建設業に携わっていれば、工事注文書の作成は欠かせない業務です。工事注文書は契約内容を証明する大切な書類であり、いい加減に作成するとトラブルの原因になります。
この記事では、建設業で工事注文書の作成を行う管理者や担当者に向けて、具体的な作り方や注意点を解説します。この記事を参考に、適切な書式で工事注文書を作成しましょう。
工事注文書とは?注文請書の違い
工事注文書とは、発注者が受注者に対して発行する書面です。発注内容や各種条件などを明記し、双方が合意の上で契約したことを示します。
似た書類として注文請書がありますが、こちらは発行者と目的が異なります。工事注文書は発注者が「依頼の意思表示」として発行するのに対し、注文請書は受注側が「受注の意思表示」をするために発行するものです。
通常、工事注文書と注文請書の組合せだけでは、法的効力はありません。ただし、基本契約書(何度も工事を依頼する場合に共通事項を取り決めたもの)がある場合は、工事注文書と注文請書の交換(基本契約で合意している場合は工事注文書のみ)で契約が成立します。
基本契約書がない場合は、契約約款を注文書と注文請書に添付します。
工事注文書の作り方
工事注文書の作成では、必須事項として以下の5つを盛り込まなければなりません。
- 書類を作成した者の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引の内容
- 取引の金額
- 発注先事業者の氏名または名称
上記のほか、施工現場や納期、具体的な工事の内容、支払いの条件(期日や方法)なども記載します。
契約自体は口頭でも有効ですが、契約不履行や「言った言わない」のトラブルを防ぐためには、書面に起こしておくべきです。
具体的な作り方としては、「市販のテンプレート」「Excel」「システム」の3つが挙げられます。
市販のテンプレートで作成
市販されているテンプレート用紙を利用する方法は、必要部分を埋めていくだけで工事注文書を作成できるため、効率的なうえに工事注文書の作成時間を短縮できます。ただし、記載ミス時の書き直しに手間がかかることや、書式が企業ごとの細かいニーズに合わない場合もあります。また、都度購入するため、コストがかかる点にも注意が必要です。
「Excelやシステムの導入に時間をかけられない」「とりあえず当面の発注に使いたい」といった場合に向いているので、内容をしっかり確認したうえで購入しましょう。
Excelで作成
Excelを使って作成すれば、電子ファイルとして保存・共有ができるため、IT化が進んでいる現場でも活用しやすい利点があります。インターネット上に無料のテンプレートがあるため、準備もそれほど大変ではありません。数式を利用した計算や、データの集計なども可能です。
ただし、承認フローが複雑な企業だと、Excelだけで対応しようとすると管理が難しくなるかもしれません。また、データの改ざんや情報漏洩といったセキュリティリスクがあるため、IGA(Idendtity Governance and Administration/アイデンティティ・ガバナンス&管理)によるIDや権限の管理が重要です。
システムで作成
専用のワークフローシステムを導入し、工事注文書を作成する方法もあります。ワークフローシステムは、申請から承認までのプロセスを一元管理できるため、業務の大幅な効率化が可能です。書類作成のほか、顧客管理や工程表作成など建築業務に必要な機能を取りそろえているものもあります。
ただし、初期費用・ランニングコストが発生するため、費用対効果の検討は重要です。また、これまでの慣れ親しんだ作成方法から、新しいシステムへの移行にあたって、現場で混乱が生じるかもしれません。業務体制をスムーズに移行するためには、「現場の従業員が抵抗なく使えるシステムか」を意識して選ぶようにしましょう。
工事注文書の作成時の注意点
ここからは、工事注文書にありがちなミスを防ぐための注意点として、以下の3つを紹介します。
- 書類に記載する文章は短くする
- 注文書に記載ミスがあった場合は基本再発行する
- 印紙が必要な場合と要らない場合がある
これらの注意点を意識し、適切に工事発注書を作成・管理しましょう。
書類に記載する文章は短くする
工事注文書に記載する文章は、受注者がわかりやすいよう簡潔にしましょう。必要最低限の情報を正確に記載することで、当事者間の誤解を防ぎます。
具体的には、次のような部分が重要です。
- 一文一意(一文一義)にする(一文の要点はひとつにする)
- 難しい言葉は最小限にする
- 修飾語を使い過ぎない
例えば、「下記の通り工事の発注をさせていただきますので、ご一読賜りますようお願い申し上げます」という文章は、丁寧さを意識しすぎてわかりにくくなっています。「下記の通り工事を発注いたします」と書けば、敬語を使いつつわかりやすい文章にできます。または、「注文書」とあれば注文していることは一目瞭然なので、このような一文を省くことも可能です。
注文書に記載ミスがあった場合は基本再発行する
記載ミスがあった場合、そのまま修正するのではなく、新たな工事注文書を再発行するのが一般的です。再発行したほうが信頼性を確保できますし、相手方の印象も下がりません。
何らかの事情で再発行ができない場合、該当箇所に二重線を引いて印鑑を押せば訂正できます。ただし、企業によって訂正ルールが異なるケースもあるため、相手方にも事前に確認しておきましょう。
印紙が必要な場合と要らない場合がある
工事注文書は課税文書ではないため、収入印紙を貼付する必要は基本的にはありません。例外として、工事注文書の発行をもって契約を結ぶ場合は、収入印紙を貼付しなければなりません。なお、収入印紙の金額は、文書に記載された取引額によって決まります。
ただし、電子契約による契約の場合、文書の作成とはみなされないので収入印紙は不要です。
保存期間がある点にも注意
税法による工事注文書の保存期間は、個人の場合は5年間(課税事業者は7年間)、法人の場合は7年間と定められています。
参照元:国税庁「帳簿書類等の保存期間」
参照元:国税庁「適格請求書等の記載事項」
一方、会社法による規定では、会計帳簿と関連する重要書類は10年間保存することとされています。注文書は会計帳簿ではありませんが、「会計関連の書類は10年保管」と統一すれば管理しやすいためおすすめです。
紙の注文書は紙で保管します。一方で電子取引での注文書については、2023年の電子帳簿保存法の改正により、電子データで保存することが義務付けられました。
国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」〜 令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要 〜
紙の長期保管は手間も場所も取るため、データ管理システムの利用も検討してみましょう。
工事注文書の作成・管理はAppRemoで解決
システムでの工事注文書の作成・管理を検討している方におすすめしたいのが、申請・承認業務を効率化するワークフローシステム「AppRemo(アップリモ)」です。AppRemoを導入すれば、申請や承認、データ集計、システム管理を簡単に一元化できます。
AppRemoはExcelと連携しており、Excelで作った申請フォームをそのままアップロードできる点が特徴です。また、文書管理システムとの連携により、データの一元管理・長期間の保存も容易になります。
AppRemoを活用すれば、工事注文書の作成から保管に至る一連の業務をスムーズかつ効率的に行えます。ペーパーレス化による生産性向上、業務の標準化・ミス防止など、工事注文書の作成・管理課題を一挙に解決可能です。
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まとめ
工事注文書は、建設工事を適切に進めるうえで欠かせない書類です。場合によっては契約書としての役割も持つため、丁寧かつ正確な内容で作成する必要があります。
AppRemoなら工事注文書だけでなく、業務全体のさまざまな課題を解決可能です。業務品質の向上と工事の円滑な遂行に役立つので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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