多く、集中力を維持することが難しい場合があります。一方、自宅やサテライトオフィスなどでのテレワークでは、急な仕事の依頼や余計な会話が減り、担当している業務に集中できる環境を確保できます。自分のペースで業務を進められることで、効率的に仕事をこなせるようになります。

居住地の選択肢拡大

テレワークが普及することで、従業員は通勤の利便性だけでなく、自分のライフスタイルにあわせた居住地を選択できるようになります。従来は会社への通勤時間を考慮して、都心部や会社の近くに住まざるを得なかったという制約から解放されます。

たとえば、自然環境の豊かな地方や郊外に住みながら都心の企業で働いたり、家族の実家の近くに住んで子育てのサポートを受けやすくしたり、住宅コストの安い地域を選んで経済的な余裕を持ったりすることが可能になります。また配偶者の転勤や家族の介護といった事情が発生した場合でも、離職することなく居住地を変更しながら仕事を継続できるようになり、従業員のキャリア継続を支援します。このように居住地の選択肢が広がることで、従業員一人ひとりがより充実した生活を送ることができるようになります。

【従業員側】テレワークのデメリット・課題

【従業員側】テレワークのデメリット・課題

テレワークには従業員にとってもメリットがある一方で、さまざまなデメリットや課題が存在します。オフィスに出社する働き方とは異なる環境で業務を行うことで、孤独感や仕事とプライベートの切り分けの難しさ、評価への不安など、従業員が抱える固有の問題があります。ここでは、従業員の立場から見たテレワークのデメリットや課題について、具体的に解説します。

孤独感・孤立感

テレワークでは従業員間や上司と部下の間のコミュニケーションが少なくなることで、孤独感や疎外感を感じることがあります。オフィスでは日常的に同僚と顔を合わせ、雑談や何気ない会話を通じて人間関係を築くことができました。しかしテレワークでは、このような機会が大幅に減少します。

業務上の連絡はチャットやメールで行うことができても、対面でのコミュニケーションに比べて心理的な距離を感じやすく、組織に所属している実感が薄れることがあります。特に新入社員や異動したばかりの従業員にとっては、チームに溶け込むことが難しくなり、孤独感が強まる傾向があります。

また、コロナ禍でのテレワークで精神的に息詰まり、心身のバランスを崩して休職になるケースもあります。孤立感が続くと、モチベーションの低下やメンタルヘルスの問題につながるリスクもあるため、企業側は定期的なオンライン面談やバーチャルランチなど、コミュニケーションの機会を意識的に設ける必要があります。

オンオフの切り替えの難しさ

リモートワークでは、作業効率の低下を感じている方もいます。その要因は、仕事とプライベートの区別が難しく、ほかのことに気を取られてしまうからです。自宅で勤務する場合、生活空間と仕事空間が同じであるため、集中力を維持することが困難になることがあります。

オフィス勤務では、出社することでオン・オフを切り替えることができたのに対し、リモートワークではうまく切り替えられない方が目立つようです。特に、専用のワークスペースを確保できない従業員にとっては、家族の声や生活音が気になり、業務に集中しづらい環境となります。

また、仕事とプライベートの境界が曖昧になることで、長時間労働につながるリスクもあります。「もう少しだけ」と仕事を続けてしまい、結果的に過重労働となり、心身の健康を損なう可能性があります。オンオフの切り替えを意識的に行うためには、勤務時間を明確に設定し、終業時にはパソコンを閉じるといった習慣を身につけることが重要です。

自己管理能力が求められる

テレワークでは、上司や同僚の目が届かない環境で業務を行うため、従業員一人ひとりに高い自己管理能力が求められます。オフィスでは周囲の様子を見ながら仕事のペースを調整できましたが、テレワークでは自分自身でスケジュールを管理し、計画的に業務を進める必要があります。

自己管理が苦手な従業員にとっては、タスクの優先順位付けや時間配分が難しく、業務の遅延や品質の低下につながる可能性があります。また、自宅には誘惑も多く、集中力を維持するための自己規律も必要です。

企業側は、従業員の自己管理能力を高めるための研修や、進捗管理ツールの導入、定期的な進捗確認の機会を設けるなどのサポートが求められます。従業員自身も、一日のスケジュールを明確にし、休憩時間を設定するなど、自律的な働き方を身につけることが大切です。

評価基準の不透明さ

テレワークでは上司が従業員の様子を直接見ることができないため、適切な評価が難しくなります。従来のオフィス勤務では、業務の進め方や勤務態度、チームへの貢献度など、プロセスも含めて評価されていました。しかし、テレワークでは上司が従業員の働きぶりを直接確認できないため、成果物のみで評価されることが多くなります

これにより、従業員側は「自分の努力が正当に評価されているのか」という不安を感じやすくなります。特に、成果が数値化しにくい職種や、サポート業務を担当している従業員にとっては、評価基準の不透明さが大きなストレスとなります。

テレワークでは業務プロセスを評価することが難しくなます。そのため、従来どおりの評価基準を適用すべきか、目標管理制度に基づく成果主義を導入した方が良いのか、迷う企業があるようです。企業側は、テレワーク環境に適した評価制度を明確に定め、従業員に対して透明性のある評価基準を示すことが重要です。定期的な1on1ミーティングを実施し、目標設定や進捗確認、フィードバックを丁寧に行うことで、従業員の不安を軽減できます。

