クラウドサービスでは提供される領域の違いによって細分化され、それぞれ「IaaS」「PaaS」「SaaS」と呼ばれます。
なんとなく言葉を聞いたことがあっても、その違いを説明するのは難しいという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、IaaSの概要や特長、PaaS・SaaSとの違いなどについて解説します。
また、Oracle CloudのIaaSサービスの特長について、具体例とともにご紹介します。
IaaSの概要
IaaSは「Infrastructure as a Service」の略で「イアース」や「アイアース」などと読みます。
サーバやネットワークなどのインフラ部分をクラウド上で提供するサービスです。
PaaSとSaaSとの違い
IaaS・PaaS・SaaSの違いとしては、クラウド事業者が運用管理する範囲が異なります。
それぞれの運用管理範囲の違いについて、以下図のようになっています。
まずIaaSは、ハードウェアやネットワークなどのインフラ部分が、クラウド事業者の運用管理範囲となっています。
そのため、OSやミドルウェア、アプリケーションなどインフラ以外の部分は、利用者側で管理します。
IaaSの例としては、Oracle Cloudの「コンピュート」があります。
次に、PaaSはミドルウェア、OS、ハードウェアがクラウド事業者の運用管理範囲になります。そのため、利用者側では主にアプリケーション部分を管理します。
PaaSの例としては、Oracle Cloudの「Exadata Cloud Service」があります。
最後にSaaSは、アプリケーション部分までがクラウド事業者の運用管理範囲となっています。そのため利用者はユーザーアカウントを作成するだけで、すぐにサービスを利用することができます。また、複数のユーザーが同時に作業できることもSaaSの特長の一つです。
SaaSの例としては、Oracle Cloudの「Oracle Enterprise Resource Planning」があります。
このように、IaaS・PaaS・SaaSは、それぞれクラウド事業者の運用管理範囲が異なるという違いがあります。
IaaSを利用するメリット・デメリット
IaaSを利用するメリット
メリットには、以下4点が挙げられます。
- PaaS・SaaSと比べて自由度が高い
- 自社で物理的な基盤を構築・運用する手間がない
- 柔軟なスケールアップ・ダウンが可能
- 最新機器をクラウド上で利用できる
PaaS・SaaSと比べて自由度が高い
IaaSは、ハードウェアやネットワークなどのインフラ部分をクラウド上で利用できるサービスです。OSやミドルウェア、アプリケーションなどの部分は、利用者側で管理を行うため自由に選択できます。このようにPaaS・SaaSと比べると自由度が高くなることがメリットの一つです。
自社で物理的な基盤を構築・運用する手間がない
IaaSでは、クラウド上にあるハードウェアやネットワークを利用することができるため、自社で物理的な基盤を構築・運用する必要がありません。
そのため、申し込み後すぐにインフラサービスを利用開始でき、メンテナンスもクラウド事業者側で行うので、構築・運用の手間が省けます。
また、自社で構築・運用をしないため、それにかかるコストも抑えることができます。
柔軟なスケールアップ・ダウンが可能
IaaSなどのクラウドサービスでは、コンソール上から簡単にスケールアップ・ダウンすることができます。
例えば、利用者が多い時間帯にCPUやメモリ数を増やし、利用者が少ない時間帯に減らすなどの柔軟な運用が可能です。
同じように、スケールイン・アウトもコンソール上から簡単に行うことができます。
このように、必要な時に増やし、使わないときは減らせるため、オンプレミスよりもコストを抑えることが可能です。
最新機器をクラウド上で利用できる
IaaSなどのクラウドサービスでは、最新のプロセッサ、ネットワーク、ハードウェアなどが用意されていることもメリットとして挙げられます。例えば、導入にかかるコスト面を考えて最新機器を導入できないといった場合にも、IaaSであれば最新機器を使用することが可能です。
IaaSを利用するデメリット
デメリットには、以下が挙げられます。
- PaaS・SaaSと比較すると運用に負荷がかかる
- 専門的な知識が必要
PaaS・SaaSと比較すると運用に負荷がかかる
IaaSでは、OSやミドルウェア、アプリケーションなどの部分は利用者側で管理を行うため、自由に選択できることをメリットに挙げました。しかし自由である反面、これらをすべて利用者側で管理することは、PaaS・SaaSと比べると運用に負荷がかかると言えます。
専門的な知識が必要
運用は利用者側で行うため、インフラの専門的な知識が必要になります。そのため、自社に専門的な知識を持つ人材を確保するか、専門のベンダーに依頼する必要があります。
IaaSが向いているケース
IaaSが向いているケースには、以下2点が挙げられます。
- アプリケーション開発やテスト
- Webサイトやアプリの運用
アプリケーション開発やテスト
IaaSは、自社で物理的な基盤を構築・運用する手間がないため、アプリケーション開発やテストに必要な環境を迅速に用意することができます。また、使用しない時間帯には停止することでコストを抑えることができ、必要なくなった段階でリソースや環境を簡単に削除することが可能です。
Webサイトやアプリの運用
IaaSを利用することで、Webサイトやアプリの運用にかかるコストを最適化できます。
Webサイトやアプリでは、アクセスが集中する時間帯とそうでない時間帯でばらつきがあります。IaaSであれば、サーバのスケーリングが簡単にできるため、アクセスが集中する時間帯はサーバスペックや台数を増やし、アクセスが少ない時間帯は減らすといった運用を行うことが可能です。
