業務改善とは?
企業での進め方やフレームワーク・ツールを徹底解説

 2025.06.27  株式会社システムエグゼ

業務改善とは、企業の日常業務における課題を洗い出し、効率化や質の向上を目指す取り組みです。目的は、業務負担を軽減し、全体の生産性や従業員満足度を高めることです。短期的なコスト削減ではなく、持続可能な改善が求められます。本記事では、業務改善の進め方や業務改善に役立つフレームワークなどを紹介します。

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業務改善とは

業務改善とは

業務改善とは、企業の日常業務において発生している課題を洗い出し、より効率的かつ効果的なプロセスへと変えていく取り組みを指します。本章では、業務改善とは何か、詳しく解説します。

業務プロセスの課題抽出と効率化を図ること

「業務改善」とは、企業が日々行っている業務プロセスに潜む課題を抽出し、その見直しと最適化を図る一連の行為を指します。企業にとって業務とは、商品やサービスの提供に向けて従業員が行うさまざまな活動であり、人的資源や資金などのリソースを用いて価値を創出する仕組みでもあります。

業務改善によって、従来の業務プロセスにあったムダや非効率な工程を取り除き、業務のスピードや質を向上させることが可能です。その結果、企業は利益の最大化が期待でき、従業員にとっては業務負荷の軽減、ひいてはQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上にもつながります。単なる一時的な効率化ではなく、継続的な改善の仕組みを構築することこそが、真の業務改善の姿といえるでしょう。

業務改善と経費削減の違い

「業務改善」と「経費削減」はしばしば同一視されがちですが、実際にはその意味合いとアプローチには大きな違いがあります。経費削減は、その名の通り企業の支出を抑える行為であり、短期的なコストカットに焦点を当てた取り組みです。一方で業務改善は、単にコストを減らすだけでなく、時間・人的リソース・業務の質など、多面的な要素を総合的に見直し、生産性や価値創出の向上を目指す活動です

実際には、業務改善によって一時的にコストが増加する場合もあります。例えば、業務の自動化に向けたシステム導入や人材育成への投資は、初期投資としてのコストが必要です。しかしこれらの投資は、中長期的には業務効率や利益率の向上という形で企業にもたらされる価値が大きく、単なる経費削減とは一線を画す取り組みです。業務改善は、経費削減の「手段」ではなく、「企業価値を最大化するための戦略的プロセス」と捉えるべきでしょう。

効率化の対象と目的

業務改善の目的は、単なる効率化ではなく、「限られたリソースで最大限の成果を上げる」ことにあります。そのためには、どの業務をどのように効率化すべきか、対象の選定が重要です。対象業務としては、属人化している業務、頻度が高く時間がかかる業務、ミスが発生しやすい業務などが代表的です。こうした業務に着目することで、改善のインパクトが大きくなりやすく、結果的に企業全体のパフォーマンス向上へとつながるでしょう。

また、業務改善は現場の一部の負担軽減にとどまらず、企業の意思決定スピードや顧客対応力の向上、人的資源の最適配置など、広範な効果をもたらします。例えば、ルーティンワークを自動化することで、従業員はより戦略的な業務に集中でき、組織の知的資産を最大限活用する環境が整います。

効率化の目的は「時間の短縮」だけではなく、「品質の向上」「従業員満足度の向上」「柔軟な働き方の実現」など、多面的であるべきです。企業は、これらの目的を明確にしながら、業務の優先度や影響度に応じて効率化の施策を講じる必要があります。

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業務改善が求められる背景

そもそも、なぜ近年では業務改善が叫ばれるようになったのでしょう。それは業務改善を進めなければ、企業間の競争で自社が今後生き残れない可能性があるからです。

労働力不足や国際競争の激化、働き方改革の推進など…。企業としては今までの業務の改善が急務なのです。

労働力の長期的な不足

日本の少子高齢化により労働人口が減少している現状は、社会問題としてメディアでも頻繁に取り上げられています。このまま少子高齢化が進めば労働力はますます減少し、企業は人的資源の確保が難しくなるでしょう。

そうなれば、限られた人的資源で業務を遂行しなくてはなりません。今まで3人で取り組んでいた作業を、2人で取り組まなければならなくなる、といったことも充分に考えられます。

