オンプレミスからOracle Cloudへの移行、または他クラウドサービスからOracle Cloudへの移行を考える場合、移行後のクラウド利用料(ランニングコスト)の試算が必要です。
クラウドサービスの利用料はスペック・稼働時間・通信量・保持するデータ量など、サービスごとに料金の計算方法が異なる上、それらを複合的に組み合わせる事になり非常に複雑です。この利用料の計算について、Oracle Cloudの公式サイトにコスト見積もりツールが用意されています。
このツールを利用し、サービスを選択して一覧に表示された項目を入力するだけで、簡単に利用料を見積もることが可能です。
今回はOracle Cloudのコスト見積もりツールについて、大まかな使い方やポイント等をご紹介します。
コスト見積もりツールの基本的な使い方
Oracle Cloudのコスト見積もりツールでは、使用するOracle Cloudサービスを選択し、使用する数やスペック、想定稼働時間等を入力することで、システム構築に必要な一式全てを揃えた利用料が計算できます。
- Oracle Cloud Cost Estimator:
https://www.oracle.com/cloud/cost-estimator.html
左側のプルダウンメニューからサービスのカテゴリを選び、下に表示されたサービスから目的のサービスをAddすることで、ページ下部に計算用の入力欄が追加されます。
Computeの利用料見積もり
Oracle Cloudには様々なサービスがあり、それぞれ利用料計算での記入項目は異なってきます。
今回の記事では、オンプレミスからの移行時に比較的頻繁に使うことになると思われる、Compute(Oracle Could Infrastructure Compute)での料金計算にフォーカスしてご紹介します。
まずはInfrastructureから「Oracle Cloud Infrastructure - Compute, VM」を追加しましょう。
今回は「Compute, VM」での見積もり入力項目について、いくつかポイントを補足します。
Compute - Virtual Machine
Compute - Virtual Machineのパネルを開き、各入力項目を表示します。
Utilization - Number of Instances
何個のインスタンスを作成するか、になります。
同じ構成のインスタンスを複数作成する場合にはここの数値を増やします。構成や稼働時間が違うインスタンスを複数作成する場合は、ここは1のままで別Compute欄を追加しましょう。
Utilization - Average Days Usage per Month
1ヶ月のうち、何日間インスタンスを起動させておくか、になります。
デフォルト値は31になっています。毎日稼働している想定で見積もる場合はそのまま31にしましょう(30日間しかない月の請求は見積もり金額を下回ることになります)。土日は停止させておく、といった運用を想定している場合はここを減らしておきましょう。
Utilization - Average Hours Usage per Day
1日のうち、何時間インスタンスを起動させておくか、になります。
デフォルト値は24になっています。24時間フル稼働想定での見積もりになります。夜間の特定の時間帯は停止させておく、といった運用を想定している場合はここを減らしておきましょう。
Configuration
この項目は、シェイプの種類によって入力項目が異なります。
後述するE3.FlexのようなComputeを除けば、大体はOCPUの数だけ入力することになります。シェイプを選び、使用するOCPUをいくつにするかを入力しましょう。
シェイプの一覧とそれぞれの基本情報については下記URLで見ることができます。
- 日本語サイト:
https://docs.cloud.oracle.com/ja-jp/iaas/Content/Compute/References/computeshapes.htm - 英語サイト:
https://docs.cloud.oracle.com/en-us/iaas/Content/Compute/References/computeshapes.htm
余談ですが、OCI Documentのサイトは、日本語版では情報が最新ではなく、直近で追加された機能が記載されていない場合があります。
日本語版サイトで情報が見つからなかった場合や最新情報が必要な場合には、英語版サイトを閲覧する事をおすすめします。
補足:OCPUとは
Oracle Compute Cloud Serviceにおいて、処理能力は「OCPU」という単位で表現されます。
OCPUとは Oracle Compute Unitの略で、1物理コア=2ハードウェア実行スレッドに相当します。
1つのOCPUで2つのvCPUに相当することになるため、1OCPU = 2vCPU で計算しましょう。
コスト削減について
構成の最適化 - E3.Flexの利用
コストを削減するためには、まずはインスタンスが過剰なスペックになっていないかを検討し、最適なスペックにすることが考えられます。
過去のOracle Compute Cloud Serviceでは、インスタンスを作成する際にOCPUが多いシェイプを選択すると、併せてメモリも多くなっていたため、過剰なOCPU・メモリといった構成にせざるを得ない場合がありました。
しかし、現在はE3.Flexという、OCPUとメモリを自由に組み合わせることが出来るシェイプが追加されたことにより、「OCPU多め・メモリ少なめ」「OCPU少なめ・メモリ多め」といった、要件に合わせた最適な構成を作成することができるようになっています。
インスタンスの停止
インスタンスを停止することで、停止している間の課金が停止するようなサービスもあります。
計画的に停止することを想定している場合には、それも含めて計算してみましょう。
[Computeのインスタンスを停止した場合]
- Standardシェイプは、OCPU単位およびWindows OSライセンスの課金が停止する
- HPC/Dense/GPUシェイプについては課金が継続する
- どのシェイプであっても、ブートボリュームやブロックボリューム等のストレージについては課金が発生する
ロードバランサーやネットワークのような停止することができないものは、そのリソースを作成してから終了するまで絶え間なく課金が発生します。
それぞれサービスによって停止しても課金が停止しないものもあるので、利用するサービスごとに個別に課金形態を確認した方が良いでしょう。
おわりに
今回はOracle Cloudのコスト見積もりツールを使った利用料の見積もり方法と、主要項目のみですがComputeの見積もりの際のポイントについてご紹介しました。
Oracle Cloudは他社クラウドと比較し非常に安価なため、実際に見積もりをすることで価格差が実感できると思います。
クラウドを運用していく上でランニングコストの把握は欠かせないため、コスト見積の際、是非ともご参考にしてください。
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