コミュニケーション不足

テレワークにおける最も大きな課題のひとつが、社内コミュニケーションの減少です。オフィスでは、ちょっとした質問や確認を気軽に行うことができましたが、テレワークではチャットやメールを介してのやり取りとなり、心理的なハードルが高くなります。

また、業務に関する情報共有がうまくいかず、業務効率が下がる可能性も考えられます。対面でのコミュニケーションでは、相手の表情や声のトーンから意図を汲み取ることができますが、テキストベースのやり取りでは誤解が生じやすく、認識のズレが発生することもあります。

さらに、雑談やちょっとした相談の機会が減ることで、チーム内の一体感が薄れ、業務上の連携がスムーズにいかなくなることもあります。こうしたコミュニケーション不足を解消するためには、ビジネスチャットツールやWeb会議システムを積極的に活用し、定期的なオンラインミーティングやチーム内での情報共有の場を設けることが重要です。

テレワーク導入の進め方

テレワーク導入の進め方

テレワークを成功させるためには、計画的に段階を踏んで導入を進めることが重要です。ここでは、テレワーク導入を円滑に進めるための9つのステップを詳しく解説します。各ステップを丁寧に実施することで、企業と従業員の双方にとって最適なテレワーク環境を構築できます。

STEP1:導入目的の明確化

テレワーク導入を成功させるための第一歩は、導入目的を明確にすることです。「なぜ自社にテレワークが必要なのか」という問いに対する明確な答えを持つことで、導入プロセス全体の方向性が定まります。

導入目的は企業によってさまざまです。働き方改革の推進、優秀な人材の確保、オフィスコストの削減、BCP対策、従業員のワークライフバランス向上など、自社が抱える課題や目指すべき姿を具体的に洗い出しましょう。目的が明確になれば、どのようなテレワーク体制を構築すべきかが自ずと見えてきます

また、経営層だけでなく、すべての従業員が導入目的を理解し、共有することが重要です。全社的な意識の統一がなければ、導入後にトラブルが発生するリスクが高まります。

STEP2:現状分析と対象範囲の決定

導入目的を明確にしたあとは、自社の現状を正確に把握し、テレワークの対象範囲を決定します。すべての部署や従業員が一斉にテレワークを始められるとは限らないため、段階的な導入計画が必要です。

まず、現在の業務内容を精査し、テレワークに適している業務とそうでない業務を分類しましょう。事務作業やIT関連業務は比較的テレワークに適していますが、接客業や製造業など、現場での作業が必須となる業務には工夫が必要です。

対象範囲を決める際の検討項目は以下の通りです。

検討項目 具体的な内容
対象部署 どの部署からテレワークを開始するか
対象従業員 正社員のみか、契約社員やパートも含めるか
対象業務 自己完結型の業務か、チーム作業が必要な業務か
実施頻度 週に何日テレワークを認めるか、完全テレワークも可能とするか
実施形態 在宅勤務、モバイル勤務、サテライトオフィスのいずれを採用するか

現状分析では、既存の社内制度や規則がテレワークに対応できるかも確認しましょう。紙ベースの承認フローや押印が必要な業務が残っている場合は、電子化やワークフローシステムの導入を検討する必要があります。

STEP3:セキュリティガイドラインの策定

テレワークでは、従業員が社外から社内システムにアクセスする機会が増えるため、セキュリティ対策が極めて重要になります。情報漏洩や不正アクセスのリスクを最小限に抑えるために、セキュリティガイドラインを策定しましょう。

セキュリティガイドラインには、情報セキュリティに関する組織としての基本方針や行動指針を明記します。具体的には、持ち出しPCの保管方法、アプリケーションのインストール条件、パスワード管理の方法、VPN接続の使用ルール、公共Wi-Fiの利用制限などが含まれます。

多くの企業では既にセキュリティガイドラインを設けていますが、テレワーク導入に伴い、社外での業務環境に対応した内容にカスタマイズする必要があります。万が一、セキュリティ事故が発生した場合の連絡先や対応手順も明確にしておきましょう。

STEP4:ICTツール・システムの選定

テレワークを円滑に進めるには、適切なICTツールとシステムの選定・導入が不可欠です。オフィスで使用しているツールを社外でも同様に使えるか確認し、必要に応じて新たなツールを導入します。

導入を検討すべき主なICTツールには、Web会議システム、ビジネスチャットツール、クラウドストレージ、勤怠管理システム、ワークフローシステム、プロジェクト管理ツールなどがあります。これらのツールを効果的に組み合わせることで、場所を問わず業務を進められる環境が整います。

ツール選定では、コストだけでなく、使いやすさ、セキュリティ機能、既存システムとの連携性も重視しましょう。また、従業員が使用するパソコンやタブレット、Webカメラ、ルーターなどのハードウェアも準備が必要です。

STEP5:就業規則・ルールの整備

テレワーク導入にあたっては、就業規則や社内ルールの整備が法的にも実務的にも重要になります。労働時間の管理方法、テレワーク時の労働条件、費用負担のルールなどを明確に定めましょう。

