AWS S3より安く使える? Oracle Cloud Infrastructure Object Storage / Archive Storage

公開日 2022.08.08  更新日 2025.11.06

企業で扱うデータは件数・データサイズ共に増加し続けており、大容量データを扱うストレージの需要が高まっています。オブジェクトストレージは大容量データを扱うストレージとして適しています。本記事ではAWSで提供されている「Amazon S3」(以下、AWS S3)とOracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)で提供されている「Object Storage / Archive Storage」(以下、OCIオブジェクトストレージ)について、種類、機能・性能、料金を比較していきます。※2022年7月末時点の情報です。

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オブジェクトストレージとは

オブジェクトストレージは、データをオブジェクト単位で管理するストレージです。ディレクトリ構造で管理されるファイルストレージとは違い、個別オブジェクトとして管理することで、大容量データを管理することができます。

オブジェクトストレージの特徴

  • 非構造化データ(画像、メディア・ファイル、ログ・ファイル、バックアップ)の格納に適している
  • ストレージ自体に容量的な制限がなく、ほぼ無制限にデータを保存することができる
  • サイズが大きいデータの保存先として適している
  • ファイルストレージやブロックボリューム(ブロックストレージ)と比べてコストが安い
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オブジェクトストレージの活用事例

オブジェクトストレージの活用事例をご紹介します。

  • バックアップ
    データベースの定期バックアップや長期保存が必要なログ・ファイルなどのバックアップ格納先として使用します。また、普段使用しないファイルはアーカイブ化し、必要に応じて使用できるようなストレージサービスもあります。

  • 大容量データの一時保存
    データベースやサーバを移行する際の移行データの保存先として使用します。

  • コンテンツ・リポジトリ
    コンテンツデータを保存・管理する場所として使用します。AWS S3やOCIオブジェクトストレージにはAPIが準備されており、不特定多数のユーザーとデータを共有するためのデータ領域としても利用できます。

  • 大規模データセット、ビッグデータ
    IoTなどの大量データ処理やビッグデータの保存先のためのストレージとして使用します。データ処理時にはオブジェクトストレージに直接アクセスが可能なため、大規模データをオブジェクトストレージに格納しておくことができます。

ストレージ層と性能・機能の比較 - OCIオブジェクトストレージとAWS S3

ストレージ層の比較

オブジェクトストレージには種類(ストレージ層)があり、それぞれ特徴があります。OCIでは3種類、AWSでは7種類あります。

OCIオブジェクトストレージの種類

ストレージ層 種別 特徴
Object Storage - 標準(デフォルト) 汎用 迅速かつ頻繁にアクセスする必要がある場合
アクセス頻度に基づき、自動でコスト削減(自動階層化の有効化)も可能
Object Storage -頻度の低いアクセス 低頻度 必要に応じてすぐに取り出す必要がある場合
・最小ストレージ保存期間は31日
Archive Storage アーカイブ まれにしかアクセスしないが長期間保存する必要がある場合
・使用時はリストアが必要で、使用までに最大1時間かかる
・最小ストレージ保持期間は90日

AWS S3の種類

ストレージ層 種別 特徴
S3 標準 汎用 頻繁にアクセスするデータなど一般的に使用される場合
S3 Intelligent-Tiering 汎用 アクセス頻度に基づき、自動でコストを削減したい場合
S3 標準 – IA 低頻度 アクセス頻度は低いが、必要に応じてすぐに取り出す必要がある場合
・最小ストレージ保存期間は30日
S3 1 ゾーン – IA 低頻度 アクセス頻度は低いが、必要に応じてすぐに取り出す必要がある場合(S3 標準 – IAと比べて可用性が低い)
・最小ストレージ保存期間は30日
Amazon S3 Glacier Instant Retrieval アーカイブ まれにしかアクセスしないが、ミリ秒単位の取り出しが必要かつ長期間保存する必要がある場合
・最小ストレージ保存期間は90日
Amazon S3 Glacier Flexible Retrieval アーカイブ 1 年に 1〜2 回アクセスされ、非同期での取り出しがある場合
・取り出し時間を設定できる(1~240時間)
・最小ストレージ保存期間は90日
Amazon S3 Glacier Deep Archive アーカイブ 1 年に1 ~2 回しかアクセスされない場合
・取り出し時間は 12 時間以内
・最小ストレージ保存期間は180日

性能・機能の比較

OCIオブジェクトストレージとAWS S3の性能・機能について9項目比較しました。

基本的な性能や機能の有無に大きな差はありませんでしたので、性能や機能で差をつける場合は、要件に応じて詳細な内容を比較していく必要があります。

分類 項目 OCIオブジェクトストレージ AWS S3
性能 一貫性 あり あり
可用性 99.9% 99.99%
耐久性 99.999999999% 99.999999999%
ストレージの容量 無制限 無制限
オブジェクト数 無制限 無制限
1オブジェクトの容量 0byte~10 TiB 0byte~5TB
機能 暗号化(サーバ側) あり あり
バージョニング あり あり
ディレクトリ構造 あり あり
レプリケーション あり(非同期) あり(非同期)

料金の比較 - OCIオブジェクトストレージとAWS S3

オブジェクトストレージ料金には、「ストレージ容量」だけではなく「リクエスト数」や「データ取り出し」も含まれています。今回は3つのストレージ層で料金を比較しました。$はUSDです。

