市民開発で現場が変わる!
進め方や事例、メリット・デメリットを解説

 2025.06.10  株式会社システムエグゼ AppRemoチーム

属人化した業務や部門ごとのツール乱立により、DX推進が思うように進まないと感じていませんか?そんな課題を解決する手段として注目されているのが「市民開発」です。

IT部門に頼らず、現場の従業員自身が業務アプリを開発することで、業務の効率化と情報の一元化を同時に実現できます。本記事では、市民開発の基本から導入メリット、成功事例、進め方まで詳しく解説します。

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市民開発とは?

市民開発とは?

市民開発とは、ITの専門知識を持たない業務部門の社員が、ノーコードやローコードのツールを活用して、自ら業務アプリケーションやシステムを開発する手法です。

本章では、ノーコードやローコード、それぞれに向いているケースについて解説します。

ノーコード・ローコードとは?

ノーコードとは、プログラミング不要でアプリケーションを作成できる開発手法です。
視覚的なインターフェースを使って直感的に操作できるため、専門知識がない現場担当者でも簡単に利用できます。

一方、ローコードは一部にコードを使用するものの、基本的にはテンプレートやビジュアルツールで開発可能な方法で、複雑な要件にも柔軟に対応できます。どちらも開発スピードが速く、業務に即したツールを短期間で構築できるため、市民開発の推進において重要な手段となっています。

現場の課題に迅速かつ的確に対応できる点が大きな魅力であり、デジタル化のハードルを大きく下げる役割を果たします。

市民開発が向いているケースは?

市民開発は、特定の状況下で特に効果を発揮する手法です。以下のようなケースにおいて、市民開発の導入が有効とされています。

  • スピードが求められる小規模な開発:迅速な対応が必要な業務改善やプロトタイプの作成において、ノーコード・ローコードツールを活用することで、短期間での開発が可能
  • 業務改善や効率化を行いたい現場:現場の担当者が自身の業務プロセスを深く理解しているため、実際のニーズに即したシステムを自ら開発することで、業務の効率化が図れる
  • IT部門のリソースが不足している:IT人材の不足や予算の制約がある中、非IT部門の従業員が自ら開発を行うことで、IT部門の負荷を軽減し、全体の生産性向上に貢献する
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市民開発のメリット

市民開発のメリット

市民開発は、現場の従業員が自ら業務アプリを開発することで、業務改善のスピード向上やコスト削減、柔軟な対応を可能にする点が大きな魅力です。

本章では、5つの具体的なメリットを詳しく解説します。

開発コストの削減が可能

市民開発は、開発費や外注費の削減に大きく貢献します。これまで業務アプリやシステムの開発には、外部ベンダーへの委託が一般的であり、多大な費用と時間を要していました

しかし、ノーコード・ローコードツールの普及により、専門的なIT知識を持たない現場の従業員でもアプリ開発が可能となり、外注にかかるコストや調整の手間を省けます。また、業務内容を熟知した担当者が自ら開発を行うことで、要件定義の時間を短縮でき、完成までのスピードも向上します。

実際に市民開発を導入した企業では、年間2,000万円以上のコスト削減を実現した事例もあり、予算の限られた企業や中小企業にとっても導入メリットは大きいといえるでしょう。

現場の細かなニーズを反映したシステムが作成できる

市民開発では、日々の業務に精通した現場担当者が自らシステムを構築できるため、実務で求められる細かな要件や独自の業務フローを正確に反映したシステムを作成できます

従来のようにIT部門や外部ベンダーに要件を伝える過程で生じる認識のズレを防ぐことができ、結果として「本当に使いやすい」ツールの実現につながります。また、運用後の改善や修正も担当者自ら対応できるため、業務の変化に応じた継続的な最適化が可能です。

こうした柔軟性は、急速に変化するビジネス環境において自社の競争力向上に大きく貢献するでしょう。

開発着手までの時間を短縮できる

市民開発は、従来のシステム開発に必要な要件定義、情報共有、外部ベンダーとのやりとり、開発後のテストといった工程を簡略化・内製化することで、開発に着手するまでの時間を大幅に短縮できます。