就業規則の変更が必要になる主な項目は以下の通りです。

  • テレワーク勤務の定義と対象者
  • 労働時間の管理方法(始業・終業の報告方法など)
  • 通信費や光熱費などの費用負担
  • テレワーク手当の支給基準
  • テレワーク時の服務規律
  • 情報セキュリティに関する遵守事項

厚生労働省が公表している「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を参考にしながら、自社に適したルールを整備することをおすすめします。

STEP6:社内研修・教育の実施

テレワーク体制が整ったら、従業員に対する研修や教育を実施します。導入の目的や意義を丁寧に説明し、全従業員の理解と協力を得ることが成功の鍵となります。

研修内容には、テレワークのメリットと注意点、使用するICTツールの操作方法、セキュリティガイドラインの遵守事項、勤怠管理の方法、緊急時の連絡体制などを含めます。従業員だけでなく、テレワーク環境下でマネジメントを行う管理職に対しても、適切な研修を実施しましょう。

説明会やオンライン研修、eラーニングなど、さまざまな形式を活用して、すべての従業員が十分に理解できるまで繰り返し実施することが重要です。

STEP7:トライアル実施

本格導入の前に、小規模なトライアル(試験導入)を実施することを強く推奨します。一部の部署や従業員を対象に短期間テレワークを実施し、実際に運用する中で課題を洗い出します。

トライアル期間中は、業務の進捗状況、コミュニケーションの円滑さ、ICTツールの使いやすさ、セキュリティ対策の有効性などを細かくチェックしましょう。従業員からのフィードバックを積極的に収集し、問題点を早期に発見・改善することで、本格導入時のトラブルを最小限に抑えられます。

トライアル実施により、企業側は制度やルールの変更を段階的に進められ、従業員側も新しい働き方に徐々に慣れることができます。

STEP8:本格導入と効果測定

トライアルでの課題を改善したあと、いよいよテレワークの本格導入に移ります。対象範囲を拡大し、段階的に全社展開を進めていきましょう。

本格導入後は、定期的に効果測定を行うことが重要です。生産性の変化、従業員満足度、コスト削減効果、離職率の変化などを数値化し、導入目的が達成されているかを評価します。

効果測定の結果は経営層に報告するとともに、従業員にもフィードバックすることで、テレワークの意義を再確認し、モチベーション向上につなげられます。

STEP9:継続的な改善(PDCAサイクル)

テレワークは導入して終わりではありません。継続的な改善を繰り返すことで、より効果的な働き方を実現できます。PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回しながら、常に最適な状態を目指しましょう。

定期的に従業員アンケートを実施したり、管理職からのヒアリングを行ったりして、現場の声を吸い上げます。新たな課題が見つかれば速やかに対策を講じ、成功事例は社内で共有して横展開を図ります。

また、ICTツールの進化や労働法制の改正など、外部環境の変化にも柔軟に対応していく必要があります。テレワークを単なる制度として固定化せず、常に改善し続ける姿勢が、長期的な成功につながります。

テレワークに必要なICTツール

テレワークに必要なICTツール

テレワークを円滑に運用するためには、適切なICTツールの導入が不可欠です。オフィスから離れた場所で働く従業員同士が効率的にコミュニケーションを取り、業務を遂行するためには、ICTの力を最大限に活用する必要があります。ここでは、テレワークに必要な代表的なツールを紹介します。

Web会議システム

Web会議システムは、遠隔地にいるメンバーと映像や音声でリアルタイムにコミュニケーションを取るためのツールで、テレワークに欠かせないツールの一つです。対面での会議と同様に、顔を見ながら細かなニュアンスまで伝えられるため、メールやチャットでは伝わりにくい内容も正確に共有できます。

代表的なWeb会議システムには、Zoom、Microsoft Teams、Google Meetなどがあります。これらのツールでは、画面共有機能や録画機能、チャット機能なども備えており、会議の効率化に貢献します。導入の際は、社内の利用人数や求める機能、セキュリティ要件に応じて選定することが重要です。

ビジネスチャットツール

ビジネスチャットツールは、社内のコミュニケーションを円滑にするためのツールです。メールに比べて気軽にやり取りができるため、迅速な情報共有や質問への回答が可能になり、テレワーク時の孤立感を軽減する効果も期待できます

Slack、Chatwork、Microsoft Teamsなどが代表的なビジネスチャットツールとして広く利用されています。グループチャット機能やファイル共有機能、タスク管理機能なども備えており、プロジェクトごとにチャンネルを分けて管理することで、情報の整理がしやすくなります。また、メールと異なり、リアルタイムでのやり取りが可能なため、業務のスピードアップにもつながります。

クラウドストレージ

クラウドストレージは、インターネット上にファイルを保存し、複数のメンバーで共有・編集できるツールです。テレワーク環境では、社内サーバーにアクセスできない場合も多いため、クラウド上でファイルを管理することで、場所を問わずに業務を進められます。

Google Drive、Dropbox、OneDriveなどが代表的なクラウドストレージサービスです。ファイルのバージョン管理機能や、閲覧・編集権限の設定機能も備えており、セキュリティ面でも安心して利用できます。また、複数人での同時編集も可能なため、共同作業の効率が大幅に向上します。

勤怠管理システム

テレワークでは、従業員の勤務状況が見えにくくなるため、適切な勤怠管理が課題となります。勤怠管理システムを導入することで、従業員の始業・終業時刻や労働時間を正確に把握し、適切な労務管理を実現できます

