ある調査によるとパブリッククラウドを利用中の企業の約60%は、複数のベンダーや技術/サービスを利用しているそうです。理由として、システムやアプリケーションごとに最適なクラウドを選び、コストを最適化するためという回答が多く見受けられました。複数のクラウドを利用することで多くの課題を解決できます。一方、デメリットとして、運用や管理、監視が複雑化するという課題が発生してしまいます。
今回は、Oracle Cloud Infrastructure(以下OCI) と Microsoft Azure(以下Azure)で実現するシンプルなマルチクラウド戦略についてご紹介いたします。
マルチクラウドのメリット
マルチクラウドを採用すると下記のようなメリットを享受することができます。
ベンダーロックインの回避
マルチクラウドにより、ある特定のクラウドベンダーに依存することなくなり、その結果、ビジネスの柔軟性の向上と将来的な変更や移行が容易になります。
高い可用性と冗長性
複数のクラウドベンダーを利用することで、もし1つのクラウドベンダーで障害が発生しても、他のクラウドベンダーによりサービスを利用することでビジネスの中断を最小限に抑えることができます。
最適なリソースの選択
各クラウドベンダーはそれぞれ特徴や強みを持っています。特定の目的に対して最適なリソースやサービスを選択することで、コストや性能の向上が期待できます。
レジリエンスの向上
データやアプリケーションを複数の場所に分散させることができるため、事前災害や地域的な障害が発生した場合でもデータやサービスを保護し続けることができます。
コストの最適化
クラウド市場では、クラウドベンダー間で価格競争が行われています。異なるクラウドベンダーの価格を比較し、コストを最適化することができます。
オラクル社とマイクロソフト社が提供するマルチクラウド環境
オラクル社とマイクロソフト社は、2019年よりマルチクラウドの取り組みを推進し、数百社のお客様をサポートしてきました。両クラウド間でマルチクラウド環境が利用可能なリージョンは日々増え続けており、現在は12リージョンで展開されています。日本では東京リージョンで使用可能です。
国名 | OCI | Azure |
日本 | 東京 | 東京 |
シンガポール | シンガポール | シンガポール |
大韓民国 | ソウル | ソウル |
ドイツ | フランクフルト | フランクフルト |
オランダ | アムステルダム | アムステルダム |
英国 | ロンドン | ロンドン |
南アフリカ | ヨハネスブルグ | ヨハネスブルグ |
ブラジル | ヴィニェード | カンピナス |
カナダ | トロント | トロント |
米国 | アッシュバーン | ワシントン |
米国 | サンノゼ | シリコンバレー |
米国 | フェニックス | フェニックス |
※https://docs.oracle.com/ja-jp/iaas/Content/Network/Concepts/azure.htm
※https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/virtual-machines/workloads/oracle/oracle-oci-overview
お客様は2つのクラウドで提供される最適なサービスを選択することができます。オラクル社とマイクロソフト社はより効果的に活用いただくためにパートナーシップを結んでいます。パートナーシップのポイントとしては下記の3点が挙げられます。
- OCI-Azure Interconnect
- Oracle Database Service for Azure
- 両方のクラウドベンダーによるシームレスな問題解決
Oracle Interconnect for Azure
Oracle FastConnectとAzure ExpressRouteを使用し、OCIとAzureの環境間にプライベートな相互接続をシームレスに構築することができるサービスです。マルチクラウドの障壁として、レイテンシとセキュリティがありますが、Oracle Interconnect for Azureは2ミリ秒未満の非常に低遅延なレイテンシと、プライベートでセキュアな相互接続を実現します。相互接続を利用することで、Azure上で構築したアプリケーションからOCI上のデータベースサービスに高速接続とそれぞれのリソースへのシングル・サインオン(SSO)アクセスが可能となり、柔軟なクラウドシステムを構成できるようになります。
相互接続の全体プロセスは下記の通りです。
- 【OCI/Azure】 ネットワークセキュリティグループおよびセキュリティルールの構成(OCI:VCN、Azure:VNet)
- 【Azure】 Azure ExpressRoute回線の設定
- 【OCI】 OCI FastConnect仮想回線の設定
- 【OCI/Azure】 両回線がプロビジョニングされていることの確認
- 【OCI/Azure】 ルート表の構成
- 【OCI/Azure】 接続のテスト
Oracle Database Service for Azure
Oracle Interconnect for Azureを活用して、Azureネイティブな操作性で、OCI上で動作するOracle Databaseのプロビジョニングと管理を容易に行うことができるサービスです。
先ほど紹介したOracle Interconnect for Azureは、任意のAzureリソースと任意のOCIリソースを接続したい場合に使用します。Oracle Database Service for Azure(以下ODSA)は、OCI上のデータベースサービスをAzureリソースのように利用したい場合に使用します。
ODSAの特徴は下記の通りです。
- OCI上の データベースサービスをAzureのサービスのように作成でき、Azureポータルから監視可能
- OCIとAzure間のネットワーク設定は不要
- OCIとAzure間のユーザー連携を自動設定
- OCIとAzure間のデータ転送費およびポート費用が無料
- OCIとAzure間の遅延は2ミリ秒以下の専用線接続
- Base Database Serviceに加え、MySQL HeatWave を使用可能
- Exadata Database ServiceやAutonomous Databaseなどの高性能データベースを使用可能
ODSAのユースケースとしては、下記のようなケースが挙げられます。
- アプリケーションとデータベースでそれぞれクラウドベンダーを分けて、シンプルな構成でマルチクラウド化を実現したい
- App ServiceやAzure ADなどのAzureサービスと高性能なOracle Databaseを組みあわせたクラウド環境を構築したい
- Azureを利用しているが、オンプレミス環境に残っているOracle DatabaseがOracle RAC構成である
おわりに
上記のサービスを利用することで、双方の長所を活用したシンプルなマルチクラウド化が実現できます。
- 直接接続による高速で安全なデータ連携を実現することで、同じネットワーク内にあるかのようなシンプルな通信が可能
- まるでAzureサービスであるかのように、シンプルにODSAポータル上でOracle Databaseの操作や監視が可能
- Azure ADによりOCIへのアクセス制御も含めてシンプルなID認証の一元管理を実現
システムエグゼではお客様へのさらなる最適なご提案に向けて、Oracle Cloudでリリースされた最新サービスの定期的な検証に取り組んでいます。
システムエグゼの社内システムにOracle Interconnect for Azureによる相互接続を利用した事例と、Oracle Database Service for Azureについて検証した内容を公開していますので、是非ご覧ください。
- カテゴリ:
- クラウド移行