デジタル技術の普及やインターネット上のデータ量増大によって、ビジネスにおけるデータ分析の重要性は高まっています。そうした中、注目されているのがプログラミング言語「Python」です。
Pythonは世界的に人気の高い言語ですが、IT業界とは縁がなかった方だと存在すらご存じない方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、Pythonを用いたデータ分析の流れをお伝えします。
データ分析における「Python」の役割とは?
「Python」とは、AI(人工知能)開発を中心に広く用いられているプログラミング言語です。Pythonの文法はシンプルで、少ない労力でプログラムを記述できる特徴があります。またWebサービスの開発などにも使える汎用性の高さもあり、国内外問わず高い人気を持ちます。
PythonがAI開発で良く使われるのは、データ分析において高い能力を発揮するためです。AI開発における「機械学習」や「深層学習(ディープラーニング)」などの分野には、データ分析が欠かせません。Pythonを用いることで、データ分析を自動化するプログラムを容易に作成できるのです。使えるライブラリ(再利用可能なプログラム)も豊富で、プログラムの記述を効率化できます。
そして、データ分析が求められるシーンは、AI開発だけではありません。昨今では、経営やマーケティングの意思決定において、データ分析が注目されています。ビジネスで効果的なデータ分析を実現するためには、Pythonへの理解が必要不可欠です。
Pythonを用いたデータ分析の流れ
Pythonを用いたデータ分析の流れは、大まかに下記の4ステップです。各ステップについて、順番に解説します。
- 目標に向けて課題を洗い出す
- 目標達成に必要な情報を集める
- 集めた情報を加工する
- 加工した情報を可視化する
データ分析の流れ①:目標に向けて課題を洗い出す
ビジネスにおけるデータ分析は、基本的に何らかの目標を達成するために行います。その目標とは多くの場合、ある課題に対する解決の糸口を見つけることです。その前提として、課題が明確でないと、どのような情報を収集すべきかが分かりません。まずは、解決すべき課題を一通り洗い出しましょう。
たとえば、「ある商品だけ男性からの購入が少ない原因の解明」「どのWebページが最も成約に貢献しているかの特定」などが課題の例です。目標や課題があいまいだと、データ分析の方向性を誤ってしまうことも考えられます。データ分析で結果を出すために、しっかり目標や課題を明確にしましょう。
データ分析の流れ②:目標達成に必要な情報を集める
目標がはっきりしたら、それらを達成するために必要な情報を集めましょう。情報の収集元として代表的なのは、下記の3つです。
- オープンデータの統計情報
「オープンデータ」とは、公的機関などが一般公開している二次利用可能なデータのことです。オープンデータとして存在する情報は積極的に活用することで、社内で独自の調査を行う手間を省けます。 - 社内システムや自社サイトのデータベース
社内システムや自社サイトのデータベースから情報収集するのも有力です。Pythonによりデータベースに接続し、必要な情報を抽出する命令文を実行する流れとなります。Pythonでデータベースを扱う際には、データベース言語「SQL」により命令文を記述します。 - 外部Webサイト
外部Webサイトから情報を集める際には「Web API」を用いるか、「スクレイピング」を行います。Web APIとは、特定のWebサイトと連携するための窓口となるものです。WebサイトがWeb APIを公開している場合は、Pythonで利用すると良いでしょう。
またスクレイピングとは、プログラムによりWebページからデータを抽出することです。スクレイピングは、Pythonの得意分野のひとつといえます。ただし、Webサイトへの過剰なアクセスにより大きな負荷を与えると、法律違反となる恐れがあるので十分な注意が必要です。
データ分析の流れ③:集めた情報を加工する
集めた情報は、そのままでは効果的な分析を行えません。活用しやすいように、集めた情報を加工しましょう。具体的には、下記のような加工を行う必要があります。
- 欠損値の処理
「欠損値」とは、有効な情報が正しく格納されていないデータのことです。たとえば、年齢データにもかかわらずマイナス値になっているものは欠損値といえます。欠損値はデータ分析の結果に悪影響を及ぼし得るので、データ自体の削除や平均値の代入などの処理を行うのが一般的です。 - カテゴリカルデータの変換
「カテゴリカルデータ」とは、性別のようにカテゴリー分けされるデータのことです。カテゴリカルデータが「男性」「女性」のように文字列形式だと、正しく集計が行えない場合があります。そのため「男性→0、女性→1」などのように連続データへの変換が必要です。
データ分析の流れ④:加工した情報を可視化する
データの加工が完了したら、有用な情報を発見しやすいように可視化しましょう。データを可視化する最もポピュラーな方法は、グラフ化です。ただしグラフにも様々な種類があるので、データの性質や分析したい観点などに応じて、適切なグラフを選択しましょう。
Pythonには、データをグラフ化するためのライブラリが存在します。こうしたライブラリを活用することで、少ない労力でデータを可視化することが可能です。具体的なライブラリについては、次章でご紹介します。
データ分析に活用できるPythonのライブラリ3選
Pythonで効率的にデータ分析するためには、ライブラリの活用が欠かせません。データ分析におすすめのライブラリは、下記の3つです。それぞれ、順番に解説します。
- Pandas
- Matplotlib
- scikit-learn
データ分析を効率化させる「Pandas」
「Pandas」とは、Pythonによるデータ分析でポピュラーなライブラリです。並び替えのようなデータ整理や、欠損値の処理といったデータ加工など、データ分析に使える幅広い機能を持ちます。また、前述したグラフ化もサポートしており、データの可視化にも利用できます。
Pandasは、様々な形式のデータをひとつの枠組みとして扱えるのが大きな特徴です。そのため、データ変換などの余計な手間を減らして、効率的にデータを扱えるメリットがあります。
データの可視化を容易にする「Matplotlib」
「Matplotlib」とは、データをグラフ化することに特化したPythonライブラリです。円グラフや折れ線グラフに加えて3Dグラフも作成できるため、特にデータの可視化に役立ちます。線・点の太さや色なども変更でき、見やすいデザインへと容易にカスタマイズできます。
さらに、複数のグラフを組み合わせた可視化も行えるため、より細かいデータ分析を行いたい場合に用いると良いでしょう。データ分析で期待する結果を出すために、ぜひ活用したいライブラリです。
機械学習を容易にする「scikit-learn」
「scikit-learn」とは、AI開発の中でも特にポピュラーな「機械学習」に役立つPythonライブラリです。機械学習とは、コンピュータに自ら学習させることで、データ分析の精度を高める技術を指します。scikit-learnを用いれば、ビジネスの意思決定にも機械学習を活用できるでしょう。
機械学習には、アルゴリズム(データ処理手法)が欠かせません。機械学習アルゴリズムには多くの種類がありますが、scikit-learnであれば、それらのほとんどを似た書き方で実現できます。
まとめ
Pythonは、データ分析において高い能力を発揮するプログラミング言語で、データの収集や加工、可視化を行えます。データ分析をより効率化するためには、ライブラリを用いると良いでしょう。
Pythonは比較的シンプルで覚えやすいプログラミング言語です。しかし、基本文法やライブラリの使い方など、様々なことを覚えなければなりません。専門知識を持つエンジニアがいないと、使いこなせないことも考えられます。
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