限られた人的資源で従来と同じ、もしくはそれ以上の生産性を確保・維持するには、日常の業務の中にあるムダな箇所を排除し、効率化を進める必要があるのです。

国際的な競争の激化

国際競争は激化の一途をたどっており、現在では製造業だけに留まらず、あらゆる業界が激しい競争に晒されています。戦後、日本は世界に類を見ないほどの経済成長を見せましたが、現在では東南アジア諸国をはじめ、さまざまな国々が著しい成長を見せているため、国際競争が避けられない状況となっています。

国際競争を生き抜くには新たな技術の開発、優秀な人材の育成など、やるべきことは山積みです。それと同時に業務の改善を図り、限られた労力で最大限の成果を得られるよう、環境を構築しなくてはなりません。

働き方改革の進行

日本では2019年の「働き方改革関連法」の施行により、働き方改革が推進されています。残業の上限時間設定による長時間労働の規制、高齢者の雇用・就業の促進、正社員と非正規社員との格差是正など、企業は対応を迫られていますが、コロナ禍をきっかけとしたテレワークの導入など、働き方改革の推進が急務になりました。それらに対応し生産性の向上を実現するには、業務改善が不可欠といえるでしょう。

DXやテレワークの流れ

近年、働き方改革の推進や新型コロナウイルスの影響を受け、テレワークの普及とともにDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応も急務となっています。業務を遠隔でも支障なく遂行するためには、既存の業務プロセスを見直し、デジタル技術を活用して効率化・自動化する必要があります。

特に、従来の紙ベースや対面依存の業務では非効率が顕著になり、テレワークとの両立が困難です。DXとテレワークの潮流は、業務改善の必要性を強く後押ししており、企業の競争力を維持・向上させるためにも、抜本的な業務の見直しが求められています。

業務改善の進め方・プロセス

業務改善の進め方・プロセス

業務改善を効果的に進めるには、現状を正確に把握し、課題を明確化した上で、計画的かつ継続的な取り組みを行うことが重要です。ここでは、業務改善の基本的なステップを4つの段階に分けて解説し、最後に成功のポイントについても紹介します。

業務改善の基本ステップ

業務改善の基本を4ステップに分けて解説します。

課題の発見と現状分析

業務改善の第一歩は、現状の業務内容を正確に洗い出すことです。どのような作業があり、誰が、どのような手順で行っているのかを明らかにすることで、業務の全体像とボトルネックを可視化できます。このとき、担当者へのヒアリング、アンケート、業務マニュアルの確認など複数の手法を用いることで、偏りのない情報収集が可能です。また、「ムリ・ムダ・ムラ」の視点で分析を行うと、非効率な作業や重複業務、手作業でのミスなどが見えてきます。課題は一見して分かるものだけでなく、その背景にある根本原因にまで目を向けることが重要です。表面上の問題だけに対処するのではなく、「なぜその問題が起こっているのか」を探る視点が求められます。

目標設定と改善計画の立案

現状と課題を把握したら、次は改善のゴールを明確に定め、達成のための具体的な計画を立てます。目標は「作業時間の短縮」「エラー件数の削減」「残業時間の削減」など、できるだけ数値化・具体化することで、改善の成果を測ることが可能です。計画策定では、業務の必要性を改めて見直し、自動化の可否、アウトソーシングの可能性、プロセスの簡素化など複数の改善アプローチを検討しましょう。加えて、誰が責任を持つのか、どのくらいの期間で進めるのか、どのようなツール・リソースを活用するかといった体制も整備しておく必要があります。

実行と効果測定

計画が完成したら、次はいよいよ実行フェーズです。この段階では、決められた工程に基づいて新しい業務フローやツールを導入し、実施状況や問題点を随時モニタリングします。導入初期は想定外のトラブルが起こることも多いため、柔軟に対応できるよう体制を整えておくことが求められるでしょう。また、実施後は事前に設定した目標に対して、どれだけ改善効果があったかを定量的に評価します。例えば、作業時間が短縮されたか、コストが削減できたか、エラーや手戻りが減ったかなど、具体的な数値で検証することで、改善の成否を正しく判断できます。成果が出ていない場合は原因を再度洗い出し、改善案を再構築することも重要です。PDCAサイクルを意識し、必要に応じてプランを再調整しましょう。

定着化・継続的な改善

改善施策が一通り完了しても、そこで終了ではありません。改善の成果を持続させるには、従業員に新しい業務フローを浸透させ、定着化を図る必要があります。そのためには、定期的な研修やマニュアルの整備、日常業務への落とし込みが不可欠です。また、現場からのフィードバックを常に受け入れ、さらなる改善点があれば再度取り組む姿勢も大切です。「繰り返し、継続する」ことが本質的な業務改善につながります。小さな変化を積み重ね、長期的に企業の生産性や従業員満足度を高めていく意識が求められます。