ジョブカン、KING OF TIME、Akashiなどの勤怠管理システムでは、パソコンやスマートフォンから打刻ができ、管理者はリアルタイムで従業員の勤務状況を確認できます。また、残業時間の自動計算や有給休暇の管理機能も備えており、労務管理の負担を軽減します。働き方改革関連法案への対応も考慮し、客観的方法による労働時間把握が求められる中、勤怠管理システムの導入は必須といえます。

ワークフローシステム

ワークフローシステムは、申請・承認業務をオンライン上で完結させるためのツールです。テレワーク環境では、従来の紙ベースでの押印による承認プロセスが難しくなるため、AppRemoなどのワークフローシステムの導入が重要です。

経費精算、稟議申請、休暇申請などの各種申請をシステム上で行うことで、承認者がどこにいても迅速に承認作業を進められます。また、申請の進捗状況をリアルタイムで確認できるため、業務の透明性が高まります。承認済みの書類は電子保存されるため、紙の保管スペースも不要になり、検索性も向上します。

プロジェクト管理ツール

プロジェクト管理ツールは、チーム全体でタスクの進捗状況を可視化し、プロジェクトを効率的に管理するためのツールです。テレワークでは、各メンバーの作業状況が見えにくくなるため、プロジェクト管理ツールを活用することで、チーム全体の状況を把握できます。

Trello、Asana、Backlogなどのプロジェクト管理ツールでは、タスクの割り当て、期限設定、進捗管理などを一元的に行えます。カンバン方式やガントチャート形式での表示にも対応しており、視覚的にプロジェクトの状況を把握できます。また、タスクごとにコメント機能やファイル添付機能も備えており、情報を集約して管理できるため、業務の効率化に大きく貢献します。

ワークフロー導入前にテレワーク改善手順ガイド
ワークフローシステムから始めるDX推進ガイド

テレワークのセキュリティ対策

テレワークのセキュリティ対策

テレワークを導入する際には、オフィス勤務とは異なるセキュリティリスクへの対応が不可欠です。社外で業務を行うため、端末の紛失や情報漏洩、不正アクセスなど、さまざまなセキュリティリスクが発生します。適切なセキュリティ対策を講じることで、これらのリスクを最小限に抑え、安全なテレワーク環境を構築できます。本章では、総務省のテレワークセキュリティガイドラインなどを参考にしながら、企業が実施すべき具体的な対策を解説します。

セキュリティリスクの種類

テレワーク環境では、従来のオフィス勤務時には想定されなかった多様なセキュリティリスクが存在します。主なリスクとして、端末の紛失・盗難、マルウェア感染、不正アクセス、情報漏洩、のぞき見などが挙げられます。

まず、ノートパソコンやスマートフォンなどのモバイル端末を紛失したり盗難に遭ったりする可能性があります。特にカフェやコワーキングスペースなど公共の場所で業務を行う際には、端末の物理的な管理が重要です。次に、インターネット経由でのマルウェア感染や不正アクセスのリスクも高まります。自宅やカフェなどの通信環境は、オフィスに比べてセキュリティが脆弱な場合が多く、攻撃者に狙われやすくなります。

警視庁のサイバー空間をめぐる脅威の情勢報告によると、2024年上半期におけるランサムウェア被害の感染経路は、VPN機器経由が約55%、リモートデスクトップ経由が約31%となっており、リモートワークに利用される機器等の脆弱性や強度の低い認証情報を悪用されたと考えられる割合が約86%を占めていました。さらに、画面を第三者に見られることによる情報漏洩や、通信内容の盗聴といったリスクも考慮する必要があります。

リスクの種類 具体的な脅威 想定される被害
端末の紛失・盗難 ノートパソコンやスマートフォンの置き忘れ、盗難 機密情報の漏洩、不正利用
マルウェア感染 ウイルス、ランサムウェア、スパイウェア データの破壊、情報窃取、システム停止
不正アクセス VPN機器やリモートデスクトップへの攻撃 社内ネットワークへの侵入、データ改ざん
情報漏洩 画面ののぞき見、通信内容の盗聴 機密情報や個人情報の流出
認証情報の漏洩 パスワードの使い回し、脆弱な認証 不正ログイン、なりすまし

端末セキュリティ対策

テレワークで使用する端末自体のセキュリティを強化することは、情報漏洩を防ぐための基本的な対策です。まず、ウイルス対策ソフトの導入と定期的な更新が不可欠です。テレワークではインターネットへの接続や外付けの記録媒体を活用するケースがほとんどなので、端末がウイルスに感染するリスクは少なくありません。不正アクセス検知や不正プログラム検出などを搭載したウイルス対策ソフトを導入し、常に最新の状態を保つ必要があります。

次に、端末の紛失・盗難に備えて、ハードディスクの暗号化やBIOS・ハードディスクへのパスワード設定を行うことが重要です。万が一端末を紛失した場合でも、暗号化されていればデータの不正利用を防げます。また、自動画面ロック機能の設定や覗き見防止フィルターの活用も有効です。一定時間操作がない場合に自動でロックがかかるように設定し、第三者による不正操作を防ぎましょう。

