Oracle Cloud Infrastructureの特長
Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)とは、オラクル社が提供するパブリッククラウドサービスです。OCIはIaaS(Infrastructure as a Service)とPaaS(Platform as a Service)の両方が提供されているため、多種多様なデータベースサービスを利用することができ、次世代のパブリッククラウドサービスと呼ばれています。
OCIの特長
OCIはオンプレミスのメリットを残しつつ、柔軟性のあるクラウド環境を構築することができます。ここからはOCIの特長について解説します。
オンプレミスからクラウド移行がスムーズ
OCIはパブリッククラウドサービスであり、Oracle Databaseと同じ環境が用意されています。近年では、オンプレミス環境からクラウド環境に移行する企業が増加していますが、技術仕様がほぼ同様であることからスムーズに移行を進めることができます。
また、オンプレミス環境とクラウド環境を連携させるハイブリッド環境で、堅牢なセキュリティと高いパフォーマンスを実現することが可能です。
柔軟性と拡張性
OCIは、小規模な仮想マシン環境から高い性能が求められる環境まで、企業の規模やビジネス要件に合わせて選択が可能です。
アーカイブ、バックアップに最適な業界準拠の汎用オブジェクト・ストレージや、コンピュート・クラウドサービスと組み合わせられる高速ストレージなど、用途に応じてストレージを使い分けられます。大規模なビッグデータ環境でもストレージのクラウドサービスが適正価格で利用できるため、柔軟な対応が可能であり、コストパフォーマンスにも優れています。
高性能・高品質
高速ストレージによる遅延のないI/O、安定したネットワーク帯域、CPUのオーバーサブスクリプションのない性能などを組み合わせ、セキュアで盤石なクラウド基盤を利用できます。
また高機能な人工知能と最新の機械学習(ML)アルゴリズムを使用した、次世代の自律型のデータベースサービスが利用できます。
高可用性
OCIはシステムトラブルや障害の影響を受けないよう、独立したActive Directoryを設置し、近いエリア間で高速に接続するため、クラウド基盤自体の高い可用性を実現することが可能です。
OCIへの移行
OCIは、国内でのリリースが他大手クラウドベンダーと比較すると後発だったこともあり、現時点ではシェアは低い状態です。しかし、後発だからこその優位性を活かし、他社との比較分析結果を熟考し、明確なメリット、コンセプトを持ってサービスが提供されています。そのため、近年ではミッションクリティカルな大規模システムへの採用も増えています。
また、OCIでは、システム規模や利用用途に合わせて複数のデータベースサービスを提供しており、さらにOracle Databaseのエディションにはクラウド限定のエディションを含めた4つ選択肢があることも魅力の一つと言えるでしょう。
OCIを活用することで、Oracle Databaseの維持費用が最適化できるだけでなく、ビジネスの変化に柔軟に対応する弾力性とビジネスアジリティも確保することができます。
Oracle Databaseの最新情報
本稿作成時(2024/7時点)のOracle Databaseの最新情報をご紹介します。
サポート一覧
リリース | 一般提供開始 | Premier Support | Extended Support | Sustaining Support |
23ai(Long Term Release) | 2023/9 ※1 | ~2029/4/30 | ~2032/4/30 | 無期限 |
21c(Innovation Release) | 2021/8 | ~2025/4/30 | 無し | 無期限 |
19c(Long Term Release) | 2019/4 | ~2026/4/30 ※2 | ~2027/4/30 | 無期限 |
18c(Innovation Release) | 2018/7 | ~2021/6/30 | 無し | 無期限 |
※1 「23c」としてOCI上の利用に限定して先行リリース。その後、2024/5に「23ai」に名称変更
※2 特別処置により19cのPremier Support終了日が2年間延長
上記の一覧は、下記の情報を参考に作成しました。
- オラクルのLifetime Support Policy
- Oracle Database 23c: The Next Long Term Support Release
- Announcing Oracle Database 23ai : General Availability
リリースタイプ
- Long Term Release(長期リリース):安定性が高くサポート期間が長いリリース
- Innovation Release(革新リリース): 新機能等を豊富に盛り込んでいるが、サポート期間が短いリリース
サポートレベル
- Premier Support:新規のパッチを提供(革新リリースは2年間、長期リリースは5年間)
- Extended Support:追加費用の支払いで新規のパッチを提供(革新リリースはなし、長期リリースはPremier Support終了後3年間)
- Sustaining Support:既存のパッチのみ提供(革新リリースはPremier Support終了後に無期限、長期リリースはExtended Support終了後に無期限)
Oracle Database 23ai
Oracle Database 23aiは、Oracle Database 19cの後継となる長期リリースです。このリリースではAIに焦点を当てた新機能がリリースされます。
新機能
Oracle Database 23aiには300を超える主要な新機能と数千の拡張が追加されました。主要な新機能としては以下のようなものがあります。
- AI Vector Search(AIベクトル検索)
- JSONリレーショナル二面性ビュー(JSON Relational Duality Views)
- オペレーショナル・プロパティ・グラフ
- SQL Firewall
- True Cache
- SQLの機能強化
- Oracle RACのスケーラビリティと可用性の強化
など
特にAI Vector Searchは23aiの目玉機能で、データをベクトルデータとしてOracle Databaseに格納とSQLを使った類似性検索を可能にし、他のワークロードと同じデータベース上で処理することでシンプルかつシームレスな高速処理を実現することができます。
Oracle Database 23ai Free
これまでのバージョンでは、Express Editionとして無償提供されていましたが、23aiからはOracle Database Freeという名称で開発者向けに先行で提供されています。
Oracle Database 23ai Freeのリソースの上限は下記の通りです。
- 2スレッドまでのCPU
- 2GBまでのRAM
- 12GBまでのユーザーデータ
上記のリソース条件に加え、機能に制限が設けられています。
提供されているインストール形式は下記の3つです。
- RPM形式(Linux向け)
- OVAファイル形式(Oracle VM VirtualBox向け)
- Dockerイメージ
利用可能リソースや機能に制限を設けた形ではあるものの、3ステップ以下でインストールすることができるため、容易に23cを体験することができます。
まとめ
近年ではOCIのように、クラウド化の波により、データベースもDBaaS(Database as a Service)として展開されているサービスが増えています。DBaaSとはオンプレミスのRDBMSを利用することなく、クラウドデータベースシステムにアクセスし、サービスとしてRDBMSを利用できる形態です。
クラウドサービスプロバイダーは、定期的なアップグレードからバックアップまで管理し、データベースの安全性を24時間365日保証しています。さらに、データベースのハードウェアおよびソフトウェアの設定・インストール・管理にかかるコストの削減なども期待できることから、DBaaSは世界中の企業で普及しています。
スマートデバイスの急激な増加に伴い、サービスのデジタル化が急速に進み、増大するデータを管理する必要性の高まりが市場の拡大を後押ししています。
さらに、新型コロナウイルス感染症によるヘルスケアサービスの普及、個人に合わせた予防医療や健康管理への関心の高まりから、ヘルスケア業界でのDBaaSの利用も拡大しています。
また、世界的なロックダウンの影響により、企業はリモートワークを積極的に採用していることから、遠隔地での業務データのやり取りを可能にするDBaaSソリューションの需要が世界的に高まっていると言えるでしょう。
Oracle Databaseはオンプレミス環境において世界No.1のシェアを誇り、さらにクラウド環境の整備も進んでいることから、今後、DBaaSの市場においてもOCIが中心的なシェア、役割を担うことが見込まれます。データベースやデータソリューションの導入を進める際は、Oracle Database、OCIをご検討されてみてはいかがでしょうか。