データ連携図(ER図)は聞き覚えがあっても、要件定義や企画の段階から関わっていなければ、作成する機会はなかなかありません。また、作成するとしてもシステム開発の経験や深い理解がなければ、過不足なく作成することも難しいでしょう。
今回はデータ連携図(ER図)について、概要から用語、データモデルの段階までを分かりやすく解説します。これを機に改めて理解を深めていきましょう。
データ連携図とは?
データ同士の連携を図に起こすことで、管理は一段と楽になります。しかしデータ管理の資料として必須となるER図などは、なんとなく理解している人が多いでしょう。ここでは、ER図の概要から役割について解説します。
ER図と表記されるデータ連携図
ER図は、データモデリングを行う場合に必ず作成される構造設計図です。実体関連モデルとも呼ばれており、データベースを作成する時に俯瞰して関係性を把握するために必要不可欠な設計図といえるでしょう。
小規模から大規模システムに至るまで、必要な要素や要素同士のつながり、処理する流れなどを設計する時にER図は欠かすことができません。誰が見ても理解できるように決まりがあり、構造を図にすることで可視化を実現しています。
データ連携図作成に必要な6つの基本要素
ER図を作成するうえで、知っておくべき基本要素を解説します。6つの要素でできているER図を理解するためにも覚えておきましょう。
- エンティティ
データのひとかたまりのことです。例えば企業についての情報が詰まっているデータがある場合、そのかたまりをエンティティと呼びます。 - アトリビュート
エンティティの中にある、詳細な項目のことです。属性情報とも呼ばれています。企業エンティティの中でいえば、連番、共通ID、社名といった個別データです。 - リレーション
エンティティ同士のつながりをリレーションと呼びます。関係という意味を持つためそのままの意味として理解して良いでしょう。 - カーディナリティ
多重度と呼ばれるエンティティ同士の関係性を表す要素です。n対nの関係性の指標です。 - エンティティ同士の依存リレーションシップ
エンティティ同士でどちらも欠けてはならない関係を表します。受注情報と受注詳細情報は必要な関係性です。 - エンティティ同士の非依存リレーションシップ
どちらかがなくても成り立つ関係を表します。社員情報と取引先情報はどちらかがなくても独立して存在できる関係性です。
データ連携図のデータモデル3種
ER図の作成はどういった段階で進行するのでしょうか。いきなり完成版は作成できないため、洗い出しが必要です。実際のER図は3つのデータモデル段階を経て作成されます。それらの段階の役割について理解していきましょう。
【モデル1】概念データモデル
要件定義や企画の段階で、データの洗い出しを行う場合に作成されるのが最初の概念データモデルです。システムの全体像を大まかに記載し、必要な情報の洗い出しを行うフェーズとなります。
ここで行うべきは、ビジネスロジックとデータとの関係性を洗い出すことです。必要な項目を漏れなく書き出し、処理の大きな流れを定義するための段階といえるでしょう。
データの実装や後から細かに必要になるエンティティは省略された、基本的なデータモデルです。そのため、ある程度簡素化した設計書となります。しかしこの概念データモデルによって企画を明確にする前段階が完了し、最低限の構成が見えてくるといえるのです。
【モデル2】論理データモデル
要件定義や企画の段階が完了すると、基本設計のフェーズに移行します。この段階で利用することになるのが論理データモデルです。基本の概念データモデルに対して、要素や属性を追加していき、肉付けを行う段階といえるでしょう。ここでもまだ、実装のことを考慮するのではなく、作成されるシステムに必要となる属性や要素を付け足していく段階です。
ここで、データ同士のリレーションや主キー、外部キーといった関係性の付与も行い、多重度の設定までを完了させます。完成させることによって概念レベルだったデータモデルをより実装に近い段階に引き上げ、データベースに落とし込む一つ前まで近づけることができます。
【モデル3】物理データモデル
基本設計を終えて、詳細設計のフェーズで作成されるモデルのことを指します。特定のデータベースの物理データに適応するため、論理モデルの調整が必要になってくるのです。例えばOracle Databaseといった、さまざまなものが挙げられるでしょう。
ER図としての最終段階が物理モデルとなります。概念、論理、そして物理的なモデルの段階を経て、ようやく物理データベースの作成が可能になります。実物を想定することで、データの扱い方まで想定して作成されるのが物理的なモデルといえるでしょう。
ここでは属性や要素に対して実際に利用する型を定義することや値を決めるなど、実データに対応したモデルの最終設計を行う段階になるのです。
データ連携図で用いられる主な表記法
ER図に用いられる表記法について解説します。2つの表記方法が存在しており、表記方法によって各記号の見た目に違いが生まれるため、注意が必要です。種類と特徴について理解していきましょう。
【方法1】IE記法
IE記法はInformation Engineeringの略称であり「アイイー」と読みます。鳥の足記法とも呼ばれており、リレーションを直感的に理解しやすいのが特徴です。これはリレーションの書き方が「鳥の足に見える形」に見えるため、こういった表現がされています。
主に新人研修などに用いられている基本的な記法で、ジェームズ・マーティン氏が考えたデータベース設計に特化した記法です。
【方法2】IDEF1X記法
IDEF1X記法は、Integration Definition 1Xの略であり、アメリカの国立標準技術研究所が作成したデータベース設計の記法です。
IE記法が単純で初学者に理解しやすい記法だとすれば、IDEF1X記法は詳細な表現が可能になっており、より細かな情報の記載が可能であることが特徴といえます。
リレーションを「●」で表現することなど、IE記法との違いが随所に見られる記法です。
まとめ
ER図を段階的に作成することによって、システムの全容を把握しつつ、質の高いデータベースを構築することを可能にします。ER図の作成も重要ですが、設計開発基準や運用・テストなどが「見える化」されていることも重要です。「Oracle Cloud」ではすでに見える化が行われており、ER図で質の高さを上げるだけではなく、それ以外の項目も合わせて常に質の高いデータベースが維持されています。より高品質で扱いやすいデータベースを維持するために利用してみてはいかがでしょうか。
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