データ活用というと、本格導入が難しいと考えている企業がまだ多く見られるのが現状です。しかし、アメリカやドイツに目を向けると、データの活用を行っている企業あるいはデータ活用基盤の導入・活用を予定している企業が過半数あるなど、進展していることがわかります。
(参照:「総務省 デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」より)
日本が取り残されているとされるデータの利活用を、中小企業でもスムーズに促進させるにはどのように課題を解決したらよいのでしょうか。中小企業でも進めやすいデータの利活用の具体的な方法について、課題と解決方法を含めて解説します。
課題が多い日本企業のデータ活用
DXの中心的施策とされるデータ活用ですが、日本は後れを取っているといわれています。現在の日本企業のデータ活用状況について、世界の情勢との対比で解説します。
世界的に進むデータ活用
データの活用は、世界規模でみると進展しています。データ収集・蓄積・処理を目的とした製品やサービスの導入状況を調査したところ、「導入している」と答えた米国の企業は半数以上、ドイツでも半数近くとなっています。導入予定を含めると、米国・ドイツどちらも3分の2を超える企業がデータ活用にすでに実際に取り組んでいます。
図表:データ収集・蓄積・処理の導入状況
(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」
また、データ量が今後5年間で激増することを予測する企業が圧倒的多数である中、増加に備えて「準備ができている」と答えた企業は、中国では8割を超えています。
(参照:「米Splunk調査“The Data Age is Here. Are You Ready?”」より)
ICTの進展、なかでもIoTデバイスの活用と通信技術の進歩により、データを取得しやすい環境が整い、さらにデータ活用基盤の導入が進んでいるため、世界ではデータ活用が進展していると考えられます。
日本企業はデータ活用で後れを取っている
ところが、日本では、先出の「データ収集・蓄積・処理を目的とした製品やサービスの導入状況」の調査結果によると、「導入している」と答えた企業は、導入予定を含めても全体の2~3割にとどまっています。これは際立って少ない数字であると同時に、導入予定の企業が1割を割り込むなど、積極的ではない様子も見受けられます。
また、「わからない」という回答の多さは、日本は各国との比較で突出している傾向にあります。データの活用について企業側の理解が追い付いていない様子を推測することができます。
さらに、オープンデータの活用を行っている企業も少なく、米国・ドイツが5割を超えるのに対し、日本では検討中を含めても約3割と非常に少ない傾向です。
図表:オープンデータの利活用状況及び利活用意向(複数選択)
(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」
中小企業が抱えるデータ活用の課題
データ活用が日本全体で苦戦する中、中小企業にはよりハードルの高い課題とされています。中小企業が多く抱える課題とは何でしょうか。
データ源の不足
中小企業が直面するデータ活用の課題における大きな要因のひとつは、データ源の不足です。特に中小企業においては、データ源となるIoTの導入が、顕著に進んでいないことがわかります。
2020年度の総務省「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」は、データの活用状況をデータの入手源別でも調査しています。この調査によると、各種データの利活用状況について、中小企業では大企業の50%未満であり、中でもGPS・センサーデータなどのIoTデータの活用は立ち遅れています。
図表:分析に活用しているデータ(企業規模別)
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
これに対して、観客データ・経理データ・電子メールデータなどの今まである技術やアナログでもとれるデータになると活用が50%を超えており、データの活用を中小企業が行っていない、というわけではないことが推測できます。
つまり、問題なのは、技術自体の活用状況に差があり、データをそもそも入手できていない状況だ考えられます。
AIなど高度な分析が行えない
さらに上記の総務省調査で、利用されているデータ分析手法についての統計を見ると、大企業と中小企業では、高度な分析技術を活用できているかどうかに差があります。
機械学習・ディープラーニングを使ったAI分析など、高度な分析についての活用割合をみると、大企業でも1割程度しか進んでいないものの、中小企業ではその3分の1強(3.9%)にとどまっています。
中小企業では8割を超える企業がデータを閲覧し、業務を行っていると答えており、ここだけで比較すると大企業の割合を超えています。データを閲覧して情報を収集することは広く行われ、データに関心がないわけではありません。
ところが、活用となると、集計までは自社で行うことができるものの、相関分析まで行う割合は下がっていき、AIなどの高度な技術によるデータ活用には生かせない状況に陥ってしまいがちであることがうかがえます。
データ活用人材の不足
また、中小企業では、データ活用ができる人材が不足していることも課題です。
2019年6月に中小企業庁から発表された「中小企業のAI・データ活用について(スマートSME研究会討議用資料)」によると、AI人材の獲得は、従業員1,000人未満の企業では4%の企業が行っているにとどまっています。これは、1,000人以上の企業の半分に相当し、データ活用を専門の人材で賄える割合が大企業より低いものと考えられます。