さらに、MDM(モバイルデバイス管理)やEDR(エンドポイント検知・対応)などのツールを活用することで、端末の一元管理とセキュリティ強化が可能になります。EDRがインストールされた端末では、マルウェア感染が検知されると、即座にシステム管理者に通知が飛びます。これにより、被害を最小限に抑えることができます。OSやアプリケーションのセキュリティパッチも迅速に適用し、既知の脆弱性を放置しないことが大切です。

ネットワークセキュリティ対策

テレワーク環境では、自宅や外出先から社内ネットワークにアクセスするため、通信経路のセキュリティ確保が重要です。ウイルス感染や盗聴を阻止するには、テレワーク端末と社内ネットワークの間の通信経路を暗号化することが有効です。

VPN(仮想専用通信網)の導入は、テレワークにおけるネットワークセキュリティの基本です。VPNを利用することで、インターネット上に仮想の専用線を設定し、自宅の端末とオフィス内のネットワークを安全につなげます。ただし、VPN機器自体の脆弱性対策も重要です。VPN機器を稼働させる前に、脆弱性有無などのセキュリティチェックが十分でなかったため、セキュリティホールを狙った攻撃により社外に情報が漏洩してしまった事例も報告されています。

また、リモートデスクトップ方式の採用も効果的です。この方式では、テレワーク端末には画面情報のみが転送され、データは社内サーバーに保存されるため、端末紛失時のリスクを大幅に軽減できます。さらに、Wi-Fi接続時にはWPA2やWPA3などの暗号化規格を使用し、公衆Wi-Fiの利用は極力避けるべきです。やむを得ず公衆Wi-Fiを使用する場合は、必ずVPN経由でアクセスするようにしましょう。

データ保護・情報漏洩対策

テレワーク環境では、データの保護と情報漏洩の防止が極めて重要です。まず、クラウドストレージやファイル共有サービスの適切な管理が必要です。会社が認可しないクラウドサービスや個人アカウントの利用を制御することは大切です。セキュリティ対策をした端末からアクセス可能なサービスであっても、機密ファイルをアップロードした後に情報が漏洩するリスクがあるためです。

アクセス権限の適切な設定も重要です。業務上必要な情報のみにアクセスできるよう、最小権限の原則に基づいて権限を付与します。また、データのバックアップを定期的に実施し、ランサムウェア攻撃などによるデータ消失に備えることも欠かせません。バックアップデータは、オフライン環境や別の物理的な場所に保管することで、より高い安全性を確保できます。

さらに、本人認証の強化も情報漏洩対策として有効です。認証をより強固なものにする上では、2段階認証やSSO認証の利用が推奨されます。単純なパスワード認証だけでなく、ワンタイムパスワードや生体認証などを組み合わせた多要素認証を導入することで、不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。印刷や外部記録媒体へのコピーを制限する機能も、データの持ち出しによる情報漏洩を防ぐために有効です。

従業員教育とセキュリティ意識向上

どれほど高度な技術的対策を講じても、従業員のセキュリティ意識が低ければ、その効果は限定的です。制度や仕組みをつくるだけではなく、テレワーク勤務者がガイドラインやルールを確実に遵守し、セキュリティ対策を実効力のあるものとするためには、定期的な研修などの教育・啓発活動の実施が必要です。

定期的なセキュリティ研修の実施により、従業員一人ひとりに情報セキュリティの重要性を理解してもらうことが欠かせません。研修内容には、フィッシングメールの見分け方、安全なパスワードの設定方法、不審なWebサイトへのアクセス回避、ソーシャルエンジニアリング攻撃への対応などを含めるべきです。また、実際に発生したセキュリティインシデントの事例を共有することで、リスクの具体性を理解してもらうことも効果的です。

eラーニングやイントラネット内での通知、ポスターの掲示なども活用し、継続的にセキュリティ意識を高める取り組みが重要です。テレワーク勤務者は、オフィスから目の届きにくい場所で作業をすることとなります。そのためにも、ルールの趣旨や、ルールを遵守することの重要性を自覚してもらうことが大切です。セキュリティインシデント発生時の報告体制を明確にし、迅速な対応ができる仕組みを整えることも忘れてはなりません。

テレワークのセキュリティ対策として最も大切なのは、行った対策を定期的に確認すること、そして定期的に更新を行うことです。常に新しい攻撃の手口が生まれているため、使用しているツールの情報を継続して集め、最新のセキュリティ対策を維持することが求められます。

テレワーク時の労務管理

テレワーク時の労務管理

テレワークを導入する企業にとって、労務管理の適切な実施は避けて通れない重要な課題です。オフィス勤務とは異なる環境で働く従業員に対しても、労働基準法をはじめとする労働関連法令は例外なく適用されるため、適正な労務管理を行う責任があります。ここでは、テレワーク時の労務管理における重要なポイントについて解説します。

労働時間の適切な管理

テレワークにおいて企業側の課題として挙げられるのが「労働時間の管理」です。オフィス勤務では管理者が従業員の始業・休憩・終業を目視で確認できますが、テレワークでは従業員がそれぞれの自宅などで業務を行うため、勤務状況の把握が困難になります。

労働時間を適切に管理するためには、使用者は労働時間を適正に把握する義務があり、始業・終業時刻の確認や記録を行う仕組みが必要です。具体的な方法としては、勤怠管理システムを活用した打刻、メールやチャットツールでの始業・終業報告、パソコンのログオン・ログオフ時刻の記録などが挙げられます。

