クラウドサービスの利点は重々承知していても、規制やセキュリティ上の問題などで、クラウド化への移行が難しい企業も多いでしょう。そこでおすすめしたいのが「Oracle Cloud at Customer」です。本記事ではOracle Cloud at Customerの概要や機能の特徴、導入のメリットを解説します。
Oracle Cloud at Customerとは
Oracle Cloud at Customerとは、企業が任意で設置したデータセンターからOracle Cloudサービスを利用できるモデルのことです。
クラウドサービスでありながらオンプレミスさながらの信頼性・安全性に優れた環境を提供するシステムです。従来では、医療機関や金融機関、公共サービス提供事業者といった一部の業界や企業においては、セキュリティ面の問題でクラウドシステムに移行できないという課題がありました。しかし、Oracle Cloud at Customerを活用すれば、機密データを自社のデータセンター内、もしくは任意で選択した信頼性の高い場所での管理が現実となり、外部へ保管するリスクを回避できます。
Oracle Cloud at Customerは、迅速性・柔軟性に優れた多彩な機能を低コストで利用できるサブスクリプションサービスです。オンプレミスでは複雑かつ人の手による作業を必要としたアップグレード作業やパッチの適用などを、自動で実行してくれるフルマネージメントサービスで提供されています。自社のデータセンター内でほかのアプリケーションやデータベースに接続可能なため、レイテンシーを気にする必要もありません。
つまり、コストを抑えながら高いセキュリティと接続性の問題に対処し、アプリケーションの迅速な実行を実現してくれるサービスなのです。
Oracle Cloud at Customerの機能
このシステムは、主に3つの機能で構成されています。どのような課題や目的に役立つソリューションなのでしょうか。
Oracle Dedicated Region Cloud at Customer
Oracle Cloud at Customer第1の機能は「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」です。サーバーやストレージ、ネットワークは、企業の専用エリアとして確保されたデータセンターに設置するため、ハードウェアインフラを管理する必要がありません。「Oracle Cloud Infrastructure」「Oracle Fusion Cloud Applications」のほか、SaaSなども含めて50種以上のOracle Cloudサービスと、シームレスな連携が可能です。
また、パブリッククラウドで新しいサービスが提供される際には、同様に利用できるものとされています。既存のアプリケーションおよびデータベースとの接続も可能で、レイテンシーが非常に少ないのも特徴です。このサービスの導入により、Amazon Web Services(AWS)と比較して、HPCワークロードコストを44%削減できた事例もあるようです。
https://www.oracle.com/jp/cloud/cloud-at-customer/
つまり、Oracle Dedicated Region Cloud@Customerは、クラウドとオンプレミス環境間のギャップを埋め、パブリッククラウドとオンプレミスのメリットを融合させたサービスだと言えます。
Oracle Autonomous Database on Exadata Cloud@Customer
Oracle Cloud at Customer第2の機能は「Oracle Autonomous Database on Exadata Cloud@Customer」です。これはOracle Databaseと、そのプラットフォームであるOracle Exadataを組み合わせたサービスです。
自社のデータセンター内で稼働する既存のアプリケーションともスムーズに接続できます。セキュリティが高性能で信頼性も高く、企業のデータセンター内で管理・運用を実行できるほか、オンプレミスのアプリケーションとデータベースの緊密な接続で、規制やセキュリティに対する懸念を払拭してくれます。
データベースのスケーリングやバックアップ、修復などを自動化してくれるため、データベース管理と設備にかかるコスト削減に有用です。オンプレミスのデメリットとされているデータベースの管理・保護の複雑さから解放されることで、人為的ミスの削減はもちろん、データベースのパフォーマンスやセキュリティ、ユーザビリティの向上にも期待が持てます。
Oracle Exadata Cloud@Customer
Oracle Cloud at Customer第3の機能は「Oracle Exadata Cloud@Customer」です。Oracle Exadataのパフォーマンスと、データセンターの運用に必要な機能のすべてを自社のデータセンターに組み込み、データの制御を維持します。このシステムは、大規模なデータベースの環境基盤としても活用でき、可用性にも優れているのが特徴です。Infinibandネットワークによる高速化でパフォーマンスを向上させ、業務効率化を実現に導きます。必要に応じて追加していける柔軟なスケールアウト構成も魅力です。
また、リアルタイムでの分析が可能なだけでなく、複雑な検索による処理もスピーディーに実行してくれます。サーバー・回線・運用管理が不要なデータベース・クラウドで、IT担当者の設計・運用の負担を大幅に削減してくれるのです。
加えて、安全性の高いシステム統合を実施する調整機能が備わっている点にも注目したいところです。担当する業務ごとにポリシーの異なるデータベースを割り当てられるため、安全性に優れた環境で作業に取り組めます。
Oracle Cloud at Customer導入のメリット
Oracle Cloud at Customerを活用すると、クラウド費用の最適化や解析の高速化による効率化など、さまざまなメリットが得られます。実際にシステムを導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
(1)オンプレミスとクラウドのメリットの両立
Oracle Cloud at Customer最大の特徴と言えるのが、オンプレミス同様の環境で、パブリッククラウドの便利なサービスを享受できるという点です。企業によっては、どんなにセキュリティが強固であっても、重要なデータをパブリッククラウドに預けることに抵抗を覚えるでしょう。
しかし、企業ごとの専用エリアを設けるOracle Cloud at Customerならば、クラウドサービスを活用しながら、オンプレミス特有のセキュリティやコンプライアンスを維持できます。さらにレイテンシーの課題も解決してくれるので、パフォーマンスの向上が実現するはずです。
(2) 従量課金制
ユーザー企業が利用した分だけ料金を支払う従量制課金サービスです。このような料金体系は、開発やテストなど特定の期間に集中してシステムを利用したい企業に適しています。業務の増大と減少に合わせてコストの最適化が実現します。
(3) リードタイムの短縮
システムを構築する際、オンプレミスではハードウェア調達のための時間が必要ですが、Oracle Cloud at Customerではハードウェアやアプリケーションをはじめ、関連するサービスをワンストップで提供しています。導入後、すぐに次のアクションへつなげられる迅速性も魅力の1つです。
(4) ヒューマンエラーの防止
機械学習による自律的なサービスの提供により、業務効率化の推進に役立ちます。セキュリティの侵害につながる深刻なヒューマンエラーを未然に防ぐだけでなく、学習機能によりさらにセキュアな環境を目指すことも可能です。
まとめ
本記事では、Oracle Cloud at Customerの概要と機能、メリットについて解説しました。Oracle Cloud at Customerは、オンプレミス環境にOracle Cloudの機能を設置するサービスです。ユーザー企業は管理主体が介在することなく、クラウドサービスのさまざまなメリットを享受できます。
このシステムの活用によるメリットは、従量課金制による柔軟なコスト運用、オールインワンのサービスによるリードタイムの短縮、自律型サービスによるヒューマンエラーの抑止などが挙げられます。
通常のパブリッククラウドの導入が難しいのであれば、ぜひOracle Cloud at Customerの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
- カテゴリ:
- OCI基礎知識