オンプレミスやクラウド間のシステム移行時、事前に検討すべき課題がいくつかあります。 特に通信経路とDR(ディザスタリカバリ)対策は、安全なシステムを構築する上で欠かせない課題となります。
今回はこの2つの課題をピックアップし、クラウド基盤設計の視点からいくつか選択肢をご紹介します。
クラウド接続で利用するネットワーク接続形態の選択
自社やデータセンターにあるサーバとクラウド環境の接続にはセキュアなネットワークが不可欠です。
ネットワークの接続形態は、クラウドを利用する時の快適性や安全性に大きく影響を与えます。
また、データ移行作業で必要な要件に影響する可能性もあるため、既存のネットワーク環境と併せて検討する必要があります。
クラウドに対してセキュアに通信するための主な接続形態は、以下の通りです。
インターネットVPN接続
拠点同士をVPNルータで接続し、インターネットではIPsec/SSL-VPNにて暗号化してアクセスします。
インターネット経由でも専用線のようなセキュアな通信を実現できます。
Oracle Cloudでは、VPN接続(IPSec VPN)がインターネットVPN接続に相当します。
専用線接続
インターネットを経由せずに、通信事業者やデータセンター事業者の設備のみ経由してアクセスする閉域ネットワーク接続です。
Oracle Cloudでは、FastConnectサービスが専用線接続に相当し、お客様のネットワークやデータセンターとOracle Cloudの間で専用のプライベートのネットワーク接続を提供しています。
各接続形態のメリットとデメリット
各接続形態のメリットとデメリットは、以下の通りです。
形態 | インターネットVPN接続 | 専用線接続 |
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メリット |
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デメリット |
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Oracle Cloudで提供されている「VPN接続」や「FastConnect」のネットワークサービスは、それぞれ性能・料金・利用条件が異なります。
業務要件、利用用途や環境に適した接続形態を選択しましょう。
DR対策における基盤の選択
クラウドサービスは冗長化構成によって運用されていますが、自然災害やデータセンターの故障があった場合などを想定すると、決して完全なサービスではありません。
クラウド環境においても、障害に備えたDR対策を検討する必要があります。
今回は、データセンター障害を想定したDRについて、Oracle Cloud環境を例とした構成をご紹介します。
Oracle Cloud内の別リージョンを利用する(マルチリージョン)
リージョン障害に対するDR構成です。
Oracle Cloudは、東京リージョンと大阪リージョンが稼働しており、日本国内でのDR環境構築が可能です。
海外リージョンと比べるとレイテンシーも低くなります。
また、同じクラウドサービスであれば、提供されているバックアップサービスを利用できるメリットもあります。
なお、Oracle Cloudでは、リージョン内の複数の可用性ドメイン(AD)を使用して、データセンター障害の対策として構成ができますが、東京・大阪リージョンの可用性ドメイン(AD)数は1つずつなので、データセンター障害の対策を行う場合、マルチリージョン対応が必要となります。※2021.2.16現在
オンプレミス環境と併用する
Oracle Cloudのデータセンターから離れた場所にデータセンターや自社サーバルームがある場合、オンプレミス※環境との併用でDRを実現することも可能です。
クラウド環境移行後のシステム基盤をそのまま利用したり、リプレースしたりすることで、既存システム基盤を生かすという方法もあります。
※オンプレミス…サーバーやソフトウェアなどのシステムを使用者が管理する設備内に設置し、運用すること。ここではデータセンターや自社サーバルームを指す。
Oracle Cloud以外の別のクラウドサービスを利用する(マルチクラウド)
複数のクラウドサービスを組み合わせて活用します。
例えば、Oracle CloudとMicrosoft Azureの組み合わせなどです。
マルチクラウドのメリットとして、DR以外では、両方のクラウドから好きなサービスを選択できるというビジネス面のメリットがあります。
一方、別々のクラウドサービスを利用するため、運用コストや管理コストがかさみやすいというデメリットもあります。
今回は、データセンターの障害を想定しましたが、BCP対策・DR対策の方針、復旧要件、データ種類やデータサイズ、運用コストなどを考慮し、適切なDR構成を検討することが必要になります。
おわりに
今回は、クラウド移行でよくある2つの課題について、クラウド基盤設計の視点から選択肢をご紹介しました。
お客様にクラウド基盤を安心してご利用いただくために、要件に基づいたクラウド基盤の設計、最適なサービスの選択を意識して、クラウド移行を検討することが必要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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