MaaSとは?メリットと導入事例を紹介

 2022.09.09  株式会社システムエグゼ オラクルクラウドチーム

昨今では、物理的な距離があってもコミュニケーションをとることができるオンラインツールやリモートワークが普及してきていますが、日常生活やビジネスシーンにおいて「人の移動」は必ず発生するものです。

「人の移動」をサービスとしてとらえた MaaS について、概要や導入メリットを解説します。

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MaaSとは

MaaSはMobility as a Serviceの頭字語で、「マース」と読むのが一般的です。

MaaSとは、鉄道、バス、タクシー、飛行機、フェリーなどの運営事業者の異なる従来の交通手段・サービスを1つのサービス上に統合し、自動運転やAIなどのさまざまなテクノロジーを掛け合わせて、より便利な移動を実現する仕組みのことです。

例えば、MaaSの概念がない従来の状態では複数の公共交通を乗り継いで移動する際、それぞれに予約・購入・支払等を行う必要がありますが、MaaSによって統合されれば1つのアプリケーション・サービスから一括で行うことができるようになります。

MaaSという言葉の具体的な定義については、決まったものが存在していない部分もありますが、一般的には自家用車以外の交通手段を用いて、自家用車の利用を転換・減少させるためのテクノロジーとされています。

MaaSにおけるサービス統合には、多数のICT(情報通信技術)の技術が用いられます。

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MaaSの統合レベル

MaaSを研究するスウェーデンの研究者により、「MaaSの統合レベル」という指標が提唱されています。これは、MaaSの実現を目指す公共交通機関が、ICTの技術等によりどの程度統合されているかを示します。

レベル0 : 全く統合がなされていない状態。
  • 各事業者が独立して独自のサービスを提供している。
  • 経路検索や時刻表検索は事業者をまたいで利用できず、予約・購入等も各事業者に 対して実施する必要がある。
レベル1 : 情報が統合された状態。
  • レベル0から一歩進んだ状態で、複数の交通事業者の運行情報や運賃情報が統合されてり、横断的な検索が可能となっている状態だが、予約・購入等はまだ各事業者に対して実施す必要がある。
レベル2 : 予約・決済が統合された状態。
  • レベル1からさらに進んだ状態で、複数の交通事業者の予約と決済までが1つのプラットフォ ームで完結している状態。
レベル3 : サービス提供が統合された状態。
  • 交通事業者間の連携がなされ、利用者が複数の交通事業者の交通機関を使って目的地まで移動したとしても、そのことを意識せずに移動できるような予約方法や料金体系等のプラットフォームが整備されている状態。
レベル4 : 事業者のレベルを超えて交通が管理・統合されている状態。
  • レベル4はレベル3までの概念とは異なり、交通事業者のレベルを超えて国や自治体が政策レベルでMaasの概念に取り組み、混雑解消・環境保護・交通弱者解消等の社会問題の解決にあたっている状態。交通事業者だけでは実現不可能で、場合によっては法改正や社会システムの改革まで行う必要がある。

現在の日本は、レベル1とレベル2の中間にある状態と考えられます。

「情報の統合」という点では、乗換案内サービスや地図アプリ等で経路検索を行えば、複数の異なる事業者のサービスを横断的に検索することが可能となっています。

一方、「予約・決済の統合」という点では、Suica・PASMOに代表される交通系ICカードがJRや私鉄、バス、タクシーなどで利用可能ですが、対応していない交通機関や交通サービスも多く、完全に統合されているとは言い難い状態です。

MaaSのメリット

MaaS導入のメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

  1. 排気ガスの削減
    MaaSの大きな軸に、「自家用車から公共交通機関へ」というものがあります。このため、MaaSを導入することで自家用車の利用が減少し、環境に悪影響を与える排気ガスが減少するというメリットが生まれます。
    詳しくは後述しますが、フィンランドでは、「Whim」の導入成果として自家用車の利用が約半分になったという実績があります。

  2. 公共交通の利便性の向上
    MaaSが普及して公共交通の利便性が向上することで、利用者側には以下のようなメリットがあります。
    ・1つのアプリで複数の公共交通機関の乗車予約から決済まで一元的に行える
    ・従来の技術では難しかった細かい地点間の輸送が簡単になり、交通弱者対策となる
    ・移動の際に混雑状況等も簡単に確認できるようになり、混雑回避によるストレス軽減につながる

  3. 公共交通事業者の収益増
    MaaSが普及して公共交通での移動が効率化すると、結果的に公共交通の利用者が増え、公共交通事業者の収益の増加につながります。
    上記同様、フィンランドの「Whim」の導入成果では、公共交通のシェアが約1.5倍になったという実績があります。

MaaS導入の課題

MaaS導入の課題としては以下のようなものが挙げられます。

  • 法律面の課題
    海外では一般的であるライドシェアサービスが、日本では道路運送法に抵触することにより導入が難しい点や、公共交通に関する各種の免許・届出等の壁があり、複数の法律や規制をクリアする必要があります。

  • 採算面の課題
    MaaSを導入して採算が取れる地域(人口の多い大都市や観光需要の高い観光地)と、MaaSによる利便性の向上が待ち望まれる地域(公共交通の撤退や高齢化による移動困難地域など)は必ずしも一致していません。
    企業主導で進めた場合、採算が合う地域にのみMaaSが普及するという事態が考えられます。そのため、企業と国・自治体のどちらが主導するのかという課題が挙げられます。

  • 情報面の課題
    MaaSを効率的に運用し、利用者の利便性を向上させるためには、利用者の移動履歴、移動のニーズ、各交通機関や道路の混雑状況等、多数の情報が必要となってきます。
    現在、こうした情報は企業や自治体がそれぞれ保有していますが、企業秘密や個人情報保護などの観点から、それらを公開情報としても良いのかという点が課題となります。

MaaSの事例

MaaSの事例として最も有名なものの1つがフィンランドの首都ヘルシンキで利用されている「Whim」です。(https://whimapp.com/)

フィンランドでは2018年に「交通サービス法」という法律が施行され、MaaSが推進されています。

「Whim」は、2016年に試験事業開始、2017年に正式運用開始されたサービスで、当初は電車・バス・レンタカー・タクシーが対象でしたが、現在ではシェアサイクル・カーシェアリングも対象となっています。

「Whim」は料金体系として月ごとの定額制(利用頻度や形態に応じて複数の段階存在)と都度利用の両方が存在しています。このため、ユーザー側の利便性向上だけではなく、公共交通事業者の収入の安定化にも寄与し、結果的にサービス向上につながっています。

日本国内でも、三井不動産株式会社および同グループ企業である株式会社ShareTomorrowが、「Whim」を提供するMaaS Global社と提携し、「&MOVE」というサービスを2021年から提供しています。「&MOVE」は、三井不動産グループが運営する商業施設やホテルの利用者に向けたモビリティサービスと、SNSを通じた目的地に関する情報の提供により、ユーザーの移動利便性の向上を図るというものです。

そのほか、国土交通省の実証実験として、2021年度に12事業が行われました。

北海道から沖縄まで全国に散らばった形で実施されており、観光の利便性向上のためのものと過疎地における交通サービスの利便性向上のためのものが半々となっています。

観光のための例としては、横須賀市・三浦市が行っている鉄道・バス・タクシー・カーシェア等を統合した実証実験である「三浦Cocoon」があります。また、交通サービス利便性向上のための例では、前橋市がデマンド交通をメインにMaaSの実証実験を行っている「MaeMaas」が挙げられます。

おわりに

MaaSには課題がまだ多くあるものの、社会課題の解決につながるなどメリットも確実にあるため、日本でもこれからさらに普及していくことが予想されます。

システムエグゼでも、MaaSに対する取り組みを行っていますので、ご興味がある方はぜひお問い合わせください。

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