クラウド市場は年々拡大しており、「自社の業務システムをクラウドに移行したい」「クラウド基盤を活用して業務改善を行いたい」など、本格的なクラウド活用を検討するケースも増えています。
今回は、Oracle Cloudと他の主要クラウド「Amazon Web Services(以下、AWS)・Microsoft Azure(以下、Azure)・Google Cloud Platform(以下、GCP)」の特長・サービス・価格を比較し、違いを見ていきます。
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1. パブリッククラウドサービスとは
パブリッククラウドサービスとは、インターネット経由で提供されるコンピューティング環境(サーバ、ストレージ、データベースなど)を必要なときに必要な量だけ利用できるサービスです。
各形態ごとののサービスパターンと例
形態 | サービスのパターン | サービス例 |
IaaS | インフラ | サーバ、ストレージ |
PaaS | インフラ+プラットフォーム |
データベースプラットフォーム |
SaaS | インフラ+プラットフォーム+ アプリケーション機能 |
Google Workspace、Microsoft365、Salesforce、サイボウズ、Sansanなど |
このように、提供されるサービスによって利用者が管理する範囲が変わってきます。例えば、IaaSであればサーバやストレージはサービス提供側が管理しますが、インストールするソフトウェアやアプリケーションは利用者が管理しなければなりません。
一方、SaaSであれば、アプリケーションまで含めてサービス提供側が管理しますので、利用者はサービスを利用するだけとなります。
2. Oracle Cloudの特長
https://www.oracle.com/jp/cloud
Oracle Cloudは、AWS、Azure、GCPと比較すると後発のクラウドベンダーですが、クラウド市場でシェアを拡大しているベンダーの1つです。
Oracle Cloudで提供されるサービスのうち、IaaSに分類されるサービスをOracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)といいます。日本国内では東京と大阪にリージョン(データセンターエリア)があります。
Oracle CloudのIaaSサービスは、他のクラウドサービスと比較しても低価格であることが1つの強みです。また、オラクル社はエンタープライズ向けの製品を長年提供してきた技術とノウハウを活かしたクラウドサービスを提供しています。
- 自社の基幹システムをオンプレミスからクラウド移行にしたい
- 現在、Oracle Databaseを導入している
というお客様のクラウド移行先としておすすめです。特にOracle Databaseに関しては、IaaS、PaaS、SaaSと選択できます。ライセンスの持ち込み(BYOL)も可能です。また、Oracle Exadata Cloud@Customerを使用すると、データセンターにクラウド基盤を構築することもできます。
最近では、データ分析基盤としてAutonomous Data Warehouseを使用したいという要望も増えてきています。Autonomous Data Warehouseは自律型管理のデータベースで、データベース運用管理者の負担を軽減できる点が特長です。また、機械学習やグラフ・空間分析の機能も含まれています。
このように、用途に合わせてデータベースを選ぶことができるため、運用を改善したい、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組みたいなど、ユーザーの要望に合わせた提案が可能です。
3. 他の主要クラウド(AWS、Azure、GCP)の特長
Amazon Web Services(AWS)
Amazon.com社が提供するクラウドサービスです。クラウドサービスの中では最も長い歴史があり、業界トップシェアを維持しています。サービスが豊富に提供されており、ユーザー数も多いため、活用事例や情報も多く、クラウドサービス選択の基準となっています。
Microsoft Azure(Azure)
マイクロソフト社が提供しているクラウドサービスです。Windows Server、Office365、Active Directoryなど、すでに社内でマイクロソフト社の製品を導入している場合、Azureとも連携しやすいというメリットがあります。
Google Cloud Platform(GCP)
グーグル社が提供するクラウドサービスです。同社が提供するサービスであるGmail、Google map、YouTubeの稼働基盤として実績があります。膨大なデータ量を扱う技術やノウハウに長けており、データ分析やAI技術を生かした独自サービスが有名です。
4. Oracle Cloudと他クラウド(AWS、Azure、GCP)の比較
4-1.サービス比較
IaaS・PaaSの代表的サービスであるコンピュート・ストレージ・ネットワーク・データベースを比較しました。
コンピュート
サービス | Oracle Cloud | AWS | Azure | GCP |
仮想サーバ | Virtual Machine | Amazon EC2 | Azure Virtual Machine | Compute Engine |
ベアメタルサーバ | Bare Metal Machine | Amazon EC2 Bare Metal Instance | Azure Bare Metal Servers | Bare Metal Solution |
ストレージ
サービス | Oracle Cloud | AWS | Azure | GCP |
ブロックストレージ | Block Storage | Amazon Elastic Block Storage | Azure Disk Storage | Persistent Disk |
ファイルストレージ | File Storage | Amazon Elastic File System | Azure Files | Cloud Filestore |
オブジェクトストレージ | Object Storage , Archive Storage | Amazon S3,Amazon Glacier | Azure Blob Storage,Azure Archive Stroage | Cloud Storage |
大容量データ移行サービス | Data Transfer Service | AWS Snowball等 | Azure Data Box | Transfer Appliance |
