Oracle Databaseとは?
データベースの基本とOracle Databaseの特長を徹底解説

 2024.08.13  株式会社システムエグゼ オラクルクラウドチーム

「ビッグデータ」という言葉が一般に普及し、近年では蓄積されたビッグデータを活用するデータソリューションが注目されています。
データソリューションを実現する基盤となるのが「データベース」です。

システムを設計する際には、プログラミングなどのフロントエンドスキルが注目されがちですが、あらゆるシステムのバックエンドにはデータベースが組み込まれています。データベース自体は地味な印象がありますが、システムには欠かせない必須コンポーネントと言えます。

その中でも「Oracle Database」は、データベース製品の世界シェアNo.1を誇るオラクル社の創業当初からの主力製品です。本記事ではデータベースについての基礎知識や、Oracle Databaseの特長などについて解説します。

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データベースとは?

データは多ければ多いほど価値が高いと言えますが、使いやすい状態で整理されている必要があります。集まったデータを格納し、整理し、取り出しやすくするプラットフォームがデータベースです。一般的な定義では、コンピュータ内に整理され蓄積された情報の集まりであることから、Excelなどで作成した表もデータベースと言えます。

データベースの利用例

データベースの例として、住所録、検索エンジン、電子カルテ、買い物サイトの注文システム、企業データベース、曲名やアーティスト名の情報が格納された音楽データベース、顧客管理システムなど、あげればキリがないほど、現代のあらゆるシステムに組み込まれています。

近年では膨大なデータを素早く処理できるようになったため、商品の購入履歴や購入前の閲覧履歴などをデータベースに格納して、自動的にAIで傾向を分析することが可能になりました。おすすめ商品を提案するサジェスト機能などは、まさにデータベースとAIの連動で実現されるシステムです。

データベースの種類

データベースには階層型データベース、ネットワーク型データベース、リレーショナルデータベースの3種類があります。その中でも主流となるのがリレーショナルデータベースです。リレーショナルデータベースとは、行と列によって構成された「表形式のテーブル」を互いに関連付けたデータベースであり、「RDB」(Relational Database)と略されます。また、関係データベースとも呼ばれます。

データベースを操作するための言語としてSQL(Structured Query Language)が存在します。近年では、このSQLを使用しないNoSQLデータベースと呼ばれるタイプのデータベースの利用が広がっています。NoSQLデータベースは、データ一貫性の制限を緩和することで、大容量のデータを高速に扱うことができます。そのため、柔軟な設計を要するアプリケーション向けに最適なデータベースと言えるでしょう。

データベースの構成要素

データベースは基本的にはデータの集合体です。ただし、それだけではありません。データを整理し利活用できる状態がデータベースです。
それでは、どのようにデータベースは構成されているのでしょうか。リレーショナルデータベースを例に、主要なスキーマと呼ばれる構成要素ついて解説します。

データベース管理システム(DBMS)

データベースは自動でデータを整理しないため、多くのデータベースにはデータベース管理システム(DBMS)が存在します。DBMSによって、人為的ミスを防ぎ、データベースの操作を効率的に行うことができるようになります。
データを表形式で整理したデータベースのことをリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)と呼びます。

表(テーブル)

データを格納するためのオブジェクトです。リレーショナルデータベースの中で、関連のある複数の表を作成し、その表を関係付けて「リレーション」として定義します。

索引(インデックス)

検索のパフォーマンスを向上させるためのオブジェクトです。目次・しおり・付箋のようにデータに目印をつけ、検索しやすいようにする仕組みです。このインデックス機能がないと、データの検索を行う時に、表のすべてのデータにアクセスしてデータを検索することになり、非常に効率が悪くなります。

ビュー

表データの「見え方」を加工するオブジェクトです。見せるデータの定義なので、データ自体に直接アクセスしデータを編集するわけではありません。ビューにより必要な情報が効率的に見えるようになります。

順序(シーケンス)

一意の数を生成するオブジェクトです。データを重複させないために、一意性を保証する主キー列に使用することが多いオブジェクトです。

ストアドプログラム

データベース内に格納されたプログラムです。データベース内にプログラムを格納することにで、より効率的にデータベースを利用できます。

データベースは言葉としては広義な意味ですが、そのほとんどが、主流であるリレーショナルデータベースおよび管理システムであるRDBMSを指して表されます。

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Oracle Databaseとは

ここまで、現在主流となっているリレーショナルデータベースを例に、データベースの構成要素について解説しました。
世の中には多くのリレーショナルデータベースが存在しますが、その中で世界シェアNo.1なのがOracle Databaseです。本項ではOracle Databaseについて解説します。