ノーコード・ローコードツールを活用すれば、現場の担当者自身が業務に合ったアプリケーションを迅速に構築できるため、開発待ちの時間や調整工数が減少します。また、アイデアをすぐに形にできるため、仮説検証や改善サイクルもスピーディーに進み、業務の変化に対して柔軟に対応可能です。

こうした即応性の高さは、DXを加速させる大きな原動力となるでしょう。

保守・運用やアップデートがしやすい

市民開発では、ノーコード・ローコードツールを活用することで、現場の担当者が自らアプリケーションの保守・運用・アップデートを行いやすくなります。従来の開発手法では、システムの改修や機能追加を外部ベンダーに依頼する必要があり、時間やコストがかかっていました

しかし、市民開発では業務の変化や新たなニーズに迅速に対応できるため、業務改善のスピードが向上します。また、ツールの視覚的な操作性により、非エンジニアでも直感的にシステムの変更が可能であり、継続的な業務改善を実現します。

従業員のITスキル向上

市民開発を通じて、従業員がノーコード・ローコードツールを活用することで、自然とITスキルを習得・向上させる機会が生まれます

実際にアプリケーションの構築や修正を行う過程で、業務フローの可視化、データ管理、システム設計の基本などが身に付くと、デジタルリテラシーの向上につながります。

また、業務改善のために試行錯誤を繰り返す中で、課題発見力や論理的思考力も養われ、社内全体のDX推進力が底上げされます。

こうした育成効果により、IT部門に頼らずとも、変化に強い人材を社内で育成できる点は大きなメリットです。

市民開発のデメリット

市民開発のデメリット

市民開発は手軽さが魅力ですが、全ての業務に適しているわけではありません。大規模開発やセキュリティ管理の面で課題が生じる可能性もあります。

本章では、代表的なデメリットを3つ挙げ、それぞれ解説します。

大規模な開発やプログラミングが必要な開発には向かない

市民開発はノーコード・ローコードを活用することで簡易的な業務アプリの作成には適していますが、大規模なシステム構築や複雑なロジックを必要とする開発には不向きです。

高度な技術的要件やパフォーマンス、セキュリティの最適化が求められるケースでは、従来通りのシステム開発が望まれます

また、市民開発に使用されるツールには機能面での制限もあるため、業務範囲が広がるにつれて限界に達することも少なくありません。そのため、開発の規模や目的に応じて市民開発とプロフェッショナルな開発を使い分けることが重要です。

セキュリティリスクが高くなる傾向がある

市民開発では、非IT部門の担当者が開発を主導するため、セキュリティ対策が不十分になりやすいという課題があります。ツールのアクセス権限設定やデータの取り扱いに関する知識が不足していると、情報漏えいや不正アクセスのリスクを高める原因となります

また、社内で個別にアプリケーションを作成することにより、全体のセキュリティポリシーに準拠しないシステムが存在するリスクも生まれるでしょう。市民開発を進める際には、IT部門との連携を強化し、ガイドラインの整備や教育を行うことで、こうしたリスクを最小限に抑える必要があります。

統一性のないシステムが乱立する恐れがある

市民開発が普及すると、各部門が独自にシステムを開発することが可能になりますが、その一方で、社内全体のシステムに統一感がなくなり、管理が煩雑になるリスクも伴います。

部門ごとに仕様やUIが異なるアプリケーションが乱立すれば、ユーザーにとって使いづらく、業務効率がかえって低下する可能性もあるでしょう。また、同じ目的のアプリが複数存在することで、情報の一元管理が困難になるケースも少なくありません。