ネットワーク
サービス | Oracle Cloud | AWS | Azure | GCP |
仮想ネットワーク | Virtual Cloud Network | Amazon VPC | Virtual Network | Virtual Private Cloud |
ロードバランサー | Load Balancer | Elastic Load Balancing | Azure Load Balancer等 | Cloud Load Balancing |
DNS | DNS | Amazon Route 53 | Azure DNS | Cloud DNS |
VPN | Site-to-Site VPN | Amazon VPN | Azure VPN Gateway | Cloud VPN |
専用接続線 | FastConnect | Amazon Direct Connect | Azure ExpressRoute | Cloud InterConnect |
データベース
サービス | Oracle Cloud | AWS | Azure | GCP |
リレーショナルデータベース | Oracle Autonomous Database | Amazon RDS for Oracle/Postgres等 | Azure SQL Database | Cloud SQL |
NoSQL | Oracle NoSQL Database | Amazon DynamoDB | Azure Cosmos DB | Cloud Datastore,Cloud Bigtable |
データウェアハウス | Autonomous Data Warehouse | Amazon Redshift | Azure Synapse Analytics | BigQuery |
各クラウドでほぼ同じサービスが提供されています。今回はIaaS・PaaSサービスを比較しましたが、非機能要件(性能・拡張性、セキュリティ、運用・保守性、移行性、可用性(バックアップ)、システム環境・エコロジー)について要件をまとめておくと、より詳細な部分までサービスの比較ができます。
4-2. コスト比較
代表的なサービスについて、1カ月あたりの料金を計算しました。
(注意点)
- 2024年3月25日時点において、各クラウドサービスの見積ツールを使用して算出しました。
- 比較条件はできるだけ揃えていますが、各サービスで差がありますのでご了承ください。
コンピュート(OS:Linux) *1OCPU=2vCPUで換算します
サービス | Oracle Cloud | AWS | Azure | GCP |
コンピューティングエンジン | Virtual Machine | Amazon EC2 | Azure Virtual Machine | Compute Engine |
マシンタイプ | VM.Standard.E4.Flex(2OCPU *、RAM32G) | r5a.xlarge(4vCPU、メモリ32G) | D4a v4(4vCPU、メモリ16GB) | n2d-standard-4(4vCPU、メモリ16GB) |
1カ月あたりの料金 | 77.16ドル | 200.02ドル | 181.04ドル | 167.16ドル |
ストレージ(容量:1TB)
サービス | Oracle Cloud | AWS | Azure | GCP |
ストレージサービス | Object Storage | Amazon S3 | ブロック Blob Storage | Cloud Storage |
1カ月あたりの料金 | 25.24ドル | 25.00ドル | 20 ドル | 21.42 ドル |
ネットワーク(通信量:1TB、インターネットアウトバウンド通信)
サービス | Oracle Cloud | AWS | Azure | GCP |
ネットワークサービス | Virtual Cloud Network | Amazon VPC | Virtual Network | Virtual Private Cloud |
1カ月あたりの料金 | 0 ドル(10TBまで無料、10TB以上は1GB当たり0.025ドル) | 107.26 ドル | 40.96 ドル | 111.76 ドル |
データベース(MySQL)
サービス | Oracle Cloud | AWS | Azure | GCP |
使用データベース | MySQL Database Service | Amazon RDS for MySQL | Azure Database for MySQL | Cloud SQL for MySQL |
インスタンスタイプ | Standard - E3(1OCPU、 メモリ8GB) |
db.m5.large(2vCPU、メモリ8GB) | Gen5(2vCPU、メモリ10G) | db-standard-2(2vCPU、 メモリ7.5GB) |
データ容量 | 1000GB | 1000GB | 1000GB | 1000GB |
バックアップデータ | 1000GB | 1000GB | 1000GB | 1000GB |
1カ月あたりの料金 | 134.46ドル | 404.55 ドル | 443.27 ドル | 430.90 ドル |
今回は、従量課金で1カ月停止なしで使用したケースを計算しました。課金に関しては、各クラウドサービスで前払・使用量・契約期間等などを考慮した割引サービスなどがあります。また、サポートに関しても有償・無償のパターンがあります。
おわりに
今回は、Oracle Cloudと他の主要クラウド(AWS・Azure・GCP)の特長・サービス・価格を比較しました。
主要なサービスは、各クラウドで提供されているため大きな差はありませんでした。コストに関しては、各社割引サービスやサポート内容でも変わりますが、用途やバックアップなどの運用方針によっても費用が大きく変わるため、単体のサービスのみを比較して安いパブリッククラウドを採用すればよいとも言えません。
対応や設計に関する内容には、専門的な知識や経験が必要な面もあります。現状のシステムの課題や新しい要件を洗い出し、クラウドベンダーやSIerに相談するというのも一つの手です。そして、クラウドで使用したい機能や要件をまとめた後、各クラウドのサービスを比較検討することで、最適なクラウドサービスが選択できると思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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