オラクルとは

Oracle Databaseを開発、販売しているのがオラクル社です。オラクル社は1977年にアメリカで設立されました。主力のデータベース管理ソフトウェアであるOracle Databaseをはじめ、他にもさまざまなデータベース関連製品群を開発しており、近年ではクラウドコンピューティングの分野にも力を入れています。また、データベースエンジニア向けの認定資格としてオラクルマスターが有名です。データベース界においてはデファクトスタンダードな企業と言えるでしょう。

Oracle Databaseとは

Oracle Databaseは1979年に商用として世界初のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)としてリリースされました。幅広いプラットフォームに対応しており、世界最大規模のデータベースマネージメントシステムです。1988年になるとOracle Database専用言語としてPL/SQLが開発されました。その後も2000年に製品名を「Oracle Database」に変更し、「マルチテナント」「クラウド」「AI」といった時代のトレンドに合わせてさらなる進化を遂げています。

Oracle Databaseの主な機能

Oracle Databaseの主な機能について解説します。

高度なデータウェアハウス機能

Oracle Databaseは、Oracle Database In-MemoryやOracle Multitenantと呼ばれる高度なデータウェアハウジング技術が利用でき、より詳細な分析が短時間で完了します。

さまざまな言語に対応

Oracle Databaseは、SQL・JSON・XMLなどさまざまな言語を使用して、柔軟性かつ拡張性の高いアプリケーションを迅速に作成できます。

高可用性を実現する機能

Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)などの組み込み機能を利用することで、複数のサーバにわたり可用性を最大化し、水平方向の拡張性を実現することができます。さらにOracle RACはインスタンスに接続するセッションは、アプリケーションに変更を加えることなく、フェイルオーバーできるため、利用者に影響を与えずに可用性を向上させることが可能です。

高度な機械学習機能

Oracle Databaseは、データベース内で実行される強力なアルゴリズムで機械学習が利用できます。機械学習機能をデータベース・アプリケーションやRDBMSに統合することで、分析結果を効果的に活用することができます。

統合された管理機能

Oracle Databaseは、統合管理機能であるEnterprise Managerを利用し、オンプレミス、Oracle Cloud Infrastructure、およびサードパーティのクラウドで実行されているデータベースの監視と管理を一貫して行うことができます。もちろん、大切なデータを格納するデータベースを運用する上で必須であるバックアップ機能も提供されています。

また、主にOracle Databaseの運用管理の知識を認定する「ORACLE MASTER」という資格があります。自分のスキルレベルの確認や、保有しているスキルの証明に繋がります。

高度なセキュリティ機能

Oracle Databaseは、コンプライアンス要件を満たすための機能を実装しています。暗号化、データマスキング、特権ユーザーアクセス制御、アクティビティの監視、ログ監査などによって、Oracle Database環境を安全に保護することが可能です。

Oracle Databaseの特長と他データベースとの比較

ここまで、Oracle Databaseの機能を紹介しました。本項では他のリレーショナルデータベースと比較した際のOracle Databaseについて解説します。

Oracle Databaseの優位性

Oracle Databaseの優位性について解説します。

信頼できる高い堅牢性

Oracle Databaseはセキュリティ診断サービスによりデータベースの脆弱性を定期的にチェックし、必要な対策を実施することで堅牢性の低下を防ぐことが可能です。

また、高性能なクラスター機能であるOracle Real Application Cluster(Oracle RAC)機能、災害対策としてデータベースを遠隔地に複製するOracle Data Guard機能など、障害に対する機能が豊富で、高い耐障害性・堅牢性を保持しています。

移植性が高い

Oracle Databaseは、Windows、Linux、Unixなどさまざまなプラットフォームに対応しており、Oracle DatabaseのAPIやツールなどもC言語で作られていることから、異なるプラットフォーム間であってもデータ移行が容易です。またJDBC、ODBCといった規格に対応しているため、アプリケーションからOracle Databaseへの接続もスムーズに対応できます。

他にも拡張しやすい機能があり、管理のしやすさや追加機能が豊富であることも、他のデータベースと比べて拡張性に優れていると言えるでしょう。

大量のデータを扱うエンタープライズ向け

Oracle Databaseは大量のデータを扱うことが得意であり、そのため大規模なシステムのデータベースへの活用に向いています。そのため、Oracle Databaseではエンタープライズ向けのさまざまなサポートサービスが充実しています。

他データベースとの比較

Oracle Database以外にもさまざまなリレーショナルデータベースが存在します。ここでは代表的なものを3つ紹介します。

MySQL

MySQLとは、オープンソースで提供されているデータベース管理システムであり、現在はオラクル社が管理しています。Community Edition(無償版)はサポートサービスがありません。サポートサービスが付随する有償版も存在し、規模を問わずさまざまなアプリケーションに対応可能なデータベースです。