こうした事態を防ぐためには、開発ルールの明文化やツールの標準化、IT部門によるガバナンスの整備が不可欠です。

市民開発によるDX推進の成功事例

市民開発によるDX推進の成功事例

市民開発は、現場主導で業務改善を進める手法として多くの企業に注目され、導入が進んでいます。従業員自らが業務に即したアプリケーションやフォームを作成できることで、スピード感のある改善と柔軟な対応が可能になります。

実際に、市民開発を活用してDX推進に成功した企業も増えており、その取り組みは業種を問わず広がりを見せています。以下では、特に注目されている2社の導入事例を紹介し、どのような成果が得られたのかを具体的に解説します。

三菱商事パッケージング株式会社

三菱商事パッケージング株式会社は、紙ベースで行っていた申請業務のデジタル化を目的に、市民開発が可能なツールを導入しました

従業員自身が業務に即した申請・承認アプリを構築することで、申請業務のペーパーレス化と効率化を同時に実現。結果として、1ヵ月あたり70時間以上の作業工数を削減することに成功しました。さらに、フォームの自由度やワークフローの柔軟性、グループウェアとの連携のしやすさも高く評価されています。

市民開発によって現場のニーズをスピーディーに反映できる体制を構築したことで、業務の属人化解消や内部統制の強化にもつながっており、現場改革とIT活用の両立を実現しています。

株式会社ミヤザワ

株式会社ミヤザワは、アウトソーシング事業と段ボール事業を柱に、製造業の現場改善と業務効率化を推進する企業です。

同社では、現場従業員がノーコード・ローコードツールを活用し、業務に即したアプリケーションを自ら開発する市民開発の取り組みを導入しています

これにより、申請種別ごとの承認ルートが自動設定され、宛先確認の手間が不要になりました。承認状況の可視化や通知機能により、承認漏れや滞留の防止にもつながっています。また、システム未経験者でもフォーム作成が可能な操作性と、紙削減や申請データの検索性向上といった成果も得られています。

市民開発の進め方|成功に必要なこと

市民開発の進め方|成功に必要なこと

市民開発を成功させるためには、単にノーコード・ローコードツールを導入するだけでなく、組織全体での体制整備と文化醸成が不可欠です。以下の4つのポイントを押さえることで、現場主導のDX推進を効果的に進められます。

リスキリングにより市民開発ができる人材を育てる

市民開発を成功に導くためには、現場の従業員が自らアプリケーションを作成できるだけのスキルを持つ必要があります。そのために求められるのが「リスキリング」です。

単なるツールの使い方を学ぶだけでなく、業務プロセスを構造的に捉える力、データ活用の基礎知識、セキュリティへの理解など、総合的なスキルの育成が欠かせません。これらを効率的に身に付けるには、段階的な学習プログラムの整備に加え、社内での実践機会を設けることも有効です。

また、研修後のフォロー体制やナレッジ共有の場を用意することで、継続的なスキルアップを支援できます。

企業全体に市民開発が可能なことを周知

市民開発を組織的に推進するには、開発ツールを提供するだけではなく、企業全体に「市民開発が誰でもできること」をしっかりと周知する取り組みが必要です。

具体的には、社内向けの説明会や導入セミナー、イントラネット上での情報発信、成功事例の共有などを通じて、市民開発の可能性やメリットを分かりやすく伝えることが重要です。

また、経営層や管理職からの積極的なメッセージ発信も、組織全体の意識改革を促します。こうした活動を継続することで、市民開発が「一部の先進層だけのもの」ではなく、全社員が関与できる取り組みとして社内に浸透していきます。

運用ルールやガイドラインの策定

市民開発を組織で安全かつ継続的に活用していくためには、あらかじめ明確な運用ルールやガイドラインを整備しておくことが不可欠です。

開発の自由度が高い反面、ガバナンスが弱いと、セキュリティリスクや重複開発、品質のばらつきといった問題が発生する恐れがあります

ガイドラインには、アプリ開発の申請・承認フロー、アクセス権限の管理方法、データ保存の基準、開発後の保守体制などを網羅的に含める必要があります。

また、ツールの使用範囲や推奨テンプレートの提示も有効です。これらを社内に共有し、定期的に見直すことで、健全な市民開発の基盤を築けます。

使いやすい・信頼できるツールの選定

市民開発をスムーズに定着させるには、現場の従業員でも直感的に操作できる、使いやすく信頼性の高いツールを選ぶことが非常に重要です。
ノーコード・ローコードツールには多様な種類があり、それぞれ機能や操作性、連携可能な外部システム、セキュリティ対策のレベルが異なります

