Oracle Databaseをクラウドで運用する場合、まず候補に挙がるのはオラクル社が提供するOracle Cloud Infrastructure(OCI)で利用可能なOracle Cloud Database Service(DBCS)です。
オラクル社以外の他社クラウドで利用できるOracle Databaseサービスとは何が違うのか?DBCSを利用する際のメリットは?具体的な仕様は?といった疑問を解決すべく本記事で解説します。
その1 コストパフォーマンスが高い
他社クラウドのPaaSにてOracle Databaseを利用する場合と比較し、DBCSは利用コストを約30%も下げることが可能です。
特にデータベースで使われるストレージについては、他社クラウドで¥17.04/GBするものが、OCIでは同等の性能のストレージを\5.1/GBで利用可能となっており、70%もコストを削減することができます。
コスト比較については当社の以下のブログにて詳細に解説しているので、ぜひご覧ください。
第6回:OracleCloudとAmazonRDSの価格&性能比較結果~日本リージョン対決~
その2 オラクル社のカスタマーサポートが利用できる
クラウドベンダーが提供するデータベースは、原則クラウドベンダーまたは関連企業のカスタマーサポートを別途契約する必要があります。しかし、OCI利用者であればサービスリクエスト(SR)が利用可能なため、クラウドの利用と共にサポートを受けることが可能となっています。
特にOracle Databaseに関してはオラクル社自体が提供元であることから、障害の際には直接、かつ迅速に、詳細な問い合わせをすることができます。バグ報告、パッチ相談等ができる窓口が利用できることは管理面で大きなメリットとなります。ユーザー視点でブラックボックスな点も、提供元であるためクリアな状態となっており、安心してサポートを受け、クラウドサービスを使うことができます。
※問い合わせは月曜~金曜 AM 9:00 - PM 6:00、土日・祝日・年末年始を除いた日で対応、対応時間外に問い合わせした場合は翌営業日に対応開始
※緊急度1 稼働中システムに対してクリティカルな障害については24時間対応
その3 準PaaS(オペレーターの操作の融通が利きやすい)
こちらはデータベースの運用面のメリットになりますが、DBCSはインスタンス自体にSSHでログイン可能です。つまり、サーバ自体にログインができるため、設定ファイル等の確認が直接可能になっています。
他社提供のデータベースサービス(PaaS)の場合、データベースに直接ログインはできるものの、サーバにはログインができないものがほとんどです。各種設定を専用のコンソール画面から行う必要があり、中には変更したくてもできない設定が存在する等、内部的な動作がユーザー目線で不透明なものがあるのも事実です。しかし、DBCSはサーバ自体のログインが可能となっているので、より細かなコンフィグ設定の確認が可能になっています。大がかりな管理はクラウドサイドに任せ、詳細の確認等はオペレーターの目でも確認できるという点で安心感のある設計となっています。
「管理はDBA等がいなければままならない…」という訳ではなく、DBCSではクラウドサイドで下記が保証されます。
このため、インフラ面での障害対応、SLA保障等はOCI(オラクル社)が対応し、実際に構築して使っていくデータベース、データベース内データを使ったアプリケーションの管理や障害対応はユーザー側で対応するものとなります。ユーザー側がハードウェアや仮想マシン側の構成、管理をする必要がないため、専門管理会社に契約して保守契約をしなくてはいけないといった懸念が解消されるようになります。
利用者目線での自由度と、管理者目線での保障範囲を兼ね備えているクラウドOracleDatabaseであることがDBCSの長所の1つと言えます。
バージョン
現在は下記バージョンがサポートされています。
バージョン |
特徴・当該バージョンから利用可能な機能 |
11.2.0.4 |
11gバージョンの最終パッチ適応バージョン。 SQL自動チューニング、パーティション提案アドバイザ、Oracle Real Application Testing(RAT、アプリケーションテスト)機能が実装。 |
12.1.0.2 |
12cR1における最終パッチ適応バージョン。 マルチテナント機能実装により、1DB内で子DBやアプリケーション開発、テスト環境を分割できるようになったことから、より大規模システム向けの設計となった。 引き続きシングルデータベースとしての利用も可能。 |
12.2.0.1 |
12cR2。 ただし19cへのアップグレードが推奨されているバージョンのため、本番運用よりもバージョンアップの際の中間バージョンとしての利用がおすすめ。 |
18c |
自律型データベース(不正アクセス等をデータベースが検知して対応できる)として、セキュリティ機能が強化されたバージョン。 |
19c |
ハイブリッド・パーティション表機能、リアルタイム統計、実行計画の比較等、開発者向けの機能が多数実装されたバージョン。 長期サポートバージョンであることも特徴で、有償保証を含めると最長2027年4月30日まで利用可能となっている安定型バージョンでもある。 |
21c |
Innovation Releaseというフルサポート期間が2年、延長保証がないバージョン。 現在Oracle Cloudでのみ利用可能。 シングルデータベースでの運用が廃止され、マルチテナント前提となったことに注意。 開発期間中の機能テスト等での利用が想定されているバージョンでもある。 |
はじめてOracle Databaseを利用して、バージョンを検討されている場合は19cがおすすめのバージョンとなります。
またバージョンアップ実施にあたって、Oracle Databaseにはアップグレード・パスという、直接アップデート可能/不可能なパターンが存在するため、上記バージョンより古いバージョンの場合は中間バージョンへアップデートした上でDBCSへ移行等のプランが検討されます。
例えば、DBCSで提供されているバージョンは、基本どこからでもバージョンアップできるものの、21cについては12.2・18c・19cからのみバージョンアップ可能な点には注意が必要です。
エディション
DBCSでは大きく分けるとStandard(以下SE)・Enterprise(以下EE)の2つのエディションから選択でき、更にEEではより強力な機能を有したエディションが用意されています。
エディション |
タイプ |
|
Standard |
- |
表領域暗号化等を標準搭載したシンプルなOracle Database。 |
Enterprise |
Base |
OLTP/DWH向け構成が可能となった。 Enterprise標準オプション(Data Guard、Real Application Testing(RAT)等)が全搭載 |
Enterprise |
High Performance |
※OCI限定エディション Multitenant、Partitioning、Advanced Compression、Database Vault、Advanced Securityオプションが利用可能 |
Enterprise |
Extreme Performance |
※OCI限定エディション High Performanceで利用可能なオプションに加え、Real Application Clusters(RAC)、Database In-Memory、Active Data Guardも利用可能 |
例として、これまでRAC構成を使っていて、移行後もRAC構成にしたい場合には、Enterprise Extreme Performanceを選択すればよいということになります。オプションの利用、可用性に応じてエディションの使い分けが可能です。
DBCSは、Oracle Databaseのクラウド利用、移行先として最適化されたソリューションとなります。クラウドでOracle Databaseを使いたいと考えている方は、是非ご検討ください。
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