WindowsやLinux・Macなどにも対応していますが、複雑な処理は不向きであると言われています。

PostgreSQL

PostgreSQLとは、オープンソースで提供されているデータベース管理システムです。PostgreSQLはBSDライセンスと言われる独自のライセンス基準を設けており、用途を問わず無料で利用でき、独自に機能の改変や追加を行っても公開義務はありません。

WindowsやLinux・UNIX・Macなどに対応しています。導入後のサポート体制はありません。

Microsoft SQL Server

Microsoft SQL Serverとは、マイクロソフト社が提供しているデータベース管理システムです。Microsoft SQL Serverは有償ライセンスで、WindowsやLinuxなどに対応しています。複雑な処理にも対応できて商用利用が可能であり、導入後のサポート体制も充実しています。他のマイクロソフト社製品との親和性が高く、クラウドサービスとの連携も可能で、拡張性、堅牢性のバランスよく実装できる点が特長です。

他のデータベース製品と比べてOracle Databaseは、高性能や充実したサポート体制が優位であると言えます。しかし、エンタープライズ向けであることからOracle Databaseのライセンスにかかる初期費用、運用費用が比較的高価で、全体的にコストがかさむケースが多いようです。

しかし、昨今ではクラウドサービスのOracle Cloudを使用することで、高機能なOracle Databaseを関連サービスとして利用することができます。費用についても利用した分だけ支払う従量制課金で無駄を省いた運用が可能です。
次項ではオラクル社が提供するクラウドサービスについて解説します。

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Oracle Cloud Infrastructureの特長

Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)とは、オラクル社が提供するパブリッククラウドサービスです。OCIはIaaS(Infrastructure as a Service)とPaaS(Platform as a Service)の両方が提供されているため、多種多様なデータベースサービスを利用することができ、次世代のパブリッククラウドサービスと呼ばれています。

OCIの特長

OCIはオンプレミスのメリットを残しつつ、柔軟性のあるクラウド環境を構築することができます。ここからはOCIの特長について解説します。

オンプレミスからクラウド移行がスムーズ

OCIはパブリッククラウドサービスであり、Oracle Databaseと同じ環境が用意されています。近年では、オンプレミス環境からクラウド環境に移行する企業が増加していますが、技術仕様がほぼ同様であることからスムーズに移行を進めることができます。

また、オンプレミス環境とクラウド環境を連携させるハイブリッド環境で、堅牢なセキュリティと高いパフォーマンスを実現することが可能です。

柔軟性と拡張性

OCIは、小規模な仮想マシン環境から高い性能が求められる環境まで、企業の規模やビジネス要件に合わせて選択が可能です。

アーカイブ、バックアップに最適な業界準拠の汎用オブジェクト・ストレージや、コンピュート・クラウドサービスと組み合わせられる高速ストレージなど、用途に応じてストレージを使い分けられます。大規模なビッグデータ環境でもストレージのクラウドサービスが適正価格で利用できるため、柔軟な対応が可能であり、コストパフォーマンスにも優れています。

高性能・高品質

高速ストレージによる遅延のないI/O、安定したネットワーク帯域、CPUのオーバーサブスクリプションのない性能などを組み合わせ、セキュアで盤石なクラウド基盤を利用できます。

また高機能な人工知能と最新の機械学習(ML)アルゴリズムを使用した、次世代の自律型のデータベースサービスが利用できます。

高可用性

OCIはシステムトラブルや障害の影響を受けないよう、独立したActive Directoryを設置し、近いエリア間で高速に接続するため、クラウド基盤自体の高い可用性を実現することが可能です。

OCIへの移行

OCIは、国内でのリリースが他大手クラウドベンダーと比較すると後発だったこともあり、現時点ではシェアは低い状態です。しかし、後発だからこその優位性を活かし、他社との比較分析結果を熟考し、明確なメリット、コンセプトを持ってサービスが提供されています。そのため、近年ではミッションクリティカルな大規模システムへの採用も増えています。

また、OCIでは、システム規模や利用用途に合わせて複数のデータベースサービスを提供しており、さらにOracle Databaseのエディションにはクラウド限定のエディションを含めた4つ選択肢があることも魅力の一つと言えるでしょう。

OCIを活用することで、Oracle Databaseの維持費用が最適化できるだけでなく、ビジネスの変化に柔軟に対応する弾力性とビジネスアジリティも確保することができます。