業務改善を成功させるポイント

業務改善を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。まず最も大切なのは、「改善の目的を明確にすること」です。単なるツール導入や業務の一部自動化が目的化してしまうと、本来の「業務効率向上」や「社員の負担軽減」といった本質を見失ってしまいます。次に、「現場の理解と協力」を得ることも欠かせません。業務改善は現場の実務に直接影響するため、現場社員の納得感が得られなければ、形だけの改善で終わってしまう恐れがあります。改善の目的やメリットを丁寧に説明し、現場の声を積極的に取り入れる姿勢が重要です。

業務改善フレームワーク・手法

業務改善フレームワーク・手法

業務改善を効果的に進めるには、計画的かつ論理的なアプローチが求められます。そこで有用なのが、フレームワークや手法の活用です。本章では、それぞれの特徴や活用方法について詳しく紹介していきます。

QCDとは

業務改善において大事な視点の1つに、QCDがあります。QCDとは、Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)の頭文字を用いた略語です。業務改善を検討する場合、品質・費用・納期の3つの視点から施策を講じ、改善を進める必要があります。

例えば、品質向上・コスト削減に注力し、製品やサービスの提供までの時間を短縮できれば、顧客満足度の向上につながります。QCD全てを改善できればベストですが、現実的に一度に改善するのは困難であるため、優先順位を決めた上で取り組むとよいでしょう。

PDCAサイクルの活用法

PDCAサイクルとは、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)」の4つのステップを繰り返すことで、継続的に業務の質を高めるためのフレームワークです。業務改善においては、PDCAサイクルを適切に回すことが、成果を長期的に持続させるための鍵となります。

まず、Planの段階では、現状の課題を整理し、具体的な目標やKPI(重要業績評価指標)を設定することが重要です。Doでは、その計画に基づき改善策を実行します。ここではツールの導入や業務フローの変更などが実施されます。Checkは、実行した結果が目標に対してどれだけ効果があったかを検証するステップです。この段階では、数値で評価することで、成功か否かを明確に判断できます。最後にActで、評価結果をもとに改善策をブラッシュアップし、必要であれば再度計画を見直して次のPDCAに移行します。

このサイクルを回し続けることで、業務改善は一過性のものではなく、継続的かつ柔軟な取り組みとして企業文化の中に定着していきます

ECRS・5S・BPRなどその他のフレームワーク

業務改善には、QCDやPDCAの他にも、さまざまなフレームワークが存在します。その中でも代表的なものに、「ECRS(イクルス)」「5S」「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」があります。

ECRSは、以下の頭文字を取ったもので、業務プロセスを見直す際の基本原則として効果的です

  • Eliminate(排除):不要な工程の削減
  • Combine(結合):類似作業の統合
  • Rearrange(再配置):作業順序の最適化
  • Simplify(簡素化):手順や操作の簡略化

ECRSは、既存業務を大きく変えることなく改善を目指せるため、比較的取り入れやすい手法といえます。

5Sは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5つの頭文字を指すもので、特に製造業や工場現場での業務効率化に効果を発揮する手法です。職場環境を整えることで、業務のムリ・ムダ・ムラを排除し、安全性と作業効率を高めることができます。5S活動は見た目の改善に留まらず、従業員の意識改革や企業文化の変革にもつながる要素を持っています。

BPR(Business Process Reengineering)は、従来の業務プロセスを抜本的に見直し、業務フローをゼロベースで再設計する考え方です。単なる改善ではなく、根本的な変革を目指すアプローチであり、企業の競争力強化や大幅なコスト削減、新しいビジネスモデルの構築など、大きなインパクトを期待できます。BPRの実行には、経営層のコミットメントや組織横断的なプロジェクト体制が必要ですが、その分、業務改善の効果は非常に大きなものになります。

これらの手法を適切に使い分けることで、業務改善の取り組みはより精度と効果を高めることができます。自社の課題や目的に応じて、最適なフレームワークを選択し、段階的かつ継続的に実施していくことが成功の鍵となるでしょう。

