Oracle Cloud Infrastructureは、クラウドとオンプレミスの良さを兼ね備えており、エンタープライズ用途の厳しい要件に対応できる「次世代クラウドインフラ」として期待が集まっています。
本記事では、そんなOracle Cloud Infrastructureを試しに使ってみたい企業担当者に向けて、チュートリアルでできることと簡単な使い方をお伝えします。
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)とは?
Oracle Cloud Infrastructureは、オラクル社が提供するエンタープライズ向けに最適化されたクラウドプラットフォームサービスです。
サービス内容はAWSやAzureと同様であり、後発のサービスですが、既存のサービスにはない強みを持っており、注目を浴びています。
まず、オラクル社はハードウェアメーカーでもあることから、オンプレミスとクラウドの環境を同じアーキテクチャ、同じOracle製品で構成することで、オンプレミスで構築してきたノウハウをそのまま利用できるのがメリットです。
また業界初のSLA(サービス品質保証)や、他サービスにはない堅牢なセキュリティを持たせることも実現しており、Oracle Cloud Infrastructureを利用する価値は高いと言えるでしょう。
Oracle Cloud Infrastructureのチュートリアル(入門編)
それでは、Oracle Cloud Infrastructureチュートリアルのうち、入門編の内容について解説します。
入門編では、無料トライアルの申し込みから、仮想マシンであるインスタンスの作成・接続までを行います。
無料トライアルに申し込む
まずはチュートリアルを試すために、無料トライアルに申し込みましょう。
無料トライアルで取得できる作業環境は、Oracle Cloudのほとんどのサービスを利用可能です。無料トライアルを申請するためには、個人情報や企業情報の登録と共に、クレジットカードの登録も必要です。ただトライアル期間中なら、基本的に費用がかかることはありません。
無料トライアルの申し込み方法の詳細は、公式サイトの「無料トライアルサインアップガイド」を参照してください。
コンソールへのアクセス
トライアルの申し込みが完了したら、Oracle Cloudにサインインしましょう。
サインインするのはクラウド・アカウントであり、Oracleアカウントへのサインインではないことに注意してください。
サインインすると、Oracle Cloud Infrastructure のコンソール画面にアクセスできます。
仮想クラウド・ネットワーク(VCN)の作成
Oracle Cloud Infrastructureを利用するうえで最初にやるべきことは、仮想クラウド・ネットワークの作成です。
仮想クラウド・ネットワークとは、オンプレミスでネットワークを構築するのと同様に、クラウド上でネットワークを構成することです。
仮想ネットワークの作成には、サブネットやコンポーネントなどの配置が必要です。ただし、VCNウィザードを利用すれば、テンプレート通りの仮想ネットワークを簡単に作成することができます(カスタム設定も可能です)。
無事、仮想ネットワークが作成できたら、インスタンスを始めとするコンポーネントを配置可能になります。
インスタンスの作成
作成した仮想ネットワーク上にインスタンスを作成しましょう。仮想マシンとベアメタルサーバーのどちらも簡単に作成できます。
インスタンス作成手順は以下の3ステップです。
1.インスタンスの作成
Oracle Cloud Infrastructure のコンソールメニューから、コンピュート>インスタンスを選択し、インスタンスの作成をクリックします。
「コンピュート・インスタンスの作成」ウィンドウが表示されるので、下記の項目を埋めたうえで作成します。
- 名前:インスタンス名を入力
- コンパートメントに作成:インスタンスを作成するコンパートメントを選択
- 配置とハードウェアの構成:ドメインやイメージ、シェイプを選択
- ネットワーキングの構成:構築したネットワーク情報を入力
- SSHキーの追加:SSHキーペアの生成とダウンロード
- ブート・ボリュームの構成:ブート・ボリュームのサイズや暗号化を設定
- 拡張オプションの表示:固定IPアドレスやモニタリングの設定
作成ボタンを押すと、インスタンスの作成が始まり「プロビジョニング中」というステータスになります。数分程度待機し、ステータスが「実行中」に変わればインスタンス作成は完了です。
2.インスタンスの確認
作成したインスタンスの詳細情報を確認し、入力した情報に誤りがないかを確認しましょう。
また、「プライマリVNIC」の項目にあるグローバルIPアドレスは、インスタンスへの接続に使用するのでメモを取っておきましょう。