また、データ利活用のための課題として、人材不足をあげる中小企業の割合が5割近くと、人材不足に課題感がある企業が多いことがわかります。
市場全体でも、総需要24万人に対し、12万人のAI人材が2030年には不足に陥るとされています。さらに、事務職等の職員において、AIにより分析したデータを活用し、質の向上を図ることができる人材の需要は多くなるでしょう。
人材市場全体の傾向でもありますが、中小企業では大企業よりもAI開発人材・活用人材双方においてより苦戦が予想され、結果的にデータ活用が進められない、という結果に陥るおそれがあります。
データ活用を円滑に進めるために必要なこと
しかし、中小企業でも方法次第でデータ活用上の課題は解決できます。データ活用を円滑に進めるためになにが必要か、方法を具体的に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
データ収集・活用のための基盤の整備
データ活用の第一歩は、データを入手できる体制作りです。どんな方法を使ってデータを収集するかについては、すでにあるデータを加工する・ないデータは取得する、の2通りです。さらに、分析のための環境を準備してデータを保管し、統合的に利用できるようにすることがデータ活用の第一歩です。
中小企業における、IoTによるデータ収集が進まないといった問題に対しては、携帯電話もPOSデバイスもIoTデバイスですので、大いに活用できる環境づくりを進めましょう。また、既存のデータも、分析しやすい環境に置くことがポイントです。
環境として適切なのはデータ活用基盤です。導入すると、業務に悪影響を与えることなくスムーズにデータの一元管理が進められ、統合的な利用ができるようになります。
データの管理を分散させてしまうと、サイロ化してしまい、一元管理してデータの関係を分析したり、活用したりすることが進めにくくなります。一方、データ活用基盤を適切に導入すると、個々のデータの引き出しも全く問題がないので、部署ごとの業務に悪影響を与えることもありません。
データ活用基盤としておすすめなのが、Oracle Cloudです。中小企業でも比較的低コストで導入でき、各種システムからデータを取得して統合的に利用することを可能にするクラウドベースのソリューションです。
モバイル対応や各種システムとの連携性に優れ、データベース・AIによる分析ツールなどを統合する一体型ソリューションとして提供されています。そのため、データがあちこちに分散し、いざというときに使えない、という心配はありません。高度な分析を可能にする環境を、無理なく、無駄なく導入できます。
データ専門家の採用と育成
中小企業で課題となるデータ専門人材の採用と育成は、長期的課題となることなので、長期的な視野で取り組む必要があります。
まず、データサイエンティストなど、データ活用基盤が十分に使える人材を1名採用することを目標にします。スペシャリストの確保を早く図っておくことにより、データ活用ソリューションの導入とセットで進められます。
データの活用は、様々な切り口から行い、業務改善に生かすことが必要で、多くの仮説検証データから経営課題を浮き彫りにすること、改善策を実行することを繰り返し行う「終わりなき旅」です。しかし、視点を変えると、早くに着手し、経験値を上げることで、中小企業の中でも経営にアドバンテージを出すことが出来ます。
問題はその後、分析の質を上げていくことにあるので、さらに人材を獲得すること、あるいはエンジニアや素養のある事務職員等の中からデータサイエンティストを育てていくなど、長期で取り組む必要があります。コストと時間がかかることではありますが、それに見合うリターンがあると考えて取り組んでみましょう。
社外からのノウハウ調達
データの活用は早くに着手し、実行したほうが競争においては優位性がありますが、人材育成や人材獲得のコストをすぐにかけられない場合は、短期での解決方法としてアウトソーシングサービスを使うことも考えましょう。
データの分析や、仮説に従った分析ツールのシナリオ作成などは、アウトソーシングサービスによって行うことができます。また、データ活用基盤を自社の課題に合わせて利用するには、技術的な設定やテクニカルサポートが必要になりますが、これも最初はアウトソーシングサービスを活用し、自社のノウハウとして蓄積できます。
社外リソースをうまく活用すると、現在の戦力だけで、高いコストをかけずにデータ活用基盤を導入することができます。効果を実感出来たら人材投資にシフトするという戦略を実行することも、もちろん可能です。
Oracle Cloudを利用するのであれば、次世代データ分析サービスを使い、シナリオの設定や、分析課題にあわせた使い方のサポートなど、データ分析基盤を導入から最速で実践に生かすことができます。十分なデータ活用の知識がなくても、利用しながら自社に分析ノウハウを蓄積することもできますので、Oracle Cloudとあわせて導入することをおすすめします。
まとめ
中小企業には、技術力・データ活用人材の不足により、データ活用が進めにくい面があります。
しかし、これらの課題はAIによるデータ分析を低コストで行うことができるOracle Cloudと次世代データ分析サービスにより、データの入手・管理の段階から、分析・活用まで、すべて低コストで実現することができます。
早めの着手でノウハウを蓄積し、競争力をつけることが中小企業のデータ活用のポイントです。Oracle Cloudと次世代データ分析サービスをセットで導入することをおすすめします。
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