バックアップの重要性や必要性といった基本的事項から、Oracle Cloudが提供するバックアップにはどのようなサービスがあるのかを説明します。特に、Oracle Cloudのバックアップストレージやクラウドストレージの特長と仕組みについて詳しく解説するので、選定の参考にしてください。
データベースのバックアップとは
バックアップとは、保存されているデータの損失を防ぐためにパソコンやサーバーなどに保存されているデータの複製を取っておくことです。OSや設定、アプリケーションなどのシステムデータや、テキスト、写真、動画などのデータを複製して保存します。
パソコンを使用しているうちにウイルスに感染したり、故障、データ破損などのトラブルが発生したりすることがあります。そういった場合でも、あらかじめバックアップを取っていると、消えたり破損したりしたデータを復元できます。完全なバックアップを取っておけばOSやパソコンの設定、インストールされているアプリケーションなどすべてが復元可能なため、システムデータの基幹部分が破損した場合にも対処できます。
システムのバックアップには、システムを停止して行う「オフラインバックアップ」と、システムを止めずに行う「オンラインバックアップ」があります。より重要性の高いバックアップを行う際はオフラインバックアップが望ましいです。
バックアップデータは、内蔵ストレージや外付けのHDD、クラウドなどに保存が可能です。いつ発生するかわからないトラブルに備えて、定期的にバックアップを取っておく必要があります。
バックアップの重要性
仕事で使用しているデータには、取引内容や受発注、在庫データ、顧客データなど、業務で必要なデータが大量に保存されています。近年ではIT化が進み、在庫管理や営業支援、CRM、経理会計など、会社の業務のほとんどをデータ化して保存しているケースが多くなっています。ネットワーク環境が構築されている場合、業務データは個々の作業している端末自体ではなく、サーバーに保存されます。しかしこのサーバー内ではあっても、さまざまな原因からデータが損失してしまう可能性は否定できません。
データ損失の原因としては、ウイルス感染はもちろん、「操作を誤ってファイルを削除したり、取り違えたりするなどの人的ミス」「経年劣化などによるハードウェアの故障」「バグやソフトウェアの相性といったソフトウェア障害」などのあらゆる事故が想定されます。そのためこれら原因の防止とともに、万が一、データが損失したときにも備えておかなければなりません。
会社の営業や経理、人事、総務など、多くの部署で使用されている重要なデータの損失が発生してしまうと、取引先との業務が滞ったり、顧客へサービスを提供できなくなったりするなどの問題が生じます。データ保全・管理が不十分だったために、社会的な信頼を失う可能性もあるでしょう。これらを回避するためにも、バックアップは常に取っておく必要があります。
Oracle Cloudが提供するバックアップの種類
オラクル社が提供しているバックアップの種類には、オブジェクト・ストレージとローカル・ストレージがあります。それぞれの違いや、どのような効果が得られるのかなどを説明します。
オブジェクト・ストレージ
Oracle Cloudが提供するバックアップの種類の1つが、「オブジェクト・ストレージ」です。これは公式に推奨されているバックアップ方法で、分析データや画像、ビデオなど、あらゆるコンテンツタイプの非構造化データを格納できるストレージです。耐久性、可用性が高い特徴があります。
バックアップデータはOracle Cloud Infrastructure Object Storageに格納・保管されるため、自社サーバーが壊れた場合にもデータには問題が生じません。
オブジェクト・ストレージは、特定のコンピューターをホストにしているものではありません。リージョナル・サービスと呼ばれる、「データを複数のストレージ・サーバーに分散して格納する」方式を取っています。加えて、複数データの整合性を重視し、破損データを自動的に発見して修復を行っています。これらに加え、独自の暗号化技術を使用しているため、高い耐久性を誇っているのです。
インターネット接続環境があり、オブジェクト・ストレージ端末にアクセス可能な場合のみ、こうして管理されているデータにアクセスできます。また、サービス・ゲートウェイにつないだVCNのOracle Cloud Infrastructureリソースからもアクセス可能です。
ローカル・ストレージ
もう1つの方式が「ローカル・ストレージ」です。このバックアップ方式では、データがローカルなDBシステムのFast Recovery Areaに格納されます。そのため、DBシステムが使用できなくなった場合には、併せてバックアップも使用できなくなるので注意が必要です。
ローカル・ストレージはオブジェクト・ストレージよりも耐久性や可用性が低いです。その反面、バックアップやポイントタイム・リカバリが高速で行えるといったメリットがあります。
Oracle Cloudのクラウドストレージの特長
Oracle Cloudが提供するクラウドストレージには、種類が選べる、柔軟な対応力がある、高度な災害対策として利用できる、といった特長があります。
選べる2種類のサービス
Oracle Cloudが提供するクラウドストレージのサービスには、「Oracle Storage Cloud Service」と「Oracle Storage Cloud Archive Service」の2種類があります。Oracle Storage Cloud Serviceは、高性能でさまざまなデータに対応できるオブジェクト・ストレージサービスです。アプリケーションなどのバックアップが可能で、Oracle Cloud環境での汎用性が高い点も特徴です。
Oracle Storage Cloud Archive Serviceは、「あまり何度もアクセスすることがないデータ」を保存するためのストレージです。具体的には画像や映像、音楽、ドキュメントなど大容量データのアーカイブや、ドキュメント原本を長期間保管するストレージとして活用できます。他社提供の同等サービスと比較して、低価格で利用できる点も魅力です。
柔軟な対応力
データのバックアップのためにパブリッククラウドを活用すると、オンプレミスのストレージ容量を減らさずに済みます。利用状況に応じてオンデマンドで容量を拡張できるなどの柔軟さも、クラウドストレージが持つメリットの1つです。
Oracle Cloudのオブジェクト・ストレージでは、REST APIに対応しており、高い接続性が確保されています。また、NFS接続のためにOracle Storage Cloud Software Applianceも無償提供されています。
さらに、3rdパーティのバックアップツールやアーカイブツールも利用可能なので、対応するサービスを使用している場合、運用スタイルを変更することなくクラウドバックアップ環境へ移行できます。
高度な災害対策
Oracle Cloudのクラウドストレージでは、バックアップデータをクラウド上に2次保管できます。自社の端末とオンプレミス環境が同じ地域に存在していると、災害が発生した際、同時に被害を受けてデータをすべて消失してしまうかもしれません。この点、Oracle Cloudのクラウドストレージを利用することで、遠隔地へのバックアップデータ保管が実現できるため安心です。
また、自社が採用しているシステムによっては、「災害時に早く復旧したい」「ダウンタイムをなくしたい」など、より高い要件が求められる場合もあるでしょう。Oracle Cloudのクラウドストレージでは、RPO(目標復旧ポイント)とRTO(目標復旧時間)の要件レベルやさまざまな条件でのデータ保護ニーズに応じて、柔軟にシステム環境を構築できます。
まとめ
企業が有するデータベースは、取引状況や在庫管理、顧客管理、人事、経理など会社の大切な情報を大量に保管している重要なものです。そのため、突然のトラブルでデータを消失しないよう、あらかじめバックアップを取っておく必要があります。
Oracle CloudはOracle Storage Cloud ServiceとOracle Storage Cloud Archive Serviceの2種類のバックアップサービスを提供しており、高度なバックアップ環境をシステム要件や予算に応じて選択できます。災害対策にも有効ですので、Oracle Cloudのクラウドバックアップサービスの利用を検討されてみてはいかがでしょうか。
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