導入前には、業務フローへの適合性や将来的な拡張性、サポート体制などをチェックし、自社に合ったものを選定する必要があります。また、実際の業務現場での試用期間を設け、従業員からのフィードバックを収集して判断材料とすることも効果的です。

こうした選定プロセスが、後の活用度合いや定着率に大きな影響を与えます。

市民開発を進めるならAppRemoがおすすめ

市民開発を進めるならAppRemoがおすすめ

市民開発を導入する際には、使いやすさと信頼性の高いツール選びが不可欠です。中でもAppRemo(アップリモ)は、現場主導の業務改善を強力にサポートするおすすめのツールです。

ここでは、現場の業務改革をサポートするAppRemoの特長を詳しく解説します。

さまざまな業務の申請・承認ルールに対応

AppRemoは、業種や部門を問わず多様な申請・承認フローに柔軟に対応できるツールです。稟議書や経費精算、シフト申請、設備予約など、社内で発生するあらゆる申請業務に対応可能で、複雑な承認ルートや条件分岐も直感的に設定できます。

また、承認者の変更や承認期限の自動管理、過去の履歴確認など、実務で求められる機能がそろっており、業務フローの可視化・標準化にも貢献します。加えて、スマートフォンやタブレットからも申請・承認が可能なため、出張中やテレワーク時でもスムーズな対応が可能です。

ルールが多様な企業でも、AppRemoなら現場の負担を軽減しながら効率的な運用が実現できます。

誰でも簡単に操作できる

AppRemoは、ITスキルに不安のある従業員でも直感的に操作できる設計が特長です。

ドラッグ&ドロップによる画面構成や、テンプレート選択のみでアプリケーションを完成させられるため、専門知識がなくても業務に必要な申請・管理機能をすぐに導入できます。

画面のナビゲーションも分かりやすく、初めての利用でも迷わず操作できる工夫が随所に見られるのも魅力の1つです。。実際に導入している企業では、「説明なしでも使える」「入力ミスが減った」といった声もあり、ユーザビリティの高さが評価されています。

市民開発の現場浸透を促進する上でも、この“誰でも使える”設計は大きなアドバンテージとなるでしょう。

導入後の継続運用まで考えた使いやすさを追求

AppRemoは、導入時の使いやすさだけでなく、導入後の継続運用まで視野に入れた設計がなされています。アプリ作成後も、業務内容の変更や組織改編に合わせて簡単に修正・更新が可能で、都度IT部門に依頼する手間を省けます。

運用状況はダッシュボードで可視化され、申請件数や処理状況などもリアルタイムで把握できるため、管理者側の負担も大幅に軽減されます。また、ツールのアップデートやサポート体制も充実しており、継続的に使いやすさが保たれる点も安心材料です。

現場の声を反映しながら、継続して業務改善を進めていける仕組みが整っていることは、長期運用を前提とした市民開発にとって大きな強みといえるでしょう。

まとめ

市民開発は、現場の課題を迅速に解決しながらDXを推進できる手法として、多くの企業で注目を集めています。非IT人材でも使えるノーコード・ローコードツールの活用により、業務効率化やコスト削減、属人化の解消など多くの効果が期待できます。

ただし、セキュリティや運用ルールの整備も欠かせません。成功に向けては、適切な人材育成とツール選定、ガバナンス体制の構築が重要です。

これらの要素がそろうことで、市民開発は単なる業務改善手法にとどまらず、企業の継続的な成長を支えるDX戦略の一部として機能します。


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