Oracle Databaseの最新情報

本稿作成時(2024/7時点)のOracle Databaseの最新情報をご紹介します。

サポート一覧

リリース 一般提供開始 Premier Support Extended Support Sustaining Support
23ai(Long Term Release) 2023/9 ※1 ~2029/4/30 ~2032/4/30 無期限
21c(Innovation Release) 2021/8 ~2025/4/30 無し 無期限
19c(Long Term Release) 2019/4 ~2026/4/30 ※2 ~2027/4/30 無期限
18c(Innovation Release) 2018/7 ~2021/6/30 無し 無期限

※1 「23c」としてOCI上の利用に限定して先行リリース。その後、2024/5に「23ai」に名称変更
※2 特別処置により19cのPremier Support終了日が2年間延長

上記の一覧は、下記の情報を参考に作成しました。

リリースタイプ

  • Long Term Release(長期リリース):安定性が高くサポート期間が長いリリース
  • Innovation Release(革新リリース): 新機能等を豊富に盛り込んでいるが、サポート期間が短いリリース

サポートレベル

  • Premier Support:新規のパッチを提供(革新リリースは2年間、長期リリースは5年間)
  • Extended Support:追加費用の支払いで新規のパッチを提供(革新リリースはなし、長期リリースはPremier Support終了後3年間)
  • Sustaining Support:既存のパッチのみ提供(革新リリースはPremier Support終了後に無期限、長期リリースはExtended Support終了後に無期限)

Oracle Database 23ai

Oracle Database 23aiは、Oracle Database 19cの後継となる長期リリースです。このリリースではAIに焦点を当てた新機能がリリースされます。

新機能

Oracle Database 23aiには300を超える主要な新機能と数千の拡張が追加されました。主要な新機能としては以下のようなものがあります。

  • AI Vector Search(AIベクトル検索)
  • JSONリレーショナル二面性ビュー(JSON Relational Duality Views)
  • オペレーショナル・プロパティ・グラフ
  • SQL Firewall
  • True Cache
  • SQLの機能強化
  • Oracle RACのスケーラビリティと可用性の強化

など

特にAI Vector Searchは23aiの目玉機能で、データをベクトルデータとしてOracle Databaseに格納とSQLを使った類似性検索を可能にし、他のワークロードと同じデータベース上で処理することでシンプルかつシームレスな高速処理を実現することができます。

Oracle Database 23ai Free

これまでのバージョンでは、Express Editionとして無償提供されていましたが、23aiからはOracle Database Freeという名称で開発者向けに先行で提供されています。

Oracle Database 23ai Freeのリソースの上限は下記の通りです。

  • 2スレッドまでのCPU
  • 2GBまでのRAM
  • 12GBまでのユーザーデータ

上記のリソース条件に加え、機能に制限が設けられています。

提供されているインストール形式は下記の3つです。

  • RPM形式(Linux向け)
  • OVAファイル形式(Oracle VM VirtualBox向け)
  • Dockerイメージ

利用可能リソースや機能に制限を設けた形ではあるものの、3ステップ以下でインストールすることができるため、容易に23cを体験することができます。

まとめ

近年ではOCIのように、クラウド化の波により、データベースもDBaaS(Database as a Service)として展開されているサービスが増えています。DBaaSとはオンプレミスのRDBMSを利用することなく、クラウドデータベースシステムにアクセスし、サービスとしてRDBMSを利用できる形態です。

クラウドサービスプロバイダーは、定期的なアップグレードからバックアップまで管理し、データベースの安全性を24時間365日保証しています。さらに、データベースのハードウェアおよびソフトウェアの設定・インストール・管理にかかるコストの削減なども期待できることから、DBaaSは世界中の企業で普及しています。

スマートデバイスの急激な増加に伴い、サービスのデジタル化が急速に進み、増大するデータを管理する必要性の高まりが市場の拡大を後押ししています。

さらに、新型コロナウイルス感染症によるヘルスケアサービスの普及、個人に合わせた予防医療や健康管理への関心の高まりから、ヘルスケア業界でのDBaaSの利用も拡大しています。

また、世界的なロックダウンの影響により、企業はリモートワークを積極的に採用していることから、遠隔地での業務データのやり取りを可能にするDBaaSソリューションの需要が世界的に高まっていると言えるでしょう。

Oracle Databaseはオンプレミス環境において世界No.1のシェアを誇り、さらにクラウド環境の整備も進んでいることから、今後、DBaaSの市場においてもOCIが中心的なシェア、役割を担うことが見込まれます。データベースやデータソリューションの導入を進める際は、Oracle Database、OCIをご検討されてみてはいかがでしょうか。

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