不正や不祥事の発生は、企業価値を失墜させる大きなリスクになりえます。このリスクを防止し、株主をはじめとするステークホルダーから信頼される企業になるためには、コーポレートガバナンスの強化が求められます。そこで本記事では、コーポレートガバナンスの基本的な意味からはじめ、その重要性や強化のポイントなどを解説します。
コーポレートガバナンスとは
コーポレートガバナンスとは、事業運営が公正に行われるように監視・統制するための仕組みのことです。日本語に訳すと「企業統治」という意味合いになり、単純に「ガバナンス」と略されることもあります。
コーポレートガバナンスは、株主をはじめとするステークホルダー全体の利益を意識した考え方です。企業は経営陣だけでなく、株主、従業員、取引先、銀行、顧客、地域社会など多くのステークホルダーの関与・協力によって成り立っています。したがって、企業はステークホルダー全体の利益のバランスを考えながら事業活動を行っていかなければなりません。これを全うするため、企業が設定するものがコーポレートガバナンスです。
つまり「経営陣が会社を私物化したり、不正な手段で利益追求に走ったりしないよう、企業はコーポレートガバナンスを設定する」とも理解できます。
後述しますが、コーポレートガバナンスの具体的な取り組み内容はさまざまです。社外の機関に外部監査を依頼することも少なくありません。
コーポレートガバナンスの重要性
バブル崩壊後に粉飾決算や違法労働などの不祥事を起こす企業が多く報道されました。中には、これらが原因で顧客が離れてしまい、会社が倒産したり経営が傾いたりした例もあります。こうした過去の失敗を繰り返すことなく、企業の社会的信用や企業価値を高く維持するため、コーポレートガバナンスが注目されるようになりました。
また、企業の社会的責任(CSR)の実践として、コーポレートガバナンスは重要視されるようになっています。過労死などの労務問題や経済活動に伴う環境破壊などへの問題意識が高まっている今日では、経済的利益のみを追求する企業は「社会の成員としての義務を果たしていない」とみなされやすくなります。これを回避するために重要なポイントは、経営陣が目先の利益だけに捕らわれず、企業倫理を遵守した健全な経営を心がけることです。こうした経営健全化のためにも、コーポレートガバナンスが活かされています。
加えて近年は、外国人投資家を含む機関投資家たちの持ち株比率も上昇しています。コーポレートガバナンスの設定・遵守を実現していることで、そうした株主へも安心感を与えられます。
コーポレートガバナンスの目的
上記で紹介したような問題意識から、コーポレートガバナンスは基本的に以下のことを目的に設定されます。
- 透明性の確保
事業戦略や財務状況などの諸情報を適切に開示することは、企業が健全な経営を行っていることを公に示し、株主などに投資の判断材料を与えるために重要です。したがって、コーポレートガバナンスは情報の透明性が確保されるように設定されます。
- 不祥事の防止
先述のように、法や倫理に背くような事業運営は企業の社会的イメージを落とし、事業存続を危うくするリスクを生じさせます。こうしたリスクを低減し、不祥事をあらかじめ防止することは、大きな目的のひとつです。
- ステークホルダーの権利や立場の尊重
企業が事業活動を行うには、さまざまな立場の利害関係者による協働が必要です。したがってコーポレートガバナンスは、各ステークホルダーの権利や立場を尊重し、利益が公平に還元されるような仕方で事業運営が行われるように設定されます。
- 企業価値の向上
上記の目的はいずれも、「企業価値の向上」という包括的な目的に帰着します。適切なコーポレートガバナンスを実施している企業は、その信頼性の高さから投資家や優秀な人材、多くの顧客を惹きつけ、長期的に企業価値を高めることに成功するでしょう。
コーポレートガバナンスの指針・5つの基本原則
上記のような目的を達成するためには、明確な指針に基づいてコーポレートガバナンスを設定することが欠かせません。その際に参考になるのが、金融庁と東京証券取引所が上場会社向けに共同で作成した「コーポレートガバナンス・コード」です。ここには、以下の5つの基本原則が示されています。
基本原則1. 「株主の権利・平等性の確保」
企業は株主の権利を尊重し、適正に利益を還元できるように努める責任があります。また、少数株主や外国人株主についても平等性を確保できるように環境整備を行わなければなりません。
基本原則2. 「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」
企業は経営陣や株主だけで成立しているのではありません。したがって、従業員や取引先、顧客、地域社会などその他のステークホルダーとも適切な関係を築けるように努力する必要があります。
基本原則3. 「適切な情報開示と透明性の確保」
企業は株主に対して財務情報・非財務情報問わず、積極的な情報開示を行うべきです。これは法令で開示が義務付けられていない種類の情報についても例外ではありません。
基本原則4. 「取締役会等の責務」
取締役会は中長期的に企業価値を向上させていくために、(1)企業戦略の策定と提示、(2)経営リスクへ備える環境整備、(3)経営陣や取締役に対する監督、などについて責任を果たすべきです。
基本原則5. 「株主との対話」
企業は持続的な成長や企業価値の向上を実現するために、株主総会以外の場でも積極的に株主と対話するべきです。正当な意見については経営に反映するなど、適切な対応に努めなければなりません。
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コーポレートガバナンスの強化方法
最後に、コーポレートガバナンスの強化に役立つ方法を紹介します。
内部統制を強化する
内部統制とは、社内規則などの整備を通して、従業員が法律やコンプライアンスに反しないように制御することです。自社に不利益を与えるような不正・不祥事は経営陣だけでなく、個々の従業員に由来することもあります。したがって内部統制を強化することはコーポレートガバナンスの強化にもつながります。株主などへ開示する情報の中に内部統制を強化するための取り組みも含めることで、さらに自社の信用を高められるでしょう。
社外の監視体制を構築する
企業の中には立場や人間関係などのしがらみがあることから、自浄能力がうまく働かないケースもあります。そのため監視体制には、社内の人間だけでなく、社外の第三者も含み入れることが推奨されます。一般的には、社外取締役や監査役を設置して、その役割を務めてもらうことが多いでしょう。
組織ぐるみの不正行為に手を染める企業も存在する中、あえて社外の人間を監視役に据えることは、組織の健全性や透明性のアピールにもつながります。客観的な視点を持ちやすい社外の人間だからこそ、発見可能な課題もあるでしょう。
執行役員制度を採用する
執行役員とは、取締役会で決定された経営戦略を実際に執行(事業運営)する責任者を意味します。通常、事業運営は経営戦略の策定や社内の監督に並ぶ取締役の職務のひとつです。しかし執行役員制度を導入すれば、事業運営面を執行役に任せることができます。その分、取締役は経営や社内監督に専念できるようになり、コーポレートガバナンスの強化にも注力できます。また、付随的なメリットとして、取締役の業務負担軽減や、経営と事業運営の役割分担が明確化されることによる意思決定速度の向上なども期待できます。
社内規定を整備する
コーポレートガバナンスの強化は、末端の従業員も含めて企業全体で取り組むべきことです。したがって、社としての方針を全社的に共有・浸透するために、倫理憲章や行動規範などの既定を整備することも役立ちます。社内規定を通して従業員1人ひとりが問題意識を高められれば、不正や不祥事の起きにくい企業風土を醸成していくことが可能です。
ワークフローシステムを導入する
上述の内部統制の面からコーポレートガバナンスを強化するには、ITツールの「ワークフローシステム」を導入することもおすすめします。ワークフローシステムとは、稟議や社内申請などの決裁処理をデジタル上で行うためのソリューションです。
ワークフローシステムを使用すると承認ルートが設定・可視化されるため、「誰がどの順番で申請を承認していくべきなのか」明確になります。つまり重要な意思決定プロセスについて、どの部分で誰が関与しているのか、格段に把握しやすくなります。
またワークフローシステム導入に伴って、既存の業務プロセスを見直し、標準化を進めることなども求められます。システム導入をきっかけに、今まで放置されていた課題を洗い直したり、判断基準の統一化を促進したりする流れが自然と生まれます。コーポレートガバナンスをも効率的に強化していけるでしょう。
ガバナンス強化、業務効率化に役立つワークフローシステム・AppRemo
社外取締役の設置をはじめ、コーポレートガバナンスを強化するための方法はさまざまです。その中でも内部統制の強化を通してコーポレートガバナンスを強めていく方法としては、ワークフローシステムの導入が有効です。
「AppRemo」(アップリモ)は既存のExcelテンプレートをそのまま使って電子化・承認フローの自動化ができる、業務特化型のワークフローシステムです。見積書や届出書、申請書、稟議書など普段Excelで多くの書類を作成している企業であれば、スムーズに導入できます。ワークフローの可視化や効率化を推進することで、内部統制ひいてはコーポレートガバナンスを自然に強化していけます。
自社の業務でどのようにワークフローシステムを活用していけるのかを解説した資料もありますので、よろしければご参考ください。
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