テレワークにより長時間労働が生じるおそれのある労働者や、休日・深夜労働が生じた労働者に対して、注意喚起を行うことが有効です。労務管理システムを活用して対象者に自動で警告を表示する方法や、管理者が労働時間の記録を踏まえて注意喚起する方法などがあります。

人事評価制度の見直し

テレワークでは、従業員の働く姿勢や業務プロセスを直接確認できないため、従来のプロセス重視の評価方法では適切な人事評価が困難になります。特に成果が明確な数字で表しにくいバックオフィス業務などでは、評価基準の見直しが必要です。

テレワークに適した評価制度としては、目標管理制度(MBO)や目標と主要な結果(OKR)を基軸とした成果重視の評価方法が挙げられます。ただし、評価基準を変更する際には従業員の理解を得ることが重要であり、丁寧な説明と合意形成のプロセスが求められます。

評価方法 特徴 テレワークへの適合性
プロセス重視 業務の進め方や勤務態度を評価 直接確認が難しく不向き
成果重視(MBO/OKR) 目標達成度や成果物を評価 客観的な評価が可能で適している

テレワーク手当・経費負担

テレワークを実施する際には、通信費や光熱費、備品購入費など、従業員が負担する費用が発生します。就業規則にはテレワークに必要な費用負担について、手当として給付するのか、経費として計上するのかを明記する必要があります。

具体的な費用負担の方法としては、在宅勤務手当として月額固定で支給する方法、実費精算による経費として処理する方法、パソコンや通信機器などの必要機材を会社が貸与する方法などがあります。企業の状況や業務内容に応じて、適切な負担方法を検討し、就業規則に明記することが重要です。

厚生労働省のテレワークガイドライン

厚生労働省は「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」を公開しており、テレワークを導入する企業が参考にすべき指針を示しています。このガイドラインでは、労働時間管理の方法、労働条件の明示、作業環境の整備など、テレワークにおける労務管理の留意点が詳しく解説されています。

初めてテレワークを導入する企業や、労務管理に課題を抱えている企業は、このガイドラインを参照することで、適切な労務管理の実施方法を理解できます。また、厚生労働省ではテレワーク相談センターも開設しており、労務管理上の課題に対する相談や他社事例の情報提供を受けることができます。

就業規則の変更ポイント

労働基準法15条において、企業は従業員の賃金・労働時間・就業場所を書面などで明示しなければならないと定められています。そのため、テレワークを導入する際には就業規則の改訂が必要です。

就業規則で定めるべき主な項目は以下の通りです。

  • テレワーク勤務の対象者と実施場所(自宅、サテライトオフィスなど)
  • 労働時間の管理方法(始業・終業時刻、休憩時間の扱い、始業・終業時の連絡方法)
  • 時間外労働・休日労働・深夜労働に関する規定
  • 中抜け時間の取り扱い
  • テレワーク時の費用負担(通信費、光熱費、備品など)
  • 情報セキュリティに関する規定
  • 業務報告の方法

従業員が常時10人以上いる企業は、就業規則を所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。また、就業規則の作成・変更は労働条件の変更に関わるため、労働組合や従業員との話し合いと合意が必要です。従業員が10人未満の企業であっても、労使協定を締結し、労働条件を通知することが求められます。

テレワーク導入の助成金・補助金

テレワーク導入の助成金・補助金

テレワークの導入には、ICTツールの導入費用や就業規則の整備など、相応の初期投資が必要です。しかし、国や地方自治体が提供する助成金・補助金を活用することで、導入時の費用負担を大幅に軽減できます。ここでは、テレワーク導入時に利用できる主な助成金・補助金制度について紹介します。

国の助成金制度

国が実施するテレワーク関連の助成金制度として、厚生労働省による「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」があります。この制度は、適切な労務管理下におけるテレワークを制度として導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主が助成対象となります。

2025年4月1日から、機器等導入助成が「制度導入助成」に変更となり、新規導入のみならずテレワークの実施を拡大する企業についても助成対象となっています。助成金は「制度導入助成」と「目標達成助成」の2種類があり、テレワークを実施しやすい職場風土作りや外部専門家によるコンサルティング、就業規則の整備などが助成対象となります。

また、中小企業・小規模事業者等が業務効率化を目的にITツールを導入する際には、「IT導入補助金」も活用できます。補助率は中小企業の場合1/2(一定の条件を満たす場合は2/3以内)となっており、テレワーク環境の整備に必要なソフトウェアやサービス導入にも利用可能です。

自治体の補助金制度

地方自治体もテレワーク導入を支援する独自の補助金制度を実施しています。特に東京都では、「テレワークトータルサポート助成金」や「テレワーク促進助成金」といった複数の支援制度を設けています。

テレワークトータルサポート助成金は、東京都が実施するテレワーク相談窓口やコンサルティングを利用した都内中堅・中小企業等に対し、テレワーク機器導入経費等のテレワーク環境整備に係る経費を助成するものです。助成金の上限額は、常時雇用する労働者が2人以上30人未満の企業等で150万円、30人以上999人以下の企業等で250万円となっています。