標準

比較ストレージ層 OCIオブジェクトストレージ AWS S3 料金差
(OCI – AWS)
Object Storage - 標準 S3 標準
ストレージ容量
(GB単位)
$0.0255 $0.025
*1
$0.0005
リクエスト数
(10,000requests単位) *3
$0.0034 $0.047 (LIST)
$0.0037 (GET)
*2
-$0.0436(LIST)
-$0.0003(GET)
データ取り出し
(GB単位)
なし なし
ストレージ料金
+リクエスト料金
$0.0289
($0.0255+$0.0034)
$0.05035
($0.025+$0.02535)
-$0.02145

リクエスト料金はGET50%/LIST50%で計算

頻度の低いアクセス

比較ストレージ層 OCIオブジェクトストレージ AWS S3 料金差
(OCI – AWS)
Object Storage -頻度の低いアクセス S3 標準 – IA
ストレージ容量
(GB単位)
$0.01 $0.0138 -$0.0038
リクエスト数
(10,000requests単位) *3
$0.0034 $0.1 (LIST)
$0.01 (GET) 
$0.1 (ライフサイクル移行)
*2
-$0.0996(LIST)
-$0.0066(GET)
データ取り出し
(GB単位)
$0.01 $0.01 $0
ストレージ料金
+リクエスト料金
$0.0134
($0.01+$0.0034)
$0.0688
($0.0138+$0.055 )
-$0.0554

リクエスト料金はGET50%/LIST50%で計算

アーカイブ

比較ストレージ層 OCIオブジェクトストレージ AWS S3 料金差
(OCI – AWS)
Archive Storage Amazon S3 Glacier Deep Archive
ストレージ容量
(GB単位)
$0.0026 *4 $0.002 $0.0006
リクエスト数
(10,000requests単位) *3
$0.0034 $0.65 (LIST)
$0.0037 (GET) 
$0.65 (ライフサイクル移行)
*2
$1.142 (データ取り出し-標準)
$0.25 (データ取り出し-大容量)
*5
-$0.6466(LIST)
-$0.0003(GET)
データ取り出し
(GB単位)
なし $0.022 (標準)
$0.005 (大容量)
*5
-$0.005
ストレージ料金
+リクエスト料金
$0.006
($0.0026+$0.0034)
$0.32885
($0.002+$0.32685)
-$0.32285

リクエスト数はGET50%/LIST50%で計算

*1 AWS S3標準のストレージ料金の月額は、最初の50TB(0TB~50TB)までの範囲は$0.025/GB、次の450TB(50TB~500TB)の範囲は$0.024/GB、それ以降(500TB超)の範囲は$0.023/GBとなります。

*2 AWS S3のリクエストの料金はリクエストタイプに応じて異なります。今回はGET、LIST、ライフサイクル移行、データ取り出しリクエストの料金を記載しています。

*3比較のためリクエスト数は10,000あたりの料金とします。(AWS S3では1,000 requests、OCIオブジェクトストレージでは10,000requestsが課金単位)

*4 Archive StorageをリストアするとObject Storage-標準に戻されます。その間ストレージ容量が課金されます。

*5 Amazon S3 Glacier Deep Archiveは、標準(データ取り出し時間3~5時間)と大容量(データ取り出し時間5~12時間)で料金が変わります。

OCIオブジェクトストレージはAWS S3より安いのか?

標準ストレージのストレージ料金のみを比較すると、OCIはAWSに比べて1GBあたり$0.0005高くなります。一方、リクエスト数やデータ取り出し料金を合算するとOCIの方が安くなります。リクエストの種類・使い方やデータ取り出しの運用によってはAWSの方が高くなる可能性があります。

例えば、AWS S3で大量のオブジェクトに対してデータリクエストが発生している場合、低頻度・アーカイブ層へのデータアクセスが増える場合は料金の増加に注意が必要です。

AWS S3の良い点は利用用途に応じてストレージ層を細やかに選択できるところですが、ストレージ層や料金体系が複雑で見積が難しいという側面があります。一方、OCIオブジェクトストレージの良い点はシンプルなストレージ層と料金体系です。見積時点から予想外のコストが発生することは少ないと考えられます。

ストレージ層はデータアクセスパターンによって分かれていますので、利用用途が変わるとコストが大きく変わってしまう可能性があります。予想外のコストが発生してしまうこともあるため注意が必要です。

また、今回の比較には含まれていませんが、利用用途によっては「データ転送量」にも注意が必要です。インターネット通信の場合、AWSのアウトバウンドデータ転送は月100GBまで無料、OCIのアウトバウンドデータ転送は月10TBまで無料となっています。

Amazon S3互換API

OCIオブジェクトストレージでは、Amazon S3互換APIを使用することができます。Amazon S3ツール(awscli、s3api、s3fs-fuse やクライアントツールなど)を使用している場合、ツールをそのまま流用してOCIオブジェクトストレージに接続することができます。AWSからOCIオブジェクトストレージにデータ移行する場合には大変便利な機能です(ただし、Amazon S3の全てのAPIを、OCIのAmazon S3互換APIがサポートしているわけではないので注意が必要です)。

おわりに

OCIオブジェクトストレージは、ユーザーに分かりやすいシンプルなストレージ層と料金体系が魅力です。データアクセスパターンとストレージ層の各サービス内容を理解し、予想外のコスト発生を避けて上手く利用することがポイントです。OCIへの移行をご検討中の方は、お気軽にシステムエグゼまでお問い合わせください。

忖度無しの徹底比較!Oracle Cloud Infrastructure VS Amazon Web Services

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