業務改善で得られる効果

業務改善により得られる効果の代表的な例としては生産性向上や業務の迅速化、労働環境の改善などが挙げられるでしょう。以下、業務改善で得られる効果について解説します。

コストをカットし生産性向上につなげる

例えば、1,000円で販売する商品を作るのに、500円のコストが発生していると仮定しましょう。このケースでは、単純計算で企業の利益は1,000-500=500円です。

では、コストを300円に抑えられたらどうでしょうか。1,000-300=700円となり、200円も利益がアップします。やや極端な例を挙げましたが、このようにコストカットできれば、今までと同じリソースでより多くの成果を得られます。

業務のムダを省き、迅速化を図る

普段の業務に「ムダ」が発生していると利益の最大化を狙えません。ひと口に「ムダ」といっても、人員のムダ、時間のムダ、作業のムダなどさまざまなムダがあります。これらのムダを省けば、業務全体のスピードアップ・効率化を実現できます。

例えば、今まで人の手で行っていた業務をAIで自動化できれば、業務のスピードアップと人的コストの削減が実現できます。これにより1時間で100個しか製造できなかった製品が、1時間に120個生産できるようになる、といったことが可能です。このように業務の改善点を洗い出し効率化できれば、従来より早く作業を終えられるメリットも生まれます。そうなれば、余った時間を別の業務に注力できるため、結果として会社全体の業務効率化が可能となるのです。

業務の負担を減らすことで労働環境改善する

業務効率化を実現できれば、社員一人ひとりの業務負担を軽減できます。

長期間労働や非効率な残業は、業務の効率性や社員の業務に対するモチベーションを下げてしまいかねません。しかし、一人ひとりの業務負担を軽減すれば、労働環境の改善につながり、社員はモチベーションを低下させることなく業務に注力できるのです。

労働環境の改善は、企業が存続していく上でも重要です。快適に働ける職場環境を構築できれば、優秀な人材を確保しやすくなり、併せて定着率も向上します。

業務改善への3つの取り組み方

業務改善の実現は、やみくもに取り組んでも非効率になります。以下で、具体的な取り組み方を3つピックアップします。

業務の必要性を考慮し、ムダを省く

業務フローの中で、あまり必要のない・非効率な作業はなくしましょう。業務のムダを見つけるためには、「この作業は必要か」「もっと効率的にできないか」と常に疑問を持つことが重要です。

ムダな作業を排除するだけでも、自ずと業務効率化が進みます。また、時間がかかる作業に関しては「もっと簡単にできる方法はないか」と考え、情報収集を実施してみるとよいでしょう。

外注できる業務は外部委託する

現在、業務のアウトソーシングを導入する企業が増えています。外部委託により、自社のリソースを主力業務に投入できるため、利益の最大化に有効です。

誰でもできる単純作業や、自社で手掛ける必要のない作業については、積極的にアウトソーシングを検討してみるのも1つの方法です。ただ業務の外部委託に関しては、情報漏えいのリスクも考えられるため、充分に留意しなくてはなりません。リスクを避けるため、外部委託する業務としない業務を、しっかりと選別することが大切です。

業務内容をシステム化する

手作業で行っている業務をシステム化することで、大幅な業務改善が可能となります。ICT(情報通信技術)システムを導入すれば、これまでと同じコストで従来以上の成果を得ることもできるでしょう。例えば、稟議のような上司の捺印がいくつも必要な業務も、 ワークフローシステムの導入により効率化が可能です。

現在、さまざまなワークフローシステムがリリースされていますが、その中でも「AppRemo」は、多様なデバイスを用いた申請、承認が可能で、進捗状況もひと目で確認できるツールです。申請内容の不明点は、申請者と承認者間でチャットによるやり取りができるので、意思決定の迅速化に貢献します。過去の申請書も、日付やタイトルから簡単に検索できるので便利です。このようなツールの利用も、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

業務改善は、企業が競争力を維持・強化するために欠かせない取り組みです。ただ単に経費を削減するのではなく、業務プロセスの課題を見極め、品質・コスト・納期(QCD)の観点から見直しを進めていくことが重要です。本記事では、業務改善の基本的な考え方や5ステップでの進め方、PDCAやECRS、BPRなどのフレームワーク、さらに業務の見える化や自動化を支援するツールについて詳しく解説しました。改善活動は一度きりで終わるものではなく、定着化と継続的な見直しによってこそ成果が最大化されます。自社に合った手法と体制で、組織全体の生産性向上と働きやすい環境づくりを目指しましょう。


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