東京都以外でも、各都道府県や市区町村がテレワーク導入やサテライトオフィス設置に対する独自の補助金制度を実施しています。地域によって支援内容や条件が異なるため、自社の所在地や事業所がある自治体のホームページで最新情報を確認することをおすすめします。

申請方法と注意点

助成金・補助金を申請する際には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、助成金は一定の要件を満たせば原則的に支給されるものが多いのに対し、補助金にはあらかじめ採択件数や予算が設定されており、審査を経て支給が決定されます

申請にあたっては、事前に対象経費や必要書類を確認し、申請期限までに余裕を持って準備することが大切です。多くの助成金・補助金制度では、テレワーク導入前に計画書の提出が必要であり、導入後に実績報告を行う必要があります。また、助成金の支給は後払いが基本となるため、一時的に自己資金で費用を負担する必要がある点にも注意が必要です。

制度名 実施主体 主な対象者 助成上限額
人材確保等支援助成金(テレワークコース) 厚生労働省 中小企業事業主 最大200万円程度
IT導入補助金 経済産業省 中小企業・小規模事業者等 通常枠による
テレワークトータルサポート助成金 東京都 都内中堅・中小企業等 150万円〜250万円

申請手続きの代行を持ちかける悪質な業者にも注意が必要です。見積業者による申請手続の代行は認めていない制度もあり、受給後その違反が判明した場合、支給決定取消の上、違約加算金を付加した助成金の返還を受けることがあります。申請は必ず自社で行うか、信頼できる専門家に相談するようにしましょう。

テレワークの課題を解決するAppRemo

テレワークの課題を解決するAppRemo

テレワークを導入した企業では、申請・承認業務のオンライン化が重要な課題となっています。従来のように紙の書類に押印してもらうことが難しくなり、業務が滞るケースが数多く発生しています。ここでは、ワークフローシステムAppRemoがテレワーク環境でどのように申請・承認業務の課題を解決できるのかを解説します。

ワークフローシステムAppRemoとは

AppRemoは、Excelファイルをアップロードして申請できるワークフローシステムです。Webフォームの作成や印刷用帳票の作成が不要で、申請書種類や承認ルート情報などをブラウザから追加設定すれば、簡単に申請フォームを作成できます。システムの専門知識がなくても、誰でも簡単に設定・運用できることが特長です。

テレワークでの申請・承認業務の課題

テレワーク環境では、申請・承認業務において次のような課題が発生しています。対面でのコミュニケーションが減少するため、申請内容の確認や修正依頼に時間がかかります。また、承認者が外出していたり在宅勤務をしていたりする場合、承認が滞り、業務全体のスピードが低下します。紙の書類を使った従来の方法では、承認のためだけに出社しなければならないこともあり、テレワークの効果が十分に発揮できません。

AppRemoで解決できること

AppRemoを導入することで、テレワーク時の申請・承認業務における様々な課題を解決できます。

場所を選ばない申請・承認

インターネット環境があればいつでも、どこでも確認できます。自宅でも外出先でも、パソコンやスマートフォンから申請・承認業務を行えるため、テレワーク環境でも業務が滞ることがありません。申請の進捗状況も可視化されるため、今誰が承認しているのかがひと目でわかります。

Excel帳票の活用

運用中のExcelファイルをそのまま使用できるため、システム導入時の負荷やコストを軽減でき、迅速なシステム化を図ることができます。申請者は使い慣れたExcelで入力できるため、新しいシステムへの抵抗感が少なく、スムーズに導入できます。

他システムとの連携

承認が完了したデータを別システムで使いたいとき、AppRemoなら過去データの検索やデータ抽出ができるので、後続業務も効率化できます。APIを使用して外部システムとデータの共有や連携が可能で、データの一貫性を確保することができます。経費精算システムや人事システムなど、既存システムとの連携により、さらなる業務効率化が実現します。

充実のコミュニケーション機能

申請内容の確認や差戻もシステム上でコメントを入れて完結します。各申請ごとにチャット機能が備わっているため、申請内容に関する質問や修正依頼をその場で行うことができます。わざわざメールや電話で連絡を取る必要がなく、やり取りもすべてデータとして保存されるため、後から経緯を確認することも可能です。

AppRemoの導入事例

実際にAppRemoを導入した企業では、申請・承認ルートの自動化による効率化や、紙の申請書の大幅削減といった業務改善が進んでいます。導入から半年で会社にとって非常に重要なシステムとなった事例もあり、テレワーク環境において欠かせないツールとして活用されています。詳しい導入事例については、こちらをご覧ください。

よくある質問(FAQ)

テレワークとリモートワークに違いはありますか?

テレワークは日本の行政や企業で使われる用語で、「tele(離れた場所)」と「work(働く)」を組み合わせた和製英語です。一方、リモートワークは「remote(遠隔の)」と「work(働く)」を組み合わせた英語由来の言葉です。意味としてはほぼ同じで、オフィス以外の場所で働くスタイルを指します。日本では行政文書や助成金関連では「テレワーク」、IT企業やスタートアップでは「リモートワーク」が使われる傾向があります。

テレワークを導入するのに必要な最低限のツールは何ですか?