自社でサーバ構築した場合だと、スケーリングを簡単にはできませんが、IaaSであれば、簡単に行うことが可能なので、コストを最適化できます。
Oracle CloudのIaaSの特長
Oracle CloudのIaaSでは、独自のアーキテクチャーにより、高可用性と高拡張性を提供しています。
また、柔軟なコンピュートやストレージ、ネットワークなど、あらゆるニーズに対応できるよう多種多様なサービスを提供しています。
ここではOracle CloudのIaaS代表例をご紹介します。
コンピュート
コンピュートは、「インスタンス」と呼ばれるコンピュート・ホストを使用できるサービスです。
種類としては、VMインスタンスとベアメタル・インスタンスが用意されています。
VMインスタンス
VMインスタンスは、小規模から利用可能な仮想マシン環境です。1コアから80コアまでサイズを選択することができます。また、フレキシブル・シェイプというシェイプ(CPU・メモリサイズなどを決定するテンプレート)を選択すると、CPUとメモリを別々のサイズで指定することができます。
ベアメタル・インスタンス
ベアメタル・インスタンスは、専用の物理サーバが用意される完全な占有環境です。
高速なサーバとストレージを配備しているため、データベースやビッグデータ等の大規模ワークロード稼働に適しています。また、完全な占有環境であるため、厳しいセキュリティ要件がある場合などにも適しています。
ストレージ
ストレージは、用途に合わせた多様なストレージが用意されており、コストパフォーマンスにも優れています。
種類には、ローカル NVMe、ブロック・ボリューム、ファイルストレージ、オブジェクトストレージがあります。
ローカル NVMe
ローカル NVMeは、コンピュート・インスタンスにローカル接続された超高速ストレージです。100万IOPS以上の性能を持っており、ビッグデータやOLTP、ストレージの性能要件が非常に高いワークロードに向いています。
注意点としては、データ保護の責任は利用者側にあるため、バックアップ等の管理を利用者側で行う必要があります。
またコストは、コンピュート・インスタンスのシェイプの価格に含まれています。
ブロック・ボリューム
ブロック・ボリュームは、コンピュート・インスタンスに永続的ストレージ領域を提供する仮想ディスクです。
作成したブロック・ボリュームをコンピュート・インスタンスに接続すると、通常のハード・ドライブのように使用できます。また、データを消すことなく、別のコンピュート・インスタンスに付け替えることも可能です。
サイズは最小50GBから1GB単位で最大32TBまで利用できます。
ファイルストレージ
ファイルストレージは、拡張性・可用性に優れたネットワーク・ファイル・システム(NFS)です。
共有ストレージであるため、複数のコンピュート・インスタンスから利用することができます。
1ファイルシステムあたり数キロバイトから8エクサバイトまで利用することができ、格納するファイルサイズが大きくなるにつれてファイルシステム性能も向上します。
また、使用した分だけ支払う従量課金制です。
オブジェクトストレージ
オブジェクトストレージは、大容量データの保存に適した高耐久・低価格のストレージです。
分析データ、およびイメージやビデオなどのリッチ・コンテンツを含む、あらゆるコンテンツ・タイプの非構造化データを無制限に格納できます。
オブジェクトストレージは用途別に階層があり、通常は高速にアクセスができる「標準階層」を利用します。しかし、ほとんどアクセスがなく長期間保存が必要なデータに関しては、「アーカイブ階層」を利用することで、通常よりもコストを抑えることが可能です。
また、使用した分だけ支払う従量課金制です。
ネットワーク
ネットワークは、高性能かつ堅牢なセキュリティとなっており、多様なサービスが用意されています。
Virtual Cloud Network
Virtual Cloud Network(VCN)は、ソフトウェア制御による安全でプライベートな仮想クラウドネットワークです。従来のデータセンターネットワークと同様の構成をクラウド上で仮想的に構築します。VCNには、プライベートIPアドレススペースの割り当て、ゲートウェイ、サブネットとルートテーブルの作成、ステートフルファイアウォールなどの構成が含まれます。
Site-to-Site VPN
Site-to-Site VPNは、オンプレミスネットワークとVCNをインターネットVPNでセキュア接続するサービスです。IPSecプロトコルを使用しているため、通信は暗号化されており、安全にやり取りすることが可能です。
また、外部データ転送課金の対象には含まれますが、Site-to-Site VPNサービス自体は無料で使用することができます。
FastConnect
FastConnectは、高帯域幅な専用線を介してオンプレミスネットワークとVCNを接続するサービスです。
インターネットを経由しない専用線なので、セキュリティ面も安全で、可用性も高いです。
また、固定額のポート料金のみ課金され、外部データ転送課金はありません。
おわりに
本記事では、IaaS・PaaS・SaaSそれぞれの違いや、IaaSの特長についてご紹介しました。
IaaSではオンプレミスのような構築・運用の手間がなく、すぐにインフラサービスを利用できる点がメリットです。
Oracle Cloudでは「Oracle Cloud Free Tier」という30日間の無料トライアルや、「Always Freeリソース」という期間制限なしの無料リソースなどもあるため、気軽に試すこともできます。
ぜひIaaSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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