Oracle Cloud VMware Solutionとは
Oracle Cloud VMware Solution(以下OCVS)は、Oracle Cloud Infrastructure(以下OCI)上に構築されるPaaS形態のVMwareサービスです。本サービスを利用することでOCI上にVMwareソフトウェアで定義されたデータ・センター(以下SDDC)を自動で構築することが可能です。オンプレミスや別のクラウド環境で稼働しているVMwareを移行する先としても、OCVSは利用することができます。
OCVSの特徴
迅速なプロビジョニング
OCVSは、OCI上にVMware環境を自動構築し、利用することができます。通常VMWare環境を構築する際には、仮想サーバ上に必要なコンポーネントをインストールし、ネットワーク構成等もユーザー側で対応する必要があります。しかしOCVSを利用すれば、必要情報を入力することでOCI上の仮想ネットワーク(Virtual Cloud Network、以下VCN)に必要なコンポーネント作成、サーバ構築、各種設定を自動で対応できます。構築後は初回ログインに必要な接続情報が提供され、vSphere・vCenter等へアクセスすることができます。
プロビジョニングは構築環境のスケールにもよりますが、数時間~1日程度で完了します。オンプレミスの場合はハードウェア、インストール資材、ネットワーク機器等の調達が必要となるため、導入決定から構築までのリードタイムが極めて短いです。
ハードウェアの頑健・拡張性
OCVSではベアメタル・インスタンスが最小3台構築されます。他の顧客が利用する共有基盤から隔離されるため、オーバーヘッド無しで厳しいワークロードに対しても高いパフォーマンスを維持して、環境利用することができます。
さらにインスタンスごとに最小36コアから最大156コア利用することができ、大規模ワークロードシステムの構築・移行にも対応できます。ホストについても最大64台まで拡張可能です。
高い可用性の担保
3台構築されるベアメタル・インスタンスはvSphere ホストとして、それぞれがOCIリージョン内のフォルト・ドメインに1台ずつ構築されます。フォルト・ドメインが違えば別の物理ハードウェア上に構築されるため、例えば1台のホストがフォルト・ドメイン単位の障害でダウンしたとしても、他のフォルト・ドメインで稼働するホストで業務を継続することができます。
ストレージに関しても、ホスト間をまたいだ共有ブロックストレージを利用するように構成されます。さらに構築時にDenseIOモデルのベアメタル・インスタンスを利用することでVMware vSAN Enterpriseが利用可能となり、ストレージの仮想化も実現できます。
クラウドでありながら完全制御可能
OCVSはVCN上に構築されるリソースであり、その実態はVCNのコンポーネント、ベアメタル・Computeインスタンスです。該当環境へのOSログイン等を含めた自由な運用が実現可能です。また管理ユーザーもadmin/rootが利用できるため管理操作の制限もありません。
スムーズな移行実現性
OCVSはVCN上に構築されるリソースのため、FastConnect等のOCI外のネットワークと接続し、VMを移行することが可能です。vMotionを用いた移行はもちろん、オンプレミスで利用できるネイティブVMwareツールを利用した移行も実現可能です。クラウドサービスだからと特別な対応をすることなく、これまでの技術を利用することができます。
OCVSを選択するメリット
OCVSのようなVMware環境を利用できるクラウドサービスは他でも展開されています。OCVSを選択する際のメリットについて以下で解説します。
データベースと合わせたクラウドリフトおよび低レイテンシー実現
OCIはOracleが提供するクラウドサービスであり、Oracle Databaseシリーズのクラウドサービスも展開されています。VMware等の仮想基盤上に構築した業務仮想マシン群とデータベースが同じVMware上あるいはデータベースのみ別のサーバ上に構築し稼働しているシステムも散見されます。VMware仮想基盤だけであれば他社展開されているものもありますが、移行後の稼働に関しては業務データベース間との通信経路、性能、マルチクラウドであれば通信費用等が課題になります。
この点、OCIであればOCVSもデータベースも同じOCI上に共存できます。またデータベースを構築したVCNと同じネットワーク上にOCVSを構築することができます。OCVSとOCI上のサーバはVLAN経由で通信ができるため、高速かつ低遅延で通信することができます。通信料に関してもVCN内のリソース間の通信については、データ転送料金がかかりません。
VMware環境とともにデータベースをクラウド移行することで、クラウドリフト後のモダナイゼーションの円滑化にも期待できます。Compute仮想サーバへの変換/移行、サーバレスサービスを使ったレガシーアプリの刷新も、OCI上で実現可能です。
ユーザーがリソース・ネットワーク管理可能
OCVSはVCNに構築されたリソースとして管理ができます。簡単に説明すると、ユーザーがOCI Compute内にVMware構築を行った時と同じ形態になります。実態がベアメタル・Computeインスタンスであるため、コンソール画面から存在を確認できます。専用の管理環境ではなく、ユーザー側で管理できるリソースとしてサーバ構築されているのはOCVSならではのメリットです。
このためVCN内の設定を追加変更することで、他のOCIリソースに直接、接続・利用することも可能です。移行する際のネットワーク設定や、VMware環境から仮想サーバとしてマイグレーションする際に追加の設定等を考慮する必要がありません。
OCI以外で提供されているVMware サービスでは、ユーザー側で管理できるリソースではなくBroadcom社管理のものを払い出すような形で提供されていることが多いです。このため既存の管理環境と連携するために、追加で専用のネットワークコンポーネントを用意し設定するといった対応が必要になります。
OCVSであれば既存のOracle Services ネットワーク、VCN、オンプレミスネットワーク・NATゲートウェイ経由によるインターネット方向への接続が簡単に実現可能です。例えばVMのバックアップイメージをOCI Object Storageに転送して管理するといった運用もユーザー任意の方式で実現できます。
ユーザーがESXiホスト(ベアメタル・インスタンス)を管理可能
OCVSで構築されたESXiホストはVCN上にプロビジョニングされたベアメタル・インスタンスが実態です。つまり通常のComputeインスタンス同様のリソース監視やバックアップを実装することが可能です。さらにadmin/rootユーザーを利用することができるため、オンプレミスのVMware同様の管理が実現できます。パッチ適応やバージョンアップに関しても、ユーザー主導で管理可能です。
他社で提供されているVMware クラウドサービスは、ESXiホストの管理はクラウドベンダー、あるいはBroadcom社が管理権限を持ち、ユーザー側で自由な管理ができないように設定されています。例えばバージョンアップ等のライフサイクルは管理会社側が持ち、自動で実行されてしまう等のデメリットがあります。
まとめ
OCVSはEOL等が差し迫ったVMware環境のリフト先として、ユーザー目線でもエンジニア目線でもおすすめできるサービスです。VMware社の買収、ライセンスのサブスクリプション化といった変化が多い昨今、クラウドへのリフトアンドシフトは今後も課題となることが推測されます。
OCVSの利用、移行に関して気になることがございましたら、ぜひシステムエグゼまでお問合せください。
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