最低限必要なのは、Web会議システム、ビジネスチャットツール、クラウドストレージの3つです。Web会議システムは対面でのコミュニケーションを補完し、ビジネスチャットは迅速な情報共有を可能にします。クラウドストレージは場所を問わずファイルにアクセスできる環境を提供します。これらに加えて、業務内容に応じて勤怠管理システムやワークフローシステムを導入することで、より円滑なテレワーク環境が整います。

テレワーク導入にかかる費用の目安はどのくらいですか?

導入費用は企業規模や導入範囲によって大きく異なりますが、従業員1人あたり月額3,000円〜10,000円程度が目安となります。これにはWeb会議システム、チャットツール、クラウドストレージなどの月額利用料が含まれます。初期費用としては、セキュリティ対策のためのVPN構築やモバイル端末の購入などで数十万円〜数百万円かかる場合があります。ただし、国や自治体の助成金・補助金を活用することで、導入コストを大幅に削減できる可能性があります。

テレワークでは残業代はどうなりますか?

テレワークでも労働基準法が適用されるため、残業代の支払い義務は通常勤務と変わりません。労働時間を適切に把握し、法定労働時間を超えた場合は時間外労働として割増賃金を支払う必要があります。勤怠管理システムを導入して正確な労働時間を記録することが重要です。また、事業場外みなし労働時間制を適用する場合もありますが、適用には厚生労働省のガイドラインに沿った条件を満たす必要があります。

テレワークに向いている職種・向いていない職種はありますか?

向いている職種は、IT・エンジニア、マーケティング、企画、事務、経理、カスタマーサポートなど、パソコンで完結する業務が中心の職種です。一方、製造業の現場作業、接客業、医療・介護など、対面でのサービス提供や物理的な作業が必要な職種は導入が難しい傾向にあります。ただし、職種全体でテレワークが不可能というわけではなく、業務を分解して一部の業務だけテレワーク化するハイブリッド型の働き方も検討できます。

テレワークのセキュリティ対策で最も重要なことは何ですか?

最も重要なのは、技術的対策と従業員教育の両輪で進めることです。技術的には、VPNの利用、端末の暗号化、多要素認証の導入、セキュリティソフトの導入などが必要です。しかし、技術だけでは不十分で、従業員一人ひとりがセキュリティ意識を持つことが不可欠です。フィッシング詐欺への注意、パスワード管理の徹底、公共Wi-Fiの使用制限など、定期的な研修を通じて意識向上を図ることが重要です。

テレワーク導入で助成金は受けられますか?

はい、国や自治体からテレワーク導入に関する助成金・補助金が提供されています。厚生労働省の「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」や、東京都の「テレワーク促進助成金」などがあります。助成金の内容や条件は年度や自治体によって異なり、申請期限も設定されているため、事前に各機関のウェブサイトや相談窓口で最新情報を確認することをおすすめします。申請には就業規則の整備や一定期間の実施実績が求められる場合があります。

テレワークで従業員の評価はどうすればよいですか?

成果主義やプロセス評価を組み合わせた評価制度への見直しが有効です。テレワークでは勤務態度や残業時間などの「見える評価」が難しくなるため、業務目標の達成度や成果物の質を重視する評価基準に移行する企業が増えています。定期的な1on1ミーティングで進捗確認やフィードバックを行い、目標管理制度(MBO)やOKRなどの手法を活用することで、公平で透明性の高い評価が可能になります。評価基準を明確にして従業員に共有することが重要です。

まとめ

テレワークは、働き方改革や新型コロナウイルス感染症の影響を背景に、多くの企業で導入が進んでいる新しい働き方です。企業側には固定費削減や優秀な人材の採用、生産性向上などのメリットがあり、従業員側には通勤時間の削減やワークライフバランスの実現といった利点があります。

一方で、勤怠管理の複雑化、セキュリティリスク、コミュニケーション不足などの課題も存在します。これらの課題を解決するには、適切なICTツールの導入、セキュリティ対策の強化、就業規則の整備、そして継続的な改善が不可欠です。

テレワーク導入を成功させるためには、導入目的を明確にし、段階的に進めることが重要です。トライアルを実施して課題を洗い出し、PDCAサイクルを回しながら自社に最適な形に調整していくことで、持続可能なテレワーク環境を構築できます。

特に申請・承認業務のテレワーク化は、多くの企業が直面する課題の一つです。紙ベースの稟議書や押印プロセスがテレワークの障壁となっているケースが少なくありません。このような課題を解決するのがワークフローシステムAppRemoです。AppRemoを導入すれば、場所を選ばずスマートフォンやタブレットから申請・承認が可能になり、既存のExcel帳票をそのまま活用できるため、スムーズな移行が実現します。

テレワーク環境を整備し、業務効率化を実現したい企業の担当者様は、ぜひ「AppRemo製品ガイド」をダウンロードして、具体的な機能や導入効果をご確認ください。テレワーク時代の申請・承認業務の課題解決に向けて、AppRemoが強力なサポートツールとなります。


この記事の執筆・監修者
梶原 直樹
梶原 直樹
株式会社システムエグゼ 営業部 業務改善コンサルタント IT企業に入社後、システム保守やカスタマーサポートを経験。その後、営業職に転じてSaaS製品の提案を行い、顧客の業務改善に寄与。 2024年よりシステムエグゼで「AppRemo」の提案営業に従事し、 業務効率化を軸に企業の課題解決を推進している。
新規CTA

人気資料ランキング