昨今、「データ利活用」「ビッグデータ」 「AI」 「IoT」「フィンテック」「データサイエンス」などのキーワードが注目されています。 これらの根底にあるのは、 “データを価値化することにより企業活動に変化をもたらす”という考え方です。 つまり、蓄積し続けているデータは、”磨けば光るダイヤモンドの原石”と言えるのではないでしょうか。今回は、小売業におけるデータ分析の重要性と、ポイントとなる3つのデータ、実際にデータ分析を行ったサンプルレポートについてご紹介します。
小売業におけるデータ分析の重要性
小売業には、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどさまざまな店舗形態が存在します。
しかし、どの形態であっても売上・利益目標を立て、目標の達成を目指すことに変わりはありません。これらの目標に対して、進捗率やボトルネックなどを具体化するために用いられるのがデータ分析です。
目標に対する進捗率をきちんと把握できず曖昧なままにしてしまうと、表面化するまで具体的な対策を講じることができず、結果として対処が遅くなり、目標の達成が難しくなります。
また、データ分析により日々の売上予測や在庫管理を数値化し、その数値に基づき店舗スタッフが行動することで、店舗パフォーマンスを向上させることが出来ます。
効率的なデータ分析を行うためには、店舗運営で蓄積された膨大なデータの中から必要な項目を見極めることが重要です。どのデータを集めてどんな分析をすれば店舗の運営に活かせるかを明確化するために用いられるのが「KPI(重要業績評価指標)」です。
KPIとは、最終的に達成したい目標に至るまでのプロセスにおいて、達成度合いを測るための定量的な指標です。プロセスの効率性を定量的に評価することで、目標達成までの距離を測り、計画の軌道修正や改善を図ることが可能となります。
小売業には、来店客数 、購買率、平均客単価、リピート訪問客数、販売数、回転率、利益率、返品率などさまざまなKPIがあります。
これらの中で、特に重要とされるKPIが3つあります。
- 来店客数
- 購買率
- 平均客単価
なぜ、この3つをとりあげるかというと、「売り上げ」にとって非常に重要な要素だからです。
これは、売り上げの計算式を見ると一目瞭然です。
売り上げ=来店客数 ✕ 購買率 ✕ 平均客単価
つまり、3つのKPIを達成することができれば、売上目標も達成することができるというわけです。
これからデータ分析を始める場合は、まずこの3つのデータを分析し、現状をまとめることが大切です。現状を把握することで課題や目標が設定しやすくなります。
3つのデータで現状を把握したら、目標と現状を比べて何が足りないかを分析し、改善や見直しを行います。
この作業をPDCAサイクルやOODAループなどのフレームワークを活用して行っていくことが、多くの小売業がひしめく中で生き残るための鍵となるのではないでしょうか。
小売業における3つの重要KPIとデータ収集・分析の手法
ここでは、先ほどご紹介した3つのKPIについて詳しく解説するとともに、データの収集・分析方法について説明します。
来店客数
来店客数は店舗を訪れたお客様の人数を表すKPIです。
この数値は他のKPI指標を算出するときに必要になる、全てにおいて基礎となる指標です。購買率も来店客数をもとに算出されます。
当たり前ですが、来店客数の多い店舗ほど売り上げは増えます。来店客数を増やすためには、通行人をいかに来店客にするかが重要になります。天気などの外的要因に左右されやすく、不確実性の高いKPIとなるので、長期の数値目標を立て、日々のプロモーションやマーケティングなどの取り組みによって着実に目標に近づけていきます。
来店客数を測るにはPOSレジのデータを使用する方法が一般的ですが、その場合、実際に商品を購入した顧客数のカウントになってしまいます。来店客数なので、“店舗や売場に入ったが商品の購入に至らなかった”顧客もカウントに含める必要があります。
通過・滞留人数もカウントするには、来店カウンター(トラフィックカウンター、ピープルカウンター)と呼ばれるセンサーの範囲内を通った人を数える装置の導入が必要です。
来店カウンターでは、来店客数だけではなく、店舗の前の通行人をカウントし、通行人に対する来店客の割合を出すためのデータも取得することができます。
購買率
購買率は来店客のうち、購入した買い物客の割合を表します。店舗がどれだけ来店客を購入客に転換できたかを知ることができる、いわば店舗の販売活動の成果を表す指標です。
店舗や店舗スタッフを評価する際にも使われる指標で、購買率には店舗スタッフの販売力、店内レイアウト、商品の良し悪しがダイレクトに反映されます。
つまり、来店客数が店舗の行動以外の要因に左右されやすいのに対して、購買率は信頼度が高いデータです。
購買率が下がっている時は、接客方法や商品、スタッフの配置の見直しを検討しましょう。
購買率は、来店客のうち、商品を購入した顧客の割合になるので、計算式は下記になります。
「購買客数」÷「来店客数」=「購買率」
購買客数は、POSレジのデータから取得し、来店客数は先ほどの来店カウンターの数値を使います。
例えば、ある1日の来店客数が200人で購買客数が120人だとすると、その日の購買率は60%になります。
平均客単価
平均客単価とは、購入客1人当たりの販売額を平均化したKPIです。
買い物客の購入傾向を知り、商品販売の戦略を練る際に有用な指標です。
商品をセットで組み合わせて販売できているかなど、スタッフの販売力や接客販売トレーニングの成果を測る際にも用いることができます。
時期により売れる商品は変わり、平均客単価も変動しますが、平均客単価を意識した商品の配置や組み合わせ、接方法客を検討することで、売上向上を確実に目指すことができます。また、各スタッフが平均客単価を意識して接客することで、店舗の販売レベルを高い水準で維持することができます。
平均客単価の計算式は、店舗売上額を購買客数で割った数値となるので、計算式は下記になります。
「店舗売上額」÷「購買客数」=「平均客単価」
店舗売上額と購買客数は、いずれもPOSレジのデータから抽出できる店舗売上額と購買客数で算出できるため、3つのKPIの中では一番集めやすいデータです。
例えば、1日の売り上げが300万円で購買客数が750人だった場合、平均客単価は4,000円となります。
小売業におけるデータ分析のサンプルレポートの紹介
ここでは、実際に小売業でデータ分析を行ったサンプルレポートをご紹介します。
商品需要予測
商品需要予測とは、将来的な販売数や使用量を予測する上で必要な手法です。在庫を切らしたり、納期を待たせたりしないようにしっかりした在庫管理をすることで、顧客満足度を高めることができます。
昨今では、AIや機械学習の活用により需要予測の精度を高めることで、大きな利益につながることが期待されています。従来、担当者が需要を予測していた企業は、現場の人間の「勘」や「経験則」を頼りに業績向上の戦略を立てているというケースが多く見られましたが、特定の人に依存したスキルではなく、標準化された作業になります。
下図の赤枠内の折れ線グラフは、機械学習によって商品の売上数・金額の需要予測を行った結果で、過去の実績数値を元に未来の予測値を算出しています。この例では、取り込んだデータ量が非常に少なかったため、各予測値の線が直線になっていますが、量・種類が豊富に揃えられればより精度の高い予測結果が期待できます。
地域別売上
地域別売上は、地域の特性をつかんだ「エリアマーケティング」に用いられるデータ分析です。
エリアマーケティングとは、エリア(地域)とマーケティングを組み合わせた言葉で、店舗や企業において、地域ごとの販促方法を考えることを意味します。特に小売業においては欠かせないマーケティング手法です。
例えば、全く同じ店舗を東京と大阪に展開しても、文化などの異なる要素があるため、同じ売り上げにはなりません。地域に合った商品の配置や接客、プロモーションなど、地域特性に応じた店舗施策を考える必要があるため、エリアマーケティングは売り上げを高めるために重要だとされています。
下図は、北海道と沖縄の売上状況を比較するためのダッシュボードのサンプルです。分かりやすくするため、暑い地域で売れる商品、寒い地域で売れる商品のみを例に挙げています。画面左側の検索欄で商品名や都道府県を選択することにより、表やグラフから商品別の売上推移を確認することができます。ここでいずれかの商品を選択すると、右下の円グラフに地域別の売上割合が表示されるようになり、商品需要の地域差が可視化できます。地域的な特徴が売上推移に反映されていることが分析できれば、発注数の目安や売場づくりの参考にできるでしょう。
まとめ
データ分析と聞くと、統計学の複雑な計算式や、高度な数値分析のスキルが必要になるという印象を持つかもしれません。しかし、近年では技術の進歩により、計算式を意識せずにGUI操作で豊富なテンプレートの中から選択していくだけでレポートが作成できたり、機械学習で、データを指定するだけで自動的に解析し予測結果が算出できたりするようになりました。
データ分析の活用により、これまであらゆる対策をしても改善が見込めなかった課題が解決するだけでなく、想定していなかった傾向を発見し、売上向上への糸口を見つけることも可能になります。
データ分析・活用方法についてご不明な点がありましたら、システムエグゼまでお気軽にご相談ください。
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