3.インスタンスへの接続
作成したインスタンスにSSH接続を行います。
Tera Termなどのターミナルエミュレータを使い、以下の情報を入力して接続します。
- グローバルIPアドレス:上記でメモしたIPアドレスを入力
- ポート番号:22番
- ユーザー:orc(Oracle規定の接続用ユーザー)
- SSH鍵:インスタンス作成時に作ったSSH鍵を使用
- パスフレーズ:SSH鍵作成時に設定していなければ空白で問題ありません。
これで、無料トライアルの申し込みから、インスタンスの作成・接続までが完了しました。
Oracle Cloud Infrastructureのチュートリアル(応用編)
Oracle Cloud Infrastructureのチュートリアル応用編では、使用時に必ずといっていいほど役に立つ、モニタリングやロードバランサーなどの機能を設定する方法について学習できます。
ここでは、応用編の内容のうち、代表的な3つの機能について解説します。
モニタリング機能の設定・確認
まずはモニタリング機能を利用して、Oracle Cloud InfrastructureのCPUやメモリ、ネットワーク通信量などのリソースを監視しましょう。
モニタリングを行うことで、システムの運用時にアプリケーションやシステムの異常を検知し、システムの性能を保ちやすくします。
コンピュートやブロックボリュームなどのリソースについては、デフォルトで監視が有効になっていますが、作成したインスタンスなどの監視は自分で設定することが必要です。インスタンスの監視は、インスタンス作成時に「拡張オプションの表示」の欄にある「モニタリングの有効化」ボタンをチェックすれば開始できます。
モニタリング結果は、コンソールメニューからコンピュート>インスタンスを選択、インスタンスの詳細表示画面の左下にあるリソースから、メトリックを選択することで参照可能です。
ロードバランサーの設定
ロードバランサーは、複数のサーバーを冗長化し、それぞれのサーバーの負荷を均一にする装置です。Webサーバーにかかる負荷を分散させるので、より安定した稼働が期待できるようになります。
Oracle Cloud Infrastructureにおいてシンプルなパブリック・ロードバランサーを構築し、仮想ネットワーク上に構築した2つのサーバーで負荷分散を行う場合、以下の作業が必要です。
- 仮想クラウド・ネットワークとサブネット2個の作成
- 2つのインスタンス作成とWebサーバー起動
- ロードバランサー用のサブネット作成
- ロードバランサーの作成
- ロードバランサーへのhttp通信許可の設定
- ロードバランサーの動作確認
- Webサーバーの保護
オートスケーリングの設定
アプリケーションの負荷に応じ、リソースを自動で調整するのがオートスケーリングです。
CPU使用率やメモリ使用率などのモニタリング結果から、一定の基準を超えると追加のインスタンスを起動し、不要になったら終了することができます。
オートスケーリングを設定することで、例えば「障害が発生したときのリソース確保」や、「リソース最適化によるコスト削減」が期待できます。
Oracle Cloud Infrastructureにおけるオートスケーリング設定の手順は以下の通りです。
- インスタンス・プールのベースとなるインスタンスを作成
- インスタンス構成の作成
- インスタンス・プールの作成
- オートスケーリングの設定
- CPU負荷をかけてインスタンスの増減を確認
Oracle Cloud Infrastructureのチュートリアル(実践編)
Oracle Cloud Infrastructureのチュートリアル実践編では、各種実践的な用途に合わせた利用方法が掲載されています。チュートリアルはOracleアーキテクチャ・センターにまとめられており、300以上のシナリオから選んで試すことが可能です。
チュートリアルの内容は多岐に渡り、以下のような内容があります。
- 仮想マシンDBシステムへのオンプレミスOracle Databaseデプロイメント移行
- イベントトリガー・サーバーレス・アプリケーションのデプロイ
- Oracle Cloudへのバックオフィス・トータルシステムの導入
- 最新のアプリケーション開発-機械学習および人工知能
まとめ
今回は、Oracle Cloud Infrastructureの使い方を学びたい人に向けて、オラクル社が提供するチュートリアルの内容と使い方の概要をお伝えしました。
チュートリアルの内容は基本編から実践編までレベル別に掲載されており、各種用途に対応した幅広い利用方法を学ぶことができます。
特に実践編ではアーキテクチャ・センターに300以上のシナリオが掲載されており、実際の開発や利用がイメージできる内容になっているため、契約前に一度試してみるのをおすすめします。
- カテゴリ:
- OCI基礎知識