テレワーク導入に際して、企業が考慮すべきことの1つが、テレワーク勤務規程の作成です。どんなときにテレワーク勤務規程の作成が必要なのか、従来の就業規則との関わりや規定すべき内容を理解しましょう。この記事では、テレワーク就業規則の一例や、規則作成に必要なもの、その手順について詳しく説明します。
テレワークとは?
勤務規程について詳しく見ていく前に、そもそも「テレワークとは何か」をしっかり理解しておきましょう。
テレワークとは、「情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)」を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。これまでは、決められた時間に、所属するオフィスへ全従業員が出勤し、退勤時間まで仕事をするのが一般的でした。しかし、テレワークではオフィス以外の場所で、従業員それぞれの時間配分で働くことが可能です。
テレワークには、大きく分けて「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務」「モバイル勤務」の3種類があります。
「在宅勤務」とは、自宅を就業場所とする働き方です。通勤負担が軽減されることが大きな魅力です。
「サテライトオフィス勤務」は、自社オフィス以外のオフィスや、リモートワーク用に提供されている施設などから勤務します。
「モバイル勤務」は、電車の中やカフェなどさまざまな場所で業務を行う働き方のことです。
就業規則が必要な理由
従業員にテレワークを任せる場合、企業側には、就業規則の更新・追加が必要です。オフィス勤務では発生しなかった、テレワーク勤務ならではの状況に対応するためです。例えば、オフィス以外での通信費の負担をどう行うか、オフィス以外での社外秘文書の取り扱い方をどう定めるか、などを明確化する必要があります。テレワーク導入に際して、従業員の評価基準や手当を変更する場合なども、就業規則を更新する必要が生じます。
フレックスタイム制を採用する際も、既存の就業規則にフレックスタイム制に関するルールが定められていなければ、条文の追加が必要です。
テレワークに関する勤務規則例
では、テレワークに関連する勤務規則を実際に作成するにあたって、参考となる具体例を見てみましょう。
まず、テレワークの目的や対象者、申請方法、在宅勤務の場合の就業場所などを明示します。
例えば、在宅勤務の対象者に関しては以下のように記載します。
在宅勤務の対象者は、就業規則第〇条に規定された従業員であり、かつ以下の要件を満たしたものとする。
- 在宅勤務を希望する者
- 自宅の執務環境、セキュリティ、家族の理解のいずれも在宅勤務にふさわしいと判断される者
また、在宅勤務はどんな場合に適正とみなされるのか、従業員自身が判断できるにするチェックリストも必要です。企業側は、そのチェックリストを作成するとき、「新入社員にはテレワーク勤務を許可しない」など、勤続年数についての要件を設けることもできます。
テレワーク勤務規程作成までの5ステップ
勤務規程の作成は一見、確かに大仕事です。しかし、あらかじめステップごとに区切り、作成プロセスをきちんと把握することで、テレワーク化以後の自社と社員との関係をわかりやすく明示する、勤務規程の作成が可能となります。そこでここからは、作成までの手順を5つに区切り、1つずつ記述例を見てみましょう。
1. 「就業規則」と「テレワーク勤務規程」の関係を確認
1つ目は、就業規則とテレワーク勤務規程の関係をはっきりさせておくことです。就業規則全体の一部分をなすものとして、テレワーク勤務規程が位置づけられます。そのため、テレワーク勤務にのみ必要な規定であっても、本来は、就業規則に規定しておかなければなりません。
例えば、テレワーク勤務員の労働時間の計算が企業側では難しいときは、労働基準法第38条の2が規定する「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用できる場合があります。ただし、そのためには、あらかじめ「事業場外労働のみなし労働時間制」を自社の就業規則に規定しておく必要があります。このような状況に対応するため、労働時間に関する取り決めは、できるだけ就業規則に集約させて明記しておきましょう。
2. 必要な規程の追加・漏れがないか
2つ目に、テレワーク勤務規程について必要な規定をきちんと就業規則の本則に記載するようチェックします。テレワークにしか関係しない規定も、就業規則として記載するべきです。
例えば、就業規則の採用及び異動の条項には「社員を在宅勤務(サテライトオフィス勤務、またはモバイル勤務)させる場合の労働条件は、本就業規則ならびに別途定めるテレワーク勤務規程によるものとする」と記載します。
既存の就業規則の中に、テレワーク勤務規程を組み込むために必要な記載があるかチェックし、もし条文に不足があれば追加または修正しましょう。このとき、就業規則に必要事項を追記しつつ、その内容をテレワーク勤務規程で補うようにすると、必要事項の記述漏れを防止することができます。
3. 就業規則の変更・労働基準監査書への届出
上記ステップ2の段階で、追加や訂正が必要な条項があり、就業規則を変更した場合は、所轄労働基準監督署に届け出をします。これが3つ目のステップです。下記のページで、厚生労働省が発行しているひな型を用いながら、書類をそろえましょう。
・「参考サイト」
特に、就業規則の変更に加え、テレワーク勤務規程を新設した際は、労働基準法第89条と第90条に留意して届け出を行わねばなりません。
第89条では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して行政官庁に届け出る必要がある」と定められています。この「常時10人以上の労働者」には、正社員だけでなくパートタイム労働者も含まれるので注意してください。
また、第90条では、「就業規則の作成または変更について、使用者は労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者(労働組合がない場合)の意見を聴かなければならない」とあります。そのため、労働組合もしくは労働者を代表する者の意見書を添えてから、就業規則とテレワーク勤務規程を労働基準監督署へ提出しましょう。
労働基準法では、就業規則を労働者へ周知することも義務づけられています。具体的には、常に職場の見やすい場所に掲示、または備えつけること、また書面にて従業員に交付することで、この義務を果たしましょう。
4. テレワーク勤務の種類をチェック
4つ目のステップは、テレワークの対象者や勤務場所、勤務頻度をもとにテレワークの実施形態を把握することです。
テレワーク勤務は大きく、「雇用型テレワーカー」「自営型テレワーカー」「内職副業型テレワーカー」の3種類に分類されます。
「雇用型テレワーカー」は、さらに細かくに「外勤型」「内勤型」「通勤困難型」の3つに分けられます。「外勤型」とは、従来もオフィス以外の場所で多く仕事をしていた営業やサービス部門の従業員が、そのままテレワークへ移行した形態です。「内勤型」は人事や企画、総務など、これまでオフィスなどで行われていた仕事をテレワーク化した形態です。「通勤困難型」は出産・育児・介護・障害などで、通勤が困難な人が、在宅を中心に仕事をする形態です。この「通勤困難型」は、ケガや病気など一時的なケースもあれば、障害者などを対象に長期的に実施されるケースもあります。
「自営型テレワーカー」は、注文者から委託された業務を自宅などで行う個人事業主のことで、SOHOと呼ばれることもあります。
「内職副業型テレワーカー」は、自営型の中でも専業性が低く、ほとんどが自宅内で完結する形態です。クラウドソーシングサイトなどから案件を取得することが多く、報酬はやや低めで、専業だけでなく副業として行われることも多くなっています。
このうち、テレワーク勤務規程の対象となるのは、企業に雇用されている「雇用型テレワーカー」です。「自営型テレワーカー」と「内職副業型テレワーカー」は自ら事業を営む自営業者に分類されるため、受注元の企業が、就業規則で定める対象ではありません。
5. テレワーク勤務規程の作成
ここまでチェックが完了し、就業規則が整理できてきたら、実際にテレワーク勤務規程を作成します。テレワーク勤務規程の条文は、(上記4ステップ目で説明しました)在宅勤務を、基本とするケースが多く、モバイル勤務については、必要に応じて条文を追加するという方法で対応します。ただし、在宅勤務よりもモバイル勤務の従業員が中心である企業は、別途、「モバイル勤務規程」を作成し、ルールを明確化しましょう。その場合は特に、情報漏えい防止のためのルール作りを、再度徹底してください。
まとめ
今回紹介したステップで、勤務規程の作成をスムーズに行えば、テレワークのための規則は準備完了です。しかしテレワークを実務面へスムーズに導入するには、リモートワークに適した「テレワークフローシステム」の構築も欠かせません。テレワークによって紙の業務を削減しつつ、申請・承認業務フローを「見える化」すれば、社内で起きるさまざまな手続きを円滑にリモート化できます。
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AppRemoは直感的に操作できるインターフェースを備え、また申請フォームは誰もが慣れ親しんでいるExcelでも作成でき、項目編集も簡単です。申請書に記載されたデータは自動でデータベースに格納され、必要に応じてCSV出力が可能。申請に対する承認はスマホからでも出すことができるので、管理者の負担を大幅に減らします。こうして、申請側と管理部門側、両方の負担軽減を実現しています。
規則面がクリアできたら、実務面に便利なツールを選択し、テレワーク導入を成功させていきましょう。
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