Oracle Cloud のコスト試算ツールとして、Cloud Cost Estimatorがオラクル社から公開されています。必要なサービスや、その条件を設定していくことで料金を試算することができるのですが、試算したい構成情報に対してどの項目にどんな値を入れればよいか迷われる方が多く見受けられます。本ブログでは、初めてコスト試算ツールを利用される方向けに、主要なサービスごとの見積の流れとサンプル構成に対する見積シナリオをご紹介します。
※Oracle Cloudの価格モデルについては下記ブログで紹介しています。
Oracle Cloud 料金計算シナリオ
今回は、下図の環境の料金計算を行います。
Oracle Cloudの料金計算は、サービスの種類ごとに試算が必要です。今回のシナリオの場合には、下記の6つのサービスを個別に試算していきます。
- Compute
- Base Database
- Load Balancer
- FastConnect
- Object Storage
- WAF
Oracle Cloud 料金計算(Compute)
Computeの詳細は下記とします。
図中ではComputeが2台ありますが、2台とも同じ構成とします。
表1:Compute詳細
Computeタイプ | VM(仮想マシン) |
台数 | 2 |
プロセッサ | AMD |
シェイプ | VM.Standard.E4.Flex |
OCPU | 1 |
メモリ[GB] | 4 |
OSイメージ | Autonomous Linux |
容量タイプ | On-Demand |
許可(バースタブル・インスタンス) | No(非バースタブル・インスタンス) |
ストレージ容量 | 50 |
パフォーマンス・レベル | Balanced |
・コスト試算ツールで「カテゴリの選択」で、「Compute」を選択します。
・リストの中から「コンピュートVM」の「ロード」を押下します。
・1つ目のCompute構成が表示されるため、各項目に冒頭の表のパラメータを入力します。
・上部の「構成の追加」を押下します。
・「カテゴリの選択」で「Compute」を選択し、リストの中から「コンピュートVM」の「ロード」を押下します。
・2つ目のCompute構成が表示されるため、各項目に冒頭の表のパラメータを入力します。
・右上の「月次見積料金」に月次でかかる料金が計算され、表示されます。
Oracle Cloud 料金計算(Base Database)
Base Databaseの詳細は下記とします。
表2:Base Database詳細
エディション | Standard |
台数 | 2 |
プロセッサ | AMD |
シェイプ | VM.Standard.E4.Flex |
OCPU | 1 |
メモリ[GB](変更不可) | 16 |
使用可能ストレージ容量[GB] | 256 |
合計ストレージ容量[GB] | 712 |
パフォーマンス・レベル | バランス |
VPU | 10 |
※Base Databaseのバックアップは、「6. Oracle Cloud 料金計算(Object Storage)」で試算します。
・コスト試算ツールで「カテゴリの選択」で、「Oracle Database」を選択します。
・リストの中から「Base Database Service – Virtual Machine」の「ロード」を押下します。
・1つ目のBase Database構成が表示されるため、各項目に冒頭の表のパラメータを入力します。
「Total Available Storage [GB]」に入力する値は本ブログ「表2:Base Database詳細」中の「使用可能ストレージ容量[GB]」の「256」になりますが、Base DatabaseはOSもセットになったPaaSとなり、DBデータ以外のストレージも含まれますので「表2:Base Database詳細」中の「合計ストレージ容量[GB]」の「712」の分だけ課金が発生します。
・上部の「構成の追加」を押下します。
・「カテゴリの選択」で「Oracle Database」を選択し、リストの中から「Base Database Service – Virtual Machine」の「ロード」を押下します。
・2つ目のBase Database構成が表示されるため、各項目に冒頭の表のパラメータを入力します。
・右上の「月次見積料金」に月次でかかる料金が計算され、表示されます。
VPU(ボリューム・パフォーマンス・ユニット)とは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)で使用されるブロック・ボリュームのパフォーマンスに関わるユニットのことを指します。VPUの数値により、ブロック・ボリュームのパフォーマンス・レベルが決まります。パフォーマンス・レベルとVPUの対応表は下記の通りです。
表3:パフォーマンス・レベル_VPU対応表
パフォーマンス・レベル | VPU | 1GBあたりのIOPS(IO/秒) |
より低いコスト | 0 | 2 |
バランス | 10 | 60 |
より高いパフォーマンス | 20 | 75 |
超高パフォーマンス | 30-120 | 90-225 |
このようにVPU数0と10では大きく性能差があるため、10以上を選択するのが一般的となります。
Oracle Cloud 料金計算(Load Balancer)
Load Balancerの詳細は下記とします。
Load Balancerはテナント内で1台目の場合は無償であり、コスト試算ツール上でも0円で計算されます。すでにテナント内で無償枠を使っている場合には、2台として計算することで実際の料金を試算することができます。
表4:Load Balancer詳細
Load Balancer Base(台数) | 2 |
Load Balancer 帯域幅[Mbps/時間] | 100 |
・コスト試算ツールで「カテゴリの選択」で、「Networking」を選択します。
・リストの中から「Load Balancer」の「ロード」を押下します。
・1つ目のLoad Balancer構成が表示されるため、各項目に冒頭の表のパラメータを入力します。
・右上の「月次見積料金」に月次でかかる料金が計算され、表示されます。
コスト試算ツールでは見積情報のエクスポートが可能であり、本項冒頭のLoad Balancerの台数についても詳細を確認できます。
Oracle Cloud 料金計算(FastConnect)
FastConnectの詳細は下記とします。
FastConnectが1台だけの場合、障害の発生やメンテナンスによる停止により接続不可となってしまうため、FastConnectは基本的に2台で見積もります。
表5:FastConnect詳細
FastConnect帯域幅[Gbps /時間] | 10 |
台数 | 2 |
・コスト試算ツールで「カテゴリの選択」で、「Networking」を選択します。
・リストの中から「FastConnect」の「ロード」を押下します。
・1つ目のFastConnect構成が表示されるため、各項目に冒頭の表のパラメータを入力します。
・右上の「月次見積料金」に月次でかかる料金が計算され、表示されます。
Oracle Cloud 料金計算(Object Storage)
Object Storageの詳細は下記とします。
Base Databaseのバックアップで利用するObject Storageを試算します。
表6:Object Storage詳細
ストレージ・タイプ | Standard |
使用ストレージ容量[GB] | 160 |
リクエスト数[10000リクエスト] | 5 (50000) |
Base Databaseのバックアップは下記の様に取得するものとします。差分バックアップはフルバックアップの容量の10%とします。
表7:Base Databaseバックアップ
世代数 | 7 (1世代フルバックアップ、6世代差分) |
1世代あたりのフルバックアップ容量[GB] | 100 |
1世代あたりの差分バックアップ容量[GB] | 10 |
合計バックアップ容量[GB] | 160 |
・コスト試算ツールで「カテゴリの選択」で、「Storage」を選択します。
・リストの中から「オブジェクト・ストレージ」の「ロード」を押下します。
・1つ目のObject Storage構成が表示されるため、各項目に冒頭の表のパラメータを入力します。
・右上の「月次見積料金」に月次でかかる料金が計算され、表示されます。
Oracle Cloud 料金計算(WAF)
WAFの詳細は下記とします。
WAFはLoad Balancer同様、テナント内で1台目の場合は無償であり、コスト試算ツール上でも0円で計算されます。すでにテナント内で無償枠を使っている場合には、2台として計算することで実際の料金を試算することができます。
表8:WAF詳細
台数 | 2 |
リクエスト数[1,000,000着信リクエスト] | 1 |
・コスト試算ツールで「カテゴリの選択」で、「Security」を選択します。
・リストの中から「Webアプリケーション・ファイアウォール(WAF)」の「ロード」を押下します。
・1つ目のWAF構成が表示されるため、各項目に冒頭の表のパラメータを入力します。
・右上の「月次見積料金」に月次でかかる料金が計算され、表示されます。
Oracle Cloud 料金計算結果
6つのサービスについて個別に試算ができたので、最後にすべてのサービスの料金計算の合計を確認します。
今回のシナリオの構成の場合には、月あたり「\329,272.47」でした。
※2023年9月時点
最後に、料金計算した内容をクローン(コピー)する方法と、一部またはすべてのサービスの試算を削除する方法を紹介します。
料金計算のクローン
3点リーダを押下し、「クローン」を選択することで構成情報をクローンすることができます。
料金計算の削除
一部のサービスを削除したい場合には、削除したいサービスの3点リーダから「構成の削除」を選択します。
最上部の3点リーダから「すべて削除」を選択することで、構成をすべて削除することができます。
おわりに
クラウドを使い始めるにあたり、事前のランニングコストの見積は必須作業です。Oracle Cloudコスト試算ツールを用いることで簡単にOracle Cloudの利用料金を計算し、見積もりを行うことができます。
Oracle Cloudは、他のクラウドと比較して主要なIaaSサービスを高品質・低コストで提供しています。すでにクラウドを利用されている方は、ぜひ一度Cloud Cost EstimatorでOracle Cloudを利用した場合のランニングコストの試算をしてみてください。
システムエグゼは、Oracle Cloudの豊富実績と関連サービスを提供しています。Oracle Cloudへの移行をご検討される際には、ぜひ当社までお気軽にご相談ください。
- カテゴリ:
- OCI基礎知識