Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)で提供されるOracle Autonomous Database(自律型データベース)には、「データウェアハウス」、「トランザクション処理」、「JSON」、「APEX」の4種類のワークロードから選択することができます。
今回は、大規模データ処理向けのOracle Autonomous Data Warehouseの構築手順とSQL実行やデータロードの操作についてご紹介します。
※Oracle Autonomous Data Warehouseに関連する内容は下記ブログでも紹介しています。
関連内容はこちら
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Oracle Autonomous Database(自律型データベース)とは
OCIで提供されるOracle Autonomous Databaseは、これまでDBAが行っていたデータベースのチューニング、セキュリティ、バックアップ、更新などの日常的な管理タスクを機械学習により自動化することで、運用コストが大幅に削減可能な世界初の自立型データベースとして2017年にリリースされました。
ここではOracle Autonomous Databaseで提供される4種類のワークロードについて説明します。
それぞれの違いを踏まえてシステム用途や要件に適切なワークロードを選択しましょう。
- データウェアハウス:Oracle Autonomous Data Warehouse(以下、ADW)
分析や集計といった大量のデータを扱う処理向けデータベースサービス(データマート/DWH向け)
- トランザクション処理:Oracle Autonomous Transaction Processing(以下、ATP)
速度を重視するようなトランザクション処理向けデータベースサービス(OLTP/混合ワークロード向け)
- JSON:Oracle Autonomous JSON Database(以下、AJD)
JSON中心のアプリケーションの開発を簡単にするドキュメント・データベース向けのデータベースサービス
- APEX:Oracle APEX Application Development(以下、APEX)
ロー・コード・アプリケーション開発向けのデータベースサービス。
本記事では、ADWをご紹介しますが、他のワークロードについてもブログを公開していますのでご参照ください。
- Oracle Autonomous Transaction Processingの作成手順と接続方法
- Oracle Autonomous JSON Databaseの特徴と使い方
- Oracle Cloud ApplicationsとOracle Application Developmentでビジネスを加速
Oracle Autonomous Data WarehouseとOracle Autonomous Transaction Processingの違い
Oracle Autonomous Database の4種あるワークロードのうち、用いられることが多いのは、ATPとADWです。ATPはオンラインサービスなどの高速処理が求められるシステム向けで、ADWはデータマートやデータウェアハウス、データレイクなどの分析用データベースのワークロードとして最適化されています。ADWはグラフ分析やデータ・ツール等の機能を備えているため、パターン分析や統計分析、異常値、外れ値などのパターンを素早く分析することが可能な自立型データベースです。
本章では、Oracle Autonomous Databaseに用意されている代表的なワークロードであるATPとADWの主な違いをご紹介します。
ADW | ATP | |
用途 | 分析や集計といった大量のデータを扱う処理向け | オンライン処理や汎用的なデータベース向け |
データ保管形式 | 列指向形式 | 行指向形式 |
メモリ設定 | 集計・ソート処理を優先 (SGA<PGA) |
データのキャッシュを優先 (SGA>PGA) |
圧縮(表領域レベルでHCC) | 有効 (表領域ごとに無効化可能)) |
無効 (表領域ごとに有効化可能) |
結果キャッシュ | 全てのSQLに有効 | デフォルト(無効) |
ヒント | 無効 (セッション単位で有効化可能) |
有効 |
接続サービスの種類 | High:自動的にパラレル処理 Medium:自動的にパラレル処理 Low:シリアル処理 |
TPURGENT:パラレル/シリアルを手動で設定 TP:シリアル処理 High:自動的にパラレル処理 Medium:自動的にパラレル処理 Low:パラレル処理無効 |
自動オプティマイザ統計収集 | 無効 ※高頻度自動オプティマイザ統計収集は有効 |
有効 |
リリース時期 | 2018年3月 | 2018年8月 |
Oracle Autonomous Data Warehouseの構築手順
本章では、ADWの構築手順をご紹介します。
1. OCIコンソールのハンバーガーメニューより、「Oracle Database」 > 「Autonomous Data Warehouse」の順に遷移します。
2. 「Autonomous Databaseの作成」を押下します。
3. 基本設定情報を指定します。
- コンパートメント:作成先のコンパートメントを選択します。
- 表示名:識別のための名称を指定します。
- データベース名:データベースの名称を指定します。(英数字のみ、30文字まで)
- ワークロード・タイプの選択:「データ・ウェアハウス」を選択します。
- デプロイメント・タイプの選択:
サーバーレス:サーバーレス・アーキテクチャ上でAutonomous Databaseを実行します。
専用インフラストラクチャ:専用Exadataインフラストラクチャ上でAutonomous Databaseを実行します。
4. データベース構成情報を指定します。
・Always Free:無料トライアルの範囲内で利用する場合のみ有効にします。
- データベース・バージョンの選択:任意のバージョンを指定します。
- ECPU数:ECPU数を任意に選択します。
- 自動スケーリングの計算:パフォーマンスに応じて自動的にECPUを増加させる設計とする場合、チェックを入れます。
- ストレージ(TB):任意のサイズを選択します。
- ストレージの自動スケーリング:あらかじめストレージの拡張を予約する場合、チェックを入れます。
5. バックアップ保持日数をスライダーで選択します。注意点は画像の通りです。
6. 管理者資格証明情報を指定します。
- ユーザー名:管理者は自動的にADMINとなり、変更できません。
- パスワード:任意のパスワードを指定します。12~30文字までとし、大文字、小文字、数字を各1つずつ以上含める必要があります。なお、パスワード文字列にダブルクォーテーションやユーザー名の文字列を含めることはできません。
- パスワードの確認:上記で指定したパスワードを再入力します。
7. ネットワークアクセスの選択
- アクセス・タイプ:ネットワークアクセス制御に関する要件を選択します。
8. ライセンスとOracle Databaseエディションの選択
- ライセンス:
ライセンス持込(BYOL):組織のOracle Databaseソフトウェア・ライセンスをOracle Cloud Infrastructureに使用します。
ライセンス込み:新しいOracle Databaseソフトウェア・ライセンスとOracle Databaseサービスをサブスクライブします。 - エディション(ライセンス持込の場合のみ有効):
Oracle Database Enterprise Edition(EE):最大1,536個のECPUを利用可能です。
Oracle Database Standard Edition(SE):自動スケーリングを含め、最大32ECPUまで利用可能です。
9. 運用上の通知先(各種メンテナンス情報やお知らせを受け取るメールアドレス)を指定します。
10. 必要事項の入力が完了したら、「Autonomous Databaseの作成」ボタンを押下します。
プロビジョニングが完了後、操作可能になります。
Oracle Autonomous Data Warehouseの操作
OCIコンソールの「データベース・アクション」からADWを操作する手順についてご紹介します。
■SQL Developer WEB
画像の「データベース・アクション」プルダウンより、「SQL」を選択します。
ADMINユーザーで接続され、SQLの実行やデータのインポートなどが行えます。
■データベース・ユーザー
画像の「データベース・アクション」プルダウンより、「データベース・ユーザー」を選択します。
ここではADW内で利用するユーザーの作成や、ロールの付与などが行えます。
■データ・ロード
画像の「データベース・アクション」プルダウンより、「データ・ロード」を選択します。
ここではADWへのデータ処理の種類、データの格納場所を組み合わせて実行することができます。
組み合わせ | 説明 |
データのロード × ローカルファイル | ローカルファイルからデータをインポートします。 |
データのロード × データベース | データベースリンクによって別データベースからデータをインポートします。 |
データのロード × クラウド・ストア | オブジェクトストレージ上に保存されたファイルからデータをインポートします。 |
データのリンク × データベース | 別データベースのデータにリンクする外部表またはビューを作成します。ソースデータの変更は自動的にターゲットにも反映されます。 |
データのリンク × クラウド・ストア | オブジェクトストレージ内に格納されているデータにリンクする外部表またはビューを作成します。ソースデータの変更は自動的にターゲットにも反映されます。 |
データのフィード × クラウド・ストア | オブジェクトストレージに入ってきた新しいデータを指定した頻度でポーリングすることで、ライブ表として設定したテーブルに最新データを自動フィードすることができます |
おわりに
ADWは、Oracle Autonomous Databaseの運用管理の自動化と分析用にチューニングされたデータ分析基盤の両方を手に入れることができるサービスです。システムエグゼは、Oracle Autonomous Databaseを利用したデータ分析基盤構築サービスを展開しています。データ活用のご相談はシステムエグゼまでお気軽にお問い合わせください。
- カテゴリ:
- OCI基礎知識