本記事では、政府管理のクラウドサービス基盤であるガバメントクラウドの市場規模や動向、日本におけるガバメントクラウドサービス提供事業者についてご紹介します。
はじめに
ガバメントクラウドとは、政府と地方自治体が共通で利用できる政府管理のクラウドサービス基盤のことです。
以前は地方自治体ごとにシステムを構築していたため、仕様が統一されていないことや、手間やコストがかかるなどの問題がありました。
そこで、これらの解決策として、ガバメントクラウドの利用が開始されました。
ガバメントクラウドは、まず国が作成した標準仕様に基づき、各ベンダーがシステムをガバメントクラウド上に構築し、それを地方自治体が選択して利用する仕組みです。
これにより、各地方自治体と国とでシステムの統一・標準化することが可能です。
また、地方自治体ごとにシステムを構築する必要がないので、手間やコストを減らすこともできます。
ガバメントクラウド市場の動向
ガバメントクラウド市場の動向について解説します。
ここでは、ガバメントクラウドの技術トピックとして、Infrastructure as Code(以下、IaC)と、生成AIについてご紹介します。
Infrastructure as Code
ガバメントクラウドは、コスト効率、迅速性、柔軟性、セキュリティを基本的指標としています。
IaC機能はその指標を実現するための技術要素の一つです。ガバメントクラウドではIaC機能を必須要件としており、各ガバメントクラウドサービス提供事業者の標準機能を利用してIaCを実現しています。
(出典:https://digital-gov.note.jp/n/nbd6ff8cadf63)
IaCは、コードを使用してインフラストラクチャの構築や管理を行う手法です。
コードを用いるため、手動設定によるエラーを減らすことができます。
また、基本のインフラストラクチャ構成のコードをテンプレートとして使用することで、誰が構築しても同一の環境を作成することができます。
テンプレートが迅速に環境作成できるため、工数およびコストの削減にもつながります。
生成AI
ガバメントクラウドでは生成AIの導入も検討されています。
デジタル庁では2023年から、生成AIでIaCテンプレートを作成する実証実験が行われています。
実験ではテンプレート作成だけでなく、そのコードの内容を生成AIに解説させるということも行われています。
(出典:
https://www.microsoft.com/ja-jp/industry/blog/government/2023/07/07/government-cloud-microsoft-build-japan/)
今後、ガバメントクラウドで生成AIが活用される日も近いのではないかと思います。
Oracle Cloud のAIについては、以下の記事をご覧ください。
日本におけるガバメントクラウドサービス提供事業者
日本におけるガバメントクラウドサービス提供事業者についてご紹介します。
2024年現在、ガバメントクラウドに選定されている事業者は以下の5社です。
- Amazon Web Services(Amazon)
- Google Cloud(Google)
- Microsoft Azure(Microsoft)
- Oracle Cloud Infrastructure(Oracle)
- さくらのクラウド(さくらインターネット)
国産では初めて「さくらのクラウド」が選定されており、こちらは2025年度末までに全ての要件を満たす条件付きでの選定となっています。
(出典:
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d6b5753c-c4eb-4ee6-92d0-21b3fa945a82/09da329e/20230403_policies_gov_cloud_outline_01.pdf
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d6b5753c-c4eb-4ee6-92d0-21b3fa945a82/2c2cef20/20231128_policies_gov_cloud_outline_01.pdf)
次に、事業者選定要件についてです。主な要件は以下となっています。
- 不正アクセス防止やデータ暗号化などにおいて、最新かつ最高レベルの情報セキュリティが確保できること。
- クラウド事業者間でシステム移設を可能とするための技術仕様等が公開され、客観的に評価可能であること。
- システム開発フェーズから、運用、廃棄に至るまでのシステムライフサイクルを通じた費用が低廉であること。
- 契約から開発、運用、廃棄に至るまで国によって統制ができること。
- データセンタの物理的所在地を日本国内とし、情報資産について、合意を得ない限り日本国外への持ち出しを行わないこと。
- 一切の紛争は、日本の裁判所が管轄するとともに、契約の解釈が日本法に基づくものであること。
- 政府機関等からの開示請求に応じ、当該請求に係る異議申し立て等に対応すること。また、主権免除の適用について当該外国政府機関等に通知すること。
- その他デジタル庁が求める技術仕様を全て満たすこと。
このように、セキュリティやコストなどの条件を満たしたクラウドのみが、ガバメントクラウドサービス事業者に選定されています。
おわりに
今回はガバメントクラウドについてご紹介しました。
ガバメントクラウドは2025年度までの移行が促進されているため、今後さらに規模が拡大していくと思われます。
「Oracle Cloud Infrastructure」は、ガバメントクラウドにも選定されており、セキュリティやコスト面に優れているクラウドです。
導入をご検討の際は、ぜひシステムエグゼまでお気軽